記事ARTICLE

2018年08月13日

最新自転車パーツの現在地 【日泉ケーブル】Vol.1

nissen_5

自転車パーツに主役や脇役があるとしたら、主役は間違いなくフレームだろう。その脇をホイールやら変速機などが固めていくわけだが、地味ながら欠かせない存在なのがワイヤケーブルだ。かつては「純正品を使っておけばいい」程度の認識しかなかったが、サードパーティの高級品が出てきてからジワジワッと存在感が増してきている。大手パーツメーカーは新型ワイヤシステムによって操作感を向上させる一方、エアロバイクのような複雑なワイヤルーティングが、パーツの性能をスポイルするなど、ケーブルの重要性に気がつく人が増えている。今回は日泉ケーブル(株)の社長、佐土谷昌良さんにお話を伺ってみた。

nissen_57

菊地 いきなりですが、インナーワイヤやアウターワイヤって言いますよね? ほかにインナーケーブル、アウターケーシングなんて言いまわしもある。どの呼び方が正しいんですか?

佐土谷 どちらでもいいと思いますよ。内側のケーブルと、それを覆うケースという感じで、後者の方が海外っぽいですけど。間違いじゃないです。

菊地 では、遠慮なく基本的なことも聞かせてもらいます。自転車用のケーブルで大切なこととは、どんなことなんですか?

佐土谷 まずは、切れないこと。インナーケーブルのトラブルって、大概はコントロールレバーに引っかかる部分のニップルで起きるんです。ここで切れたり、抜けたりする。そういうことが起きないようするのが、なんといっても基本です。

 nissen_81

日泉ケーブルは昭和23年(1948年)佐土谷発條として創業し、昭和48年(1973年)社名を日泉ケーブル株式会社と変更。創業当初は織機のバネなどを製造したが、昌良さんのお父さんの代になって、ブリヂストンやミヤタなど大手完成車メーカーのブレーキワイヤを製造してきた。8年前、昌良さんが三代目として会社を引き継ぎ、旧車マニアのために見た目はクラシックだが、性能は最新のプレミアムアウターケーシングを発売。以後、スポーツライド用にSP31というオリジナルケーブルを販売し、高品質なバイクを求めるエンスーから注目のメーカー。問い合わせ先/日泉ケーブル

 nissen_62
専門性が高くて、奥深いワイヤケーブルを分かりやすく話をしてくれる佐土谷さん。

菊地 ブレーキ用とシフト用の違いは?

佐土谷 ニップル以外は基本的は一緒、素材はステンレスのSUS304です。ただ、ブレーキ用インナーケーブルは太さ1.5-1.6㎜、シフト用が1.1-1.2㎜です。

菊地 全部SUS304ですか?

佐土谷 自転車用は基本的には、そうです。我々が手掛けている建築関係で使っているワイヤの中には、磁性を帯びているといけないタイプもあって、それはSUS316を採用してます。

菊地 でも、太さが違うってことは要求される性能も……

佐土谷 ブレーキは高速から急ブレーキをかけるときは大きな力がケーブルにかかりますが、シフト用にはそこまで大きな負荷はかからない。そして、材料も少なくて済みます。

菊地 なんか、生々しい話ですね。

佐土谷 ははは。軽いというメリットもあります。インナーが細いということはアウターも細くできますから。

菊地 以前、インナーケーブルの初期伸びは、“ほぼない”って聞いたことがあります。

佐土谷 0.1%程度ですから、ほとんど伸びていない。我々は壊れるまで機械で試験するんですけど、結果をみても破断直前でも0.5%ぐらい。だから、インナーが伸びたように見えますが、実際にはアウターケーシングが圧迫されたり、細かい部分の嵌合などがピシッとして、遊びがなくなっただけなんです。

菊地 ブレーキレバーを握ったときに、カチッとしたヤツもあれば、グニャっとしているのもありますが、あれはアウターが潰れる感触?

佐土谷 要因はひとつではないです。アウターが影響しているのは事実ですが、レバーを握ったときにアウターが動きますよね? あれも抵抗になっていて、タッチに影響を及ぼしています。

菊地 以前、初期伸びの話を聞いたときに「うちのステンレスワイヤは伸びない」という言い方をしていたんです。安いヤツは伸びるよという意味を含んでいたのですが、そもそも何グレードぐらいあるんですか?

佐土谷 安い方から順に言うと……

鉄(一般車向け)

ステンレス

ステンレス+プリテンション加工

ステンレス+スリック加工

ステンレス+コーティング加工

という順になります。伸びないというのは、プリテンション加工がされているということです。

菊地 メーカーによって、さらに差があるでしょうし、奥が深そうですね。

佐土谷 名前を挙げるのは控えますけど、海外の高級ブランドで日本製のワイヤを採用しているメーカーがありますが、鉄製でもいい素材を使っているそうです。ちょっとマニアックになりますが、日本製は“60カーボン”という硬鋼線材が多く、海外製は“70カーボン or 80カーボン”が多いんです。

菊地 いよいよ合金の世界に入って行くんですね。

佐土谷 いいえ、今回はやめましょう。ただ、柔軟性や腰については各社で考え方が違うことだけ理解してもらえれば十分です。

菊地 日泉ケーブルには佐土谷さんの考え方があるってことですね……。

後編へ つづく

関連記事

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする

5,594 Views