記事ARTICLE

2017年12月27日

そのブランドに歴史あり! サイクルペディア ~メリダ・後編~

ロードバイクにはフレームに始まり、パーツ、アクセサリー、ウエアなど様々なアイテムがあり、それぞれに個性的なブランドが数多く存在する。しかし、そのブランドの成り立ちや特徴は今さら聞く機会も少なく、いったいどれを選べばいいのか悩んでいるサイクリストも多いはず。そんな声にこたえるため、各ブランドの誕生秘話や特徴、開発やマーケティングに携わるスタッフの思いを聞いてみた。

前回に続くメリダ・後編は、レースの世界で磨いたブランド力を紐解く。

前編はこちら ⇒ https://funride.jp/serialization/cyclepedia01/


話を聞いた人

パトリック・ラプレルさん

DSC_9699
メリダ・ヨーロッパR&Dセンター
ロードバイク・シニアプロダクトマネージャー
ロードバイク開発の責任者。2018年ニューモデルのサイレックスを駆って、3日間500kmの自転車旅を楽しんだサイクリストでもある。28歳。

 

ベンジャミン・ディーマーさん

DSC_9680
メリダ・ヨーロッパR&Dセンター
Eバイク・シニアプロダクトマネージャー
Eバイクの開発責任者。サイクルサッカーとロードレースの元選手で、ツール・ド・台湾でステージ優勝経験もある。34歳。

 

福田三朗さん

DSC_9751
ミヤタサイクル
営業企画部 マネージングディレクター
広報・宣伝、営業サポートセンター、お客様相談室などを担当。愛車リアクトで、三崎漁港までサイクリングしてマグロを買って帰るのが楽しみ。

 

<4>MTBからロードの世界へ

前回も紹介したように開発力、生産力には自信を持つメリダだったが、その技術力を広くアピールするために目を付けたのは、やはりレースの世界だった。最初に力を入れたのはマウンテンバイク。1998年にプロMTBチームを設立、ヨーロッパで数多くの好成績を残し、MTBの分野でトップブランドの地位を確立した。近年もトップ選手へのサポートを続け、ホセ・エルミダ、ガン・リタ・ダールなど偉大なチャンピオンを生み出してきた。

一方、それまで手薄だったロードバイク開発に本格的に乗り出したのは、2010年代に入ってから。2011年にエアロロードの初代リアクトを発表すると、2013年にイタリアのランプレ・メリダのスポンサーとなり、バイク供給を開始。ツール・ド・フランスをはじめとする最高峰レースへの参戦を開始した。今年2017年からは新生チーム、バーレーン・メリダとタッグを組む。ヴィンチェンツォ・ニバリがジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャで総合表彰台に上がり、さらにクラシックレースのジロ・デ・ロンバルディア優勝とワールドツアーで多くの好成績を残した。

チームにはメリダR&Dのスタッフがつねに帯同し、選手やメカニックからのフィードバックを受け取り、バイク開発に生かしている。我らが新城幸也も2016年からメリダのバイクに乗り、ツールに出場。他にもバーレーン・メリダは元台湾ロード王者のフェン・チュンカイ、ツール・ド・ランカウイでステージ優勝経験のあるワン・メイリン(中国)など、アジアのトップライダーを積極的に起用。他ブランドよりも、アジア市場にいち早く目を向けている。

「これで米国などのトップブランドに近づいたと思う」と、パトリックさんは胸を張る。

Bahrain-Merida 01-2017 01DG8373
2018年シーズンも活躍が期待されるバーレーン・メリダ

 

<5>ブランドの本当の価値を伝える

日本国内でも、レースを通じてブランドの認知度を上げていった。メリダの国内販売は、1990年代はメリダ・ジャパン、2000年代はブリヂストンサイクルが担っていた。2010年、ブリヂストンサイクルとの契約終了に伴い、手を挙げたのがミヤタサイクルだった。

「コガ・ミヤタの販売がその数年前に終わり、当時はプロショップとも疎遠になっていました。ミヤタサイクルにとっても、新たに販売網を確立する必要があったんです」と福田さんは振り返る。

そこで取り組んだのは、やはりレースで実績を上げることだった。2012年にはMTBチーム「ミヤタ・メリダ・バイキングチーム」を設立。国内最高峰のMTBジャパンシリーズ(当時)で斉藤亮が2012年、2013年(全勝優勝)とシリーズチャンピオンに輝き、チーム優勝も獲得した。ロードバイクも、2014年から宇都宮ブリッツェンに供給を開始。これには、福田さんの特別な思いもあった。

2007年にチームミヤタが解散したとき、担当者だったのが福田さんだった。だからこそ、栗村修前監督、柿沼章社長、増田成幸ら旧チームミヤタのメンバーが数多くいるブリッツェンと一緒に仕事をしたいという思いが、チームへのサポートにつながったのだ。

供給初年度からブリッツェンはJプロツアーでチーム総合優勝を勝ち取り、今日まで国内トップチームとしての地位をゆるぎないものにしていった。さらにツアー・オブ・ジャパンなどの国内トップレースにランプレ・メリダ、バーレン・メリダが参戦を続けることも相まって、ロードバイクのユーザーの中でもメリダの認知度は大きく向上した。こうしたレースへの取り組みを「メリダというブランドの本当のことをわかってもらう活動」と福田さんは言う。その言葉は、作り出されるプロダクトの性能に自信があることの裏返しでもある。

_MG_8360
2012年、2013年シーズンと2年連続でMTBジャパンシリーズのシリーズチャンピオンに輝いたミヤタ・メリダ・バイキングチームの斉藤 亮

f88eed81e6bc982c4fd86440bfa262d9
宇都宮で開催されるジャパンカップでホームチームとして圧倒的な人気を誇る宇都宮ブリッツェン

 

<6>注目モデル:フルモデルチェンジしたリアクト、旅するサイレックス

2018年モデルでは、バーレン・メリダ、宇都宮ブリッツェンも使用するエアロロードのリアクトが3代目へと進化した。ヘッドチューブなど各パイプ形状を見直して5%の空気抵抗削減を実現しつつ、フレームセット全体で18%もの軽量化を達成。それでいて、ケーブルの取り回しなど整備のしやすさを損なわないように工夫し、シートポストにエラストマーを組み込んで快適性も出すなど、実戦的なモデルとなっている。メリダ独自の冷却システムを装備したディスクブレーキモデルもラインナップに加わった。

ニューモデルとして登場したサイレックスは、小旅行に適したアドベンチャーバイク。ヨーロッパでは週末に自転車にキャンプ道具を積み込んで旅するスタイルが人気を集めており、そんな楽しみを実現する1台だ。ジオメトリーはヘッドチューブを長めにするなどMTBを参考にし、よりリラックスしたポジションで乗れるようになっている。変速はフロントシングル(44T)ながらリアは超ワイドレシオ(11-42T)を採用し、幅広い速度域をカバーしつつも、乗車ストレスやトラブルの発生率を抑えている。またオフロードも走れる700x35cの専用幅広タイヤを履き、道を選ばずに旅ができる。

2019年モデルからは、Eバイクも国内市場に投入予定。「ドイツでは毎年10%ずつ売り上げが伸びている」(ベンジャミンさん)というほど、ヨーロッパで人気拡大中のこのカテゴリー。
福田さんも「今までスポーツバイクに乗るのをためらっていた人にも、入ってきやすいツール。レンタサイクルなど、リゾート地でのアクティビティとしての可能性もあると思います」と期待する。

今後のメリダについて、パトリックさんは「製品の後ろにある物語を伝えていきたい」と語る。

「まだヨーロッパでは、伝統あるブランドが人気がある。メリダは品質やアイデア、堅実でいい製品を作っているという自信はあるが、マーケティング力で後れを取ってきた。これからは素晴らしい製品作りだけでなく、そのよさを伝える物語を通してブランドイメージ、地位を高めたい。そして、人々の心が求めるトップブランドになりたいと思っています」

~おわり~

DSC_9568
3代目へとフルモデルチェンジを果たしたリアクト。写真はREACTO TEAM-E(339,000円+税・フレームセット)

DSC_9628
サイレックスはグラベル走行も可能なツーリングバイク。写真はSILEX 9000(459,000円+税・完成車)

DSC_9651
ヨーロッパで人気のE-bikeモデルは2019年より国内展開予定だ

 

メリダHP:http://www.merida.jp/

前編はこちら ⇒ https://funride.jp/serialization/cyclepedia01/

(写真/ミヤタサイクル、編集部)

関連記事

記事の文字サイズを変更する

記事をシェアする