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2018年04月11日

そのブランドに歴史あり! サイクルペディア ~ LOOK・後編 ~

ロードバイクにはフレームに始まり、パーツ、アクセサリー、ウエアなど様々なアイテムがあり、それぞれに個性的なブランドが数多く存在する。しかし、そのブランドの成り立ちや特徴は今さら聞く機会も少なく、いったいどれを選べばいいのか悩んでいるサイクリストも多いはず。そんな声にこたえるため、各ブランドの誕生秘話や特徴、開発やマーケティングに携わるスタッフの思いを聞いてみた。

今回はビンディングペダル、カーボンフレームのパイオニアとして知られるフランスのルック(LOOK)。革新的なテクノロジーやデザインを世に送り出すサイクリスト憧れのブランドのひとつ。後編では、そのルックのさらなる魅力に迫る。

前編はこちら ⇒ https://funride.jp/serialization/cyclepedia03/


 

話を聞いた人

岡部秀克さん

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ユーロスポーツインテグレーション 専務取締役
高校時代からスポーツ自転車、ランドナーの魅力にはまり、ブリヂストンサイクル、輸入代理店を経て、2002年にルックの日本輸入総代理店ユーロスポーツインテグレーションの設立に参画。上りが好きな熱心なサイクリストであり、長年自転車に携わってきた経験から試乗車のメンテナンスも自らこなす。現在の愛車はスーパークライミングバイクと称されるニューモデルのルック785。

 

<4>モンドリアンカラーと3ケタの数字

ルックといえば、赤、青、黄などカラフルで幾何学的なデザインのコーポレイトロゴがアイコンのひとつ。ロゴだけでなく、フレームやペダルにも採用されるこのデザインは、モンドリアンカラーと呼ばれる。

これは、オランダ出身でパリなどで活躍した画家ピエト・モンドリアン(1872年~1944年)の絵画「コンポジション」がモチーフ。ベルナール・イノーが所属していたチーム「ラヴィクレール」もルックがメインスポンサーとなったことで、チームジャージがモンドリアンカラーのデザインとなった。こうしたフランスらしいおしゃれな装いが、ルックのブランド力を高める要素ともなっている。

ルックでもうひとつ気になるのが、数字3ケタで表されるバイクのモデル名だ。じつは、その法則も時代とともに変化しているのだが、代表的な例をいくつか紹介しよう。

以前は100の位が世代、つまり数字が大きいほど新しいモデルとなっていた。
そして10の位が、9=トラック、8=ロードといったバイクのカテゴリー。1の位は、フレームの素材と構造。1=カーボンチューブ+アルミラグ、3=スチール、4=アルミ、5=カーボンチューブ+カーボンラグ、6=カーボンモノコックなどだ。この当時は、「486」「585」などがロードバイクの最高峰モデルだった。

しかし、2006年に発表された「595」はロードバイクながら、10の位に9を採用。これ以降は、「695」など10の位に9が入るものが、最高峰モデルとされるようになった。

現在はルールが刷新され、100の位が7=ロード、8=トラック、9=MTBとバイクのカテゴリー。また数字の代わりにL、Rなどアルファベットがつくモデル(L96、R96)は、トラック競技用のモデル(追い抜きやTTなど)だ。Lはロンドン、Rはリオデジャネイロとそれぞれ夏季オリンピック開催都市を表している。ということは、東京のTを冠したモデルもまもなく登場するかもしれない。

そして下二ケタは、65=エンデュランス、75=トラック(ポイントレース、マディソンなど)、85=軽量クライミングバイク、95=エアロロード、96=TT・トラックと、バイクのキャラクターを表している。

これを知っていればそのバイクのコンセプトもわかるし、サイクリスト仲間でちょっとした自慢にもなるかもしれない。

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ベルナール・イノー(右)の活躍とともにモンドリアンカラーも注目を浴びるようになった

 

<5>塗装を剥がしてもルックとわかる個性

岡部さんはルックの魅力を「塗装をはがしてもルックの自転車とわかる個性」と語る。

「675」や「795」の一角獣スタイルのような特徴的な形状だけでなく、フロントフォークやシートステイを見ただけでもルックとわかる存在感がある。もちろん見た目のカッコよさだけでなく、空力、剛性など性能面を追求した結果のスタイリングであることは言うまでもない。

さらに、ひとつのモデルを長期間に渡って販売し続けるのもルックの特徴だ。他メーカーが1、2年でフラッグシップをモデルチェンジするのに対し、ルックはマイナーチェンジこそあれど5年~8年続く息の長いモデルがほとんどだ。その分、次期モデルの開発に時間をかけているということであり、数年経っても色あせない革新的なバイクが誕生する好循環につながっているのだ。

「ルックは大量生産数メーカーじゃない。クルマで言えばフルラインナップメーカーではなく、ポルシェのように車種をしぼって、同モデルを長年作って、お客様の満足度を誇るブランドなんです」と岡部さん。

また、多くのブランドがスチールからカーボンに移行してきたのに対し、ルックは自転車界に参入してから約30年間、ほぼ一貫してカーボンでバイクづくりを行ってきたノウハウの蓄積がある。その技術に対する自信の表れが、2018年の国内版カタログに見られる。そこには各フレームに使われるカーボンの種類(60t、50tなどの弾性率)とその割合が円グラフで表されている。カーボンの種類すら公表していないブランドも少なくない中、こうした試みはユーザーにとってもたいへん興味深いものだ。

もちろん、安全性と耐久性にも十二分に力を注いでおり、ヨーロッパ基準を上回る検査を社内のラボで行っているという。ちなみに、国内では1980年後半にはルックのペダルやフレームは輸入されるようになった。岡部さんによると、ソウル五輪・自転車ロード代表の鈴木光広さん(ブリヂストンサイクル)が、日本でルックのペダルを最初に使用したひとりだという。

2002年、それまでルックを扱っていた輸入代理店から引き継ぐかたちで、ユーロスポーツインテグレーションが設立。同時に会社を移った岡部さんは、自転車雑誌でのプロモーションやショップでの試乗会などを通じてブランド力をアピールし、ルックファンを地道に増やしていった。その甲斐あって、今やホビーレーサーの中でも一目置かれる憧れのブランドとなっている。

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約30年間カーボンによるバイク作りを続けてきたルックには、さまざまなノウハウの蓄積があり、“ルック”という個性を輝かせる一因となっている

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全国各地のイベント会場でルックの魅力を伝えてきた岡部さん

 

<6>ルック待望のニュークライミングバイク「785HUEZ」

今、ルックの中で国内外で大きな注目を集めているモデルが、昨年発表された新型軽量バイク「785HUEZ」だ。

HUEZ(ヒュエズ)とは、ツール・ド・フランスで幾多の名勝負が繰り広げられた峠ラルプ・デュエズがある町の名前。このモデル名からも、長年ツールを戦ってきたルックの意気込みが伝わってくる。これまで培った経験や技術が存分に注ぎ込まれ、「待ちに待ったルックの軽量バイクで、反響も大きいです。形はオーソドックスですが、カーボンの素材、製法など、中身の武装がすごいです」と、岡部さんも大絶賛の一台だ。

フレーム単体730g(Sサイズ)はさほど軽くはないものの、トータルインテグレーションで重量を抑える工夫がされている。例えば、デュラエースのブレーキキャリパーを組み付けたときに、アウターケーブルの長さがなるべく最短になるように設計されており、重量増を防いでいる。フロントフォークもテーパードコラムやカーボンドロップアウトなどルックが先鞭をつけたテクノロジーのおかげで、280gに抑えられている。

軽量だけでなく、剛性、快適性も高いレベルでバランスがとられ、ルックが得意とするレースシーンでこそ輝くバイクになっている。岡部さんも「ルックはツール・ド・フランスに毎年出ているブランドなので、上り、下り、平坦とすべてのバランスを求められる。これでエアロの795、クライミングの785、エンデュランスの765とあらゆるニーズにこたえるラインナップがそろいました」と胸を張る。

ツール・ド・フランスからホビーレースまで、あらゆるレーシングフィールドで独自の存在感を放つルックにますます注目だ。

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ルック待望のクライミングバイク、785HUEZは国内でも好評とのこと。今年は全国のヒルクライムレースで、その姿を見かけることも多いかもしれない

 

LOOK HP : http://www.eurosports.co.jp/

前編はこちら ⇒ https://funride.jp/serialization/cyclepedia03/

(写真/ユーロスポーツインテグレーション、編集部)

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