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2017年11月15日

【新連載】そのブランドに歴史あり! サイクルペディア ~メリダ・前編~

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ロードバイクにはフレームに始まり、パーツ、アクセサリー、ウエアなど様々なアイテムがあり、それぞれに個性的なブランドが数多く存在する。しかし、そのブランドの成り立ちや特徴は今さら聞く機会も少なく、いったいどれを選べばいいのか悩んでいるサイクリストも多いはず。そんな声にこたえるため、各ブランドの誕生秘話や特徴、開発やマーケティングに携わるスタッフの思いを聞いてみた。

第1回は、世界第2位の生産台数を誇るメリダ。台湾生まれ、ドイツ育ちの歴史に迫る。


 

話を聞いた人

 

パトリック・ラプレルさん

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メリダ・ヨーロッパR&Dセンター
ロードバイク・シニアプロダクトマネージャー
ロードバイク開発の責任者。2018年ニューモデルのサイレックスを駆って、3日間500kmの自転車旅を楽しんだサイクリストでもある。28歳。

 

ベンジャミン・ディーマーさん

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メリダ・ヨーロッパR&Dセンター
Eバイク・シニアプロダクトマネージャー
Eバイクの開発責任者。サイクルサッカーとロードレースの元選手で、ツール・ド・台湾でステージ優勝経験もある。34歳。

 

福田三朗さん

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ミヤタサイクル
営業企画部 マネージングディレクター
広報・宣伝、営業サポートセンター、お客様相談室などを担当。愛車リアクトで、三崎漁港までサイクリングしてマグロを買って帰るのが楽しみ。

 

 

<1>創業者アイク・ツェンのプライドから、世界2位の自転車メーカーに

ある日、台湾人技術者だったアイク・ツェンがアメリカを旅行中、とある自転車店の店頭にある張り紙に目が止まった。

「台湾製の自転車は品質が悪いので、修理お断り」

その言葉にショックを受けたツェンは台湾に戻り、高品質で長く乗れる自転車を作ろうと1972年にメリダを創業した。当初はOEMで他ブランドの自転車を生産しながら技術力を磨き、1988年にメリダブランドのバイクの生産を開始。同時にグローバル展開をスタートし、ノルウェーを皮切りに、ドイツ、イギリス、オランダ、スペインと欧州各国に販売拠点を増やしていった。

アイクの息子、マイケル・ツェンが社長を務める現在は、台湾に1カ所、中国に3カ所の生産拠点を持ち、自社ブランド、OEM合わせて年間約150万台を出荷。同じ台湾のジャイアントに続く世界第2位の自転車メーカーへと成長している。販売網も42のディストリビューター(販売代理店)を通して88カ国へと拡大し、世界中でメリダのバイクは乗られるようになった。

メリダは漢字では『美利達』と書き、「美しく、どこまでも走っていけて、そして楽しい」という意味が込められている。正規販売店で購入されたメリダのバイクには、生涯補償が付帯される。これもメリダの品質への自信の表れであり、創業者アイク・ツェンが誇りを持って取り組んできたこと。堅実なモノづくりの精神が、メリダの伝統として受け継がれているのだ。

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創業当時の様子

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副社長を務めるウィリアム氏

 

 

<2>ドイツに研究開発拠点 若きスタッフが新たな風を吹き込む

メリダがプロMTBチームを設立した1998年ごろから、レース現場の声を製品開発に反映するため、工業デザインの分野で世界をリードするドイツ・シュトゥットガルト近郊に研究開発の拠点を置いた。それ以降、ドイツで設計し、台湾の工場で生産するメリダ独自のスタイルが確立した。

2012年には、研究開発拠点がメリダ・ヨーロッパR&Dセンターとして法人化。さらに、2014年には新社屋も建てられ、開発スタッフも倍増。パトリックさん、ベンジャミンさんらもこのときメリダに入った。現在は15人のスタッフが、メリダ・ヨーロッパR&Dセンターでスポーツバイク開発に携わっている。ミーティングでは部署や職種の垣根を越えて、全員がアイデアを出し合っているという。

パトリックさんは「この3年間でメリダは大きく変わったと思う。開発チームは全員が35歳以下と若く、新しいアイデアを持ち込んでいる。メリダの新しいイメージを打ち出しているんだ」と、メリダが若々しく活気あるブランドであることを強調する。

福田さんも「R&Dセンターの社長はアイアンマンにも出場するトライアスリートで、スタッフもみな自転車に乗るのが大好き。試作品のテストライドも自分たちでやっています」と自転車好きが多いという。その精神が、バイク開発にも活かされている。

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メリダ・ヨーロッパR&Dセンター

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15人のスタッフが新モデルの開発に携わる

 

<3>低コスト、高品質を実現する台湾工場

「メリダの強みは、自分たちの目指すものを自分たちで作れること」だと強調するパトリックさん。
欧米の多くのブランドが台湾などでOEM生産する中、メリダはジャイアントと並び自社で設計開発した製品を自社工場で生産する数少ないブランドのひとつ。そのことが最低限のコストで高品質のバイクを生産できるキーとなっている。

1970年代は約50人ほどだった工場の従業員は、現在3000人以上を数える。1996年には世界初のロボット溶接技術を確立し、アルミフレームの大量生産を可能にした。
また、メリダの工場ではトヨタの「かんばん方式」と同様の生産方式を採用。パーツの在庫をできるだけ持たない仕組みで「必要なものを必要な時に必要なだけ作る」ことで、高効率、低コストの生産が可能となっている。

ベンジャミンさんには、初めて台湾の工場に足を踏み入れた時に印象的だった光景がある。
「組み立てラインには時計が置かれていて、1台のバイクがわずか30秒~40秒で組み上がっていくんだ」
最新の設備と高効率のシステム、そして熟練した職人がメリダの生産力を支えているのだ。最近では、台湾のメイン工場のすぐ裏に3階建てのEバイク専用の工場を建設するなど、設備投資も積極的に行っている。また、台湾には生産部門のエンジニアが約10人おり、ドイツで出されたアイデアが実現可能かどうか検証・考察している。

パトリックさんは「ドイツと台湾、2つの異なる文化が一緒に働くのは難しいこともある。コミュニケーションは英語なんだけど、お互いに英語が母国語じゃないので、ときには誤解が生じることもあるよ(笑)」と、しばしば苦労もあるという。しかし、ドイツと台湾を結んでテレビ会議を毎週行い、毎月1回はお互いに行き来するなど緊密に連携を取り合っている。ドイツ、台湾の双方のエキスパートが最高の能力を持ち寄って、最高のバイク作りを行っているのだ。

ちなみに現在、世界中でメリダが販売する自転車は400車種に上り、それぞれの国の市場に合わせたモデルがディストリビューターを通じてユーザーの手元に渡る。メリダではさらに、ディストリビューターからの要望を受けて、限定モデルをデザイン、生産することもある。昨年、日本で発表された新城幸也モデルの「リアクト チーム」もそのひとつだ。桜や富士山のグラフィックをあしらったこのモデルについて、福田さんは「世界チャンピオンクラス以外で選手モデルを作るのは極めて異例だったが、新城選手の人気は肌で感じるものがある」と振り返る。

パトリックさんは「各国の要望を聞いて、自転車を作るのメリダぐらいだよ。他のブランドは、ディストリビューターに『このモデルを売ってほしい』と『あれを売ってくれ』と言うだけだからね」と微笑む。こうしたフレキシブルな対応も、開発部門と生産部門が密接に結びついているメリダだからこそ可能なのだ。

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重厚な佇まいのメリダ本社

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スピーディーに作業をこなす、生産ラインのスタッフ

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ロボット溶接によって精度の高いアルミフレームも生産する

 

※後編では、メリダとレースの関係について迫っていく。

(トップ画の自転車)
REACTO TEAM-E
価格:1,100,000円(完成車・税抜)、339,000円(フレームセット・税抜)
サイズ:47cm、50cm、52cm、54cm、56cm(フレームセットのみ)
重量:7.0kg(完成車50cmサイズ)、1,000g(フレームセット54cmサイズ)、350g(フォーク)
カラー:ダークブルー(バーレーンチーム)
メリダHP:http://www.merida.jp/

 

(写真/ミヤタサイクル、編集部)

 

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