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2019年06月01日

ファンライドアーカイブス 読むトレーニング「住田道場」⑦

2007年12月号から約1年にわたって月刊ファンライドに連載された「住田道場」の第7回です。シマノレーシングに所属し、アトランタオリンピックロード日本代表にも選ばれた住田修氏によるこの連載は「モノクロ1ページ」という地味な企画ながら、トレーニングに励むサイクリストの心をがっちりつかんだ大人気連載になりました。10年以上の月日を経た今も、「強くなるために今何をすべきか」は不変のテーマだと気づかされます。
※掲載※月刊ファンライド2008年4月号 構成/浅野真則 写真/高田賢治 題字/住田修

今月の教訓

一、たくさんの観客がレースを熱くし、選手を強くする
一、自転車は紳士のスポーツ。常に見られている意識を持て

 其の七、
熱いレースで観客をつかめ

どれだけ選手が強くなっても・・・

北京オリンピックの各種目の代表が続々と決まってきたな。中でも国民の関心が高かったのは、なんと言っても女子マラソンや。個人的に応援していたQちゃんこと高橋尚子選手は、残念ながら今回は五輪出場を逃した。だけど、目標を達成するために極限まで自分を追い込むその姿は、多くのアスリートが手本にしてエエと思う。
それにひきかえ、今の日本の自転車界に、観客を魅了する熱いレースしてる選手がどのくらいおるやろな?Qちゃんくらいどん欲に自転車競技に取り組んどるヤツなんて、ほとんどおらんやろ。そのオリンピックに限ってみても、女子マラソンの盛り上がりに比べ、自転車はもうひとつ盛り上がりに欠けるよな。その原因は「日本では、自転車競技がまだまだマイナースポーツである」ということに尽きると思う。
ツアー・オブ・ジャパンなどの国内最高峰のレースでも、一部を除いて観客は少ないよな。これってサッカーで言うたら、スタンドがガラガラの状態でJリーグの試合が行われるようなもんやで。ナンボ何でもマズイやろ?

ワカモノよ!大きなレースに限らず日本のレースに観客が集まらんかったら、当然レースにもチームにもスポンサーはつかん。これはレースや選手の将来を左右する重要なことやで。それに今の国内チームのスポンサーは、ほとんど自転車関連メーカーやろ?それはそれでありがたいことやけど、ヨーロッパのチーム見てみ。自転車関連メーカー以外がいっぱいスポンサーになってる。スキル・シマノのスキル社は工具メーカーやし、ガス会社や銀行、電話会社もスポンサーになってる。宣伝効果が上がる。だからいろんな企業がスポンサーになるっちゅうわけや。まあ、当たり前のことやわな。これが日本でまだできてないな。

強い選手を生むために今みんなができること

日本で自転車をメージャースポーツにするにはどうしたらエエか?選手にできることは、練習して強くなることや。〝ツール・ド・フランスごっこ〟しとらんと、熱いレースで観客を魅了せんかい!
でも、それだけでは難しいかもしれん。そこで提案。たとえば「選手はレースに必ず選手以外の友人を連れてこなければならない」ってルールを作ったらどや?UCIとか実業団とかランキングがあるけど、選手が観客を一人連れてくるごとに、1ポイント与え、女性やったら2ポイント与えてランキングに反映させるんでもエエ。
自分らだって、もっと多くの観客の中で走りたいと思わんか?今よりもっと観客が集まったら、選手たちはヤル気が出るし、走りも熱くなる。そしたらもっと自転車競技はおもろくなるし、ファンも増える。その結果、メディアの注目も集まり、スポンサーも増える。ハンドボールにできて自転車にできへん道理ないやろ!

選手の意識も変えんとアカン。道端でケツ丸出しで着替えたり、表彰式で雪駄履いて出るなんてありえへんで。自分らは常に見られてるんや。社会人として常識をわきまえて、チビッっ子や女性に「カッコイイ」と言われる存在にならんと。練習の時でもそれは同じ。今走っているみんながカッコ悪かったら、だれも「自転車に乗ってみた」って思えへんやろ?
自転車のサドル、これは乗馬で使う鞍っていう意味もある。自転車は乗馬と同じ紳士淑女のスポーツちゅうこっちゃ。・・・・・ま、蝶ネクタイ締めてレースに来いとまでは言わんけどな。

海外のレースでは、ゴール前にジャージのファスナーを上げて胸がはだけやんようにするやろ?これも〝見られてナンボ〟という意識があるからや。ただな、選手がどれだけ頑張っても限界がある。そこで読者のみなさんにお願い。友人を誘ってもっとレース観に行ったって。そして駆け引きとか見どころを分かりやすく教えてあげて、レースの面白さを伝えてほしい。国内トップレベルのレースだって、基本的にはタダで見られるんやから。言っとくけど、選手はタダで観られるからって「安い走り」したらアカンで!ロードレースのオリンピック代表選考は、6月に広島で開かれる全日本選手権がポイントになるようや。まずは広島に集合や!

sumida
住田修/すみた・おさむ(写真・プロフィールは連載時のもの)
ロードレース2×10段と称される名人。立命館大学を卒業後シマノに入社。アトランタ五輪日本代表。現役時代、その圧倒的な存在感はロードレース界随一と言われ、実力だけでなく、ハートでも魅了する熱い男。現在は仕事中心ながら、走ることはやめない生涯サイクリスト。すね毛を剃らない選手としても有名だった。

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