2017年10月20日
芦田昌太郎の「脱・使わず嫌いインプレッション」第8回 CDJ ビッグプーリーキット
数ある自転車アイテムの中で、みなさんはどうやって要不要をチョイスされていますか。
想像だけで要らないと決めつけてはいませんか。食わず嫌いと同じで、使ってみないとその真価は分かりません。そこで、我々サイクリストの感性を悩ますアイテムを実際に試して、使わず嫌いを克服しようというのがこの連載。ちなみに私の食わず嫌いは、エスカルゴ。きっと食べなくても幸せに生きていけると思っています。
いよいよこの連載も最終回。連載当初からずっと気になっていたアイテムの登場です。ラストを飾ってもらうのは、カーボンドライジャパンからリリースされているビッグプーリーキット。この類のアイテムが世に出てから数年、まだ装着している選手もそんなに多くはない印象ですし、三大コンポブランドからは出ていないですし……何となく避けていたアイテムです。
もちろん公表されているデータも、抵抗低減のロジックも理解できます。ただ、それがホビーライダーの私でも価格に見合うだけの実感を得られるのかという事です。これ、結構良いお値段しますから。
ちなみに、データが気になる方はカーボンドライジャパンのHPをご覧ください。
今回はショップにお願いして取り付けて貰いました。メカニックさん曰く、ディレイラー調整の段階で「もう軽い!」とのこと。コマ数が足りなくなったので、同時に新調したチェーンがシャラシャラと流れています。半信半疑でクランクを手で回してみると驚きの軽さ。これはもしかしたら期待できるかも。しかも見た目が派手になって嬉しいぞ。ガイドプーリーは変速性能を維持するため11Tのまま、テンションプーリーだけを15Tに、そしてフルセラミックベアリングが組み込まれ、カーボンプレートは仕上がりも美しい。さすがのジャパンメイドです。さて、早めに結論を出します。
CDJビッグプーリーキット……使いたい!買いです!欲しいです!
思い返せばこの連載、ピックアップしたもの全部欲しくなっています……ロードバイクって怖いですね。初期投資だけで自転車はお金かからないって言ったの、誰だー!?
それはさておき、走行インプレッションと参りましょう。うわ、軽い! 走り出しからスルスルっと進んでいきます。ただ、この漕ぎ出しの感覚は軽量ホイールを履いた時と似ています。いきなり判断するのは早計でしょうか……。
他のシチュエーションでも試さなければということで、ディープリムに履き替えて荒川サイクリングロードを抜けて埼玉方面へ。巡航速度を上げても脚に感じる軽さ、抵抗の少なさはそのままです。加速していくのでトルクはしっかり掛かっていますし、心地良いくらいに脚が回ります。踏み脚より引き脚、下死点付近からの返りが早いです。巡航速度が上がるというより、「高ケイデンスのキープが楽になっている」といった表現の方がしっくりきます。
平地でのアドバンテージが分かったところで、このまま上りもアタック。緩めのアップダウンでは、その強みは変わらず、変速性能も平地同様にストレスはまったく感じません。メーカーHPでも謳われているアウター×ローでの抵抗減もしっかり感じられます。とくにアウターとリアのロー側4枚(19T~25T)で真価を発揮するように私は感じました。
続いて10%オーバーの上りを数本。しんどいです……。ですが、急坂でもチェーンラインの抵抗が少ないのが体感できます。しかし、15~18%の上りでダンシングをしていたら不思議な感覚に見舞われました。パワーを入力するぺダル・クランクと、その出力先であるリアのホイール・タイヤがとても近く感じるのです。まるで一輪車のようにホイールをダイレクトに回しているような感覚です。激坂でもスルスルとチェーンが回転するので、パワーが伝わっているのか少し不安になりました。これは慣れの問題かも知れません。
そうだ、「慣れ」で思い当たることがもうひとつ。今私は初めてビッグプーリーを使用して、その効果に舞い上がっていますが、このトキメキもいつしか当たり前になって薄れていくのでしょうか……そう思うと何だか切ないですね。もちろん薄れるのはトキメキだけで、効果は持続するのですけれど。
とくにアウター×ロー付近のギア位置で抵抗低減の効果を実感できた
以前BBやプーリーをセラミックベアリングに交換した時は、手では回転の良さを感じても走行中はあまりその効果を感じることはできなかったのですが、このビッグプーリーキットは違います。明らかに違いが分かるパーツ。これを「価格相応の実感」として捉えられるかどうかは、個々の感覚に委ねるしかありませんが、少なくとも私は魅力を感じました。
絶対的なパワー値が低い私には「フリクションロスの低減」というのは魔法の言葉。機材やスキルでどれだけ無駄をなくせるか、これもロードバイクの楽しみの一つではないでしょうか。ということで、このCDJビッグプーリーキットも使わず嫌いに認定です。
さて、この「脱・使わず嫌いインプレッション」も、これにてひとまずお別れ。お目を通して下さったみなさん、どうもありがとうございます。みなさまも使わず嫌い、減らしてみませんか?
カーボンドライジャパン ビッグプーリーキット
価格:38,000円(税別)~
ケージサイズ:ショートケージ、ミドルケージ
ケージカラー:マットクリア、クリア、クリアレッド、クリアブルー
プーリーカラー:ブラック、ゴールド、レッド
対応ディレイラ―:HPを確認
カーボンドライジャパン ビッグプ―リーキット HP → http://www.carbondryjapan.com/bpk/
(写真/小野口健太)
来月より「芦田昌太郎のどっちのインプレショー(仮)」を連載予定です。お楽しみに!
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。