2017年10月13日
芦田昌太郎の「脱・使わず嫌いインプレッション」第7回 MAVIC キシリウムプロUST
数ある自転車アイテムの中で、みなさんはどうやって要不要をチョイスされていますか。
想像だけで要らないと決めつけてはいませんか。食わず嫌いと同じで、使ってみないとその真価は分かりません。そこで、我々サイクリストの感性を悩ますアイテムを実際に試して、使わず嫌いを克服しようというのがこの連載。
ちなみに私の食わず嫌いは……メロンに生ハムを巻き付けたヤツです。生ハムは生ハムとして、メロンはメロンらしく食べたいです。
さて、連載7回目を迎えた今回はホイール&タイヤ。
じつは一度だけ使ったことがあるので厳密に言うと使わず嫌いではないのですが、改めてチューブレスを試してみることにしました。
個人的にはチューブラーがいちばん好きで、普段使いはクリンチャーといった具合にコースや天候によって使い分けているのですが、チューブレスはねぇ……嵌めるのは大変だし、ビードは上がらない。タイヤの選択肢も少ないし、石鹸水を使うなんて前時代的ですし。と、良いイメージがほとんどありません。
もちろん走行感やコーナーでの路面の吸い付きの良さは目を瞠るものがありますし、耐パンク性能の高さも理解できるのですが、タイヤ交換で苦闘してからというもの嫌になっていました。今回ばかりは使わず嫌いというより、むしろ使って嫌いでした。
そんななかマヴィックがチューブレスをリリース。しかもイメージを覆すほどの革新的なホイールとタイヤとのこと。使用したモデルはキシリウムプロUST。さて、どうでしょう……。チューブレスが世に登場して10年くらいでしょうか。私のまわりでは2wayのホイールを履いていても、みんな今はクリンチャー使いです。だってチューブレスですよ、チューブレス。
では、ここで先に結論を。
これなら使いたい!
10年という月日の技術革新を侮っていました。思い込みと昔の記憶で判断していた私が間違っていました。これ、凄いです!
ショップの方からも噂を聞いていましたが、これほど進化しているとは驚きです。今までのチューブレスのマイナス面の印象が一気に吹き飛びました。
先ず、何といってもタイヤの嵌めやすさ。感動ものです。何もせず両手でムニムニしていたら嵌りました。チューブレスはもっと硬いと覚悟していたのに、肩透かしにあったような感じで第一関門突破。
続いて第二の壁、エアー充填。普段通りにポンピング。「シュコッ、シュコッ、シュコッ…出来た」。あれ?チューブレスってこんなに簡単に上がるものでしたっけ? さすがはマヴィックの専用タイヤ、相性抜群です。
かつての苦労は何だったのだろうか。ビードが上がらなくて四苦八苦したあの時間を返せー! 多くの方がチューブレスを断念していた理由は、このインストールの大変さにあったのではないでしょうか。それが、このマヴィックのUSTなら一気に解決。あとにはチューブレスのメリットが残るだけです。
クリンチャ-タイヤのようにタイヤレバーなしで簡単に嵌めれました。これは驚き!
次にマヴィックの謳う「EASY」「SAFE」「FAST」の「FAST(軽快さ)」をみてみましょう。
乗った瞬間に体感できるのは、その転がりの軽さです。チューブレスならではの抵抗の無さ。漕ぎ出しからスルスルっと加速します。ホイール重量も1420gと軽いうえに、キシリウムの完成度の高さと相まって良く走ります。普段より低圧に出来ることで乗り心地も良いですし、グリップも向上。タイヤサイズは700×25Cだったのですが、23Cよりもワイドな25Cの方が、チューブレスのメリットを享受できるような気がしました。
私の場合はクリンチャーの時より10psiほど低くして乗りましたが、もう全然違います。ガチガチのレーシングフレームの性能をそのままに、走行フィールはマイルドになっています。
そもそもオートバイも自動車もチューブレスなのに、自転車は未だにチューブラーだったり、タイヤの中にチューブが入っていたりとシステムが古いまま。「EASY(着脱の簡単さ)」が保証された今、ホイールの選択肢が確実に広がったといえるでしょう。
もう一つの柱、「SAFE」はチューブレスタイヤの特色であるパンクリスクの軽減に尽きます。FUNRiDE読者の皆様には釈迦に説法でしょうから、簡単に書きます。チューブレスタイヤはチューブラーと同様で、クリンチャーに比べてパンク時に空気の漏れる速度が緩やか。下りの高速走行時など、最悪のシチュエーションを想像すると、少しでも安心感を得られるのは大きなメリットだと思います。そしてパンク後のリカバリーのしやすさは、チューブラーよりもチューブレスとクリンチャーに軍配が上がります。つまりは両者の良いとこ取りという訳です。しかし、それも「EASY」があってこそ成り立つというもの。ここにきてやっと三者を並べて比べられるようになったように思えます。
チューブがないことで、低圧で乗れることはチューブレスホイールの楽しさのひとつ
マヴィックのホイールが好きであれば、このUSTはオススメ。なにせフレンチホイールの雄が満を持してリリースしてきたのです。悪いはずがありませんし、今後はラインナップも増えていくようなので楽しみです。
そしてこれがチューブレス時代の起爆剤となるような予感さえします。ただ、他メーカーのタイヤでも同等の「EASY」が得られるのか、もっと軽量なタイヤはリリースされないのかと、気になる点もあります。とはいえ先立つものが必要なわけで……とりあえずは今後のチューブレス時代に向けて「ホイール貯金」を始めることにします。
MAVIC キシリウムプロ UST
価格:フロント 60,000円(税別)、リア 70,000円(税別)、ペア 130,000円(税別)
重量:1420g(フロント 605g、リア 815g)
カラー:ブラック
スポーク組:フロント ラジアル18本、リア イソパルス20本 ※ジクラルスポーク
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO UST
タイヤサイズ:700x25C
マヴィック HP:https://www.mavic.com/ja-jp
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。