2015年12月04日
ニッポン最速列伝!! File.1 板子佑士さん 【後編】
File.1 板子佑士さん
仕事や家庭を持ちながら、自らのパフォーマンスを高め、レースで勝利を目指す強豪ホビーレーサー。平等に与えられた時間の中で、いかに努力を重ねて勝利を掴むに至ったのか。ライフスタイルの中での工夫やトレーニングの思考を辿りながら、自転車にかける情熱に迫っていく。今回は板子佑士さんの後編をお届けする。
月間2000kmを維持
週3日は高負荷メニューを取り入れながらも、月間走行距離は毎月2000kmを超える。1日平均で70km近く走らなければならない。限られた時間の中で、どのように練習量を確保しているのか。
「平日は毎日自転車で通勤しています。ポイント練習で追い込むので、平日の通勤はインナーギヤでクルクル回すだけのサイクリングになります。目的は回復走とダイエットです」
朝は5時に起床、6時には自宅を出発。ルートは最短15kmのところを遠回りすることがほとんどで、片道2時間乗って8時に出勤する。夜も1時間半ほど走り、22時頃には帰宅。仕事をしながらも、毎日平均60kmほど距離を稼ぐ。
また、週末にレースがあっても、工夫をすることでトレーニング量を維持する。
「レースの帰り道は、できるだけ自走で帰るようにしています。行きは輪行で会場入りすることで、レース後は、日が暮れるまで自走で頑張って帰ります。遠征費も浮かすことができ一石二鳥です」
福岡の英彦山ヒルクライムに参加するときは、行きは兵庫からフェリーで現地入り。レース後は、会場から自走で関門海峡を渡り、山口県から電車に乗って帰る。
課題は過食をセーブすること!?
2014シーズンは、乗鞍の年代別クラスで優勝すると、ヒルクライム大台ケ原のチャンピオンクラスでも優勝。この頃から、さらなる飛躍を誓い、主にヒルクライムレースに標準を絞り減量にも取り組んだ。
「狙ったレースに向けては、3週間程度の短い期間の食事制限をして体重を一気に絞るようにしています。夕食は野菜と鳥のササミの野菜炒めをよく作って食べています。大豆やおからを使ったローカロリーの創作料理も得意です」と、通常62kgほどある体重をヒルクライム時には57kgまで絞る。
そして、迎えた2015シーズンは、出場するレースで次々に結果を残し、一躍強豪サラリーマンレーサーとして知られるようになる。
月間2000kmの積み重ねの成果を発揮し、5月の全日本選手権ロードを完走。その後、Mt.富士ヒルクライムの主催者選抜クラスで6位入賞を果たすと、初挑戦となった乗鞍のチャンピオンクラスでも5位入賞。実業団のエリートツアーにも挑戦し、栂池、乗鞍、大星山の3つのヒルクライムで表彰台に上り、一気にプロツアーへの資格を取得。今シーズン最も飛躍を遂げたレーサーの一人になった。
しかし、その一方で無理な減量から、「衝動的にドカ食いに走ってしまうことがあります」と、現在は悩みも抱える。
夜食にフルーツグラノーラひと袋を空けたり、あんこ1kgの袋をそのまま食べたり。朝食用の食パン1斤を平らげてしまい、奥さんに飽きられたこともあった。
「普段は距離を乗っているから体重をセーブできているだけで、食生活は管理できていません。体重をキープしたいので毎日乗っていますが、もしかしたら月間2000kmは乗り過ぎなのかもしれません。今年のツール・ド・おきなわ直前1カ月は2700kmでした。来シーズンは、過食を抑えながらトレーニングの量を調整していきたいと考えています」
来シーズンは、Mt.富士と乗鞍での表彰台と、まだ満足のいくレースができていないツール・ド・おきなわ市民210kmでの上位進出を目論んでいる。
Mt.富士ヒルクライムでは主催者選抜クラスで6位入賞。その後のヒルクライムレースでも表彰台を立て続けに奪取した。(写真上段中央が板子さん)
ヒルクライムだけでなく、ロードレースやサーキットレースでも強さを発揮。今年の富士チャレンジ2015の200kmの部でも6位に入った。(写真左が板子さん)
板子佑士・Yuji Itako
1983年生まれ、神奈川県出身、兵庫県明石市在住。兵庫県内のメーカーに勤務し、妻と二人暮らし。2012年、転勤をきっかけにレースを志すようになり、2015シーズンは、Mt.富士ヒルクライムと全日本マウンテンサイクリングin乗鞍で共に入賞。初参戦した実業団エリートツアーでは一気にプロツアー参戦資格を獲得。ヒルクライムレースを得意としながらも、全日本選手権を完走するなどロードレースでも活躍。身長174cm、体重60kg、体脂肪率10%(レース時)。スポーツバイク歴6年。
成績
2013年
石鎚山ヒルクライム 四国のてっぺんクラス 優勝
ツール・ド・沖縄100km 優勝
2014年
晴れの国おかやま7時間エンデューロ 7時間ロードソロ 優勝
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 男子B 優勝
ヒルクライム大台ヶ原 since2001 チャンピオンクラス 優勝
2015年
全日本自転車競技選手権大会 ロードレース 36位(完走)
久万高原ヒルクライム2015 チャンピオンクラス 優勝
Mt.富士ヒルクライム 主催者選抜クラス 6位
全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 チャンピオンクラス 5位
富士チャレンジ2015 200kmの部 6位
JBCF 栂池ヒルクライム E3 優勝
JBCF 乗鞍スカイラインヒルクライム E2 2位
JBCF 大星山ヒルクライム E1 2位
(写真/ハシケン、小野口健太)
著者プロフィール
ハシケンはしもと けんじ
おもにスポーツサイクルの執筆と撮影を行うスポーツジャーナリスト。元ファンライド編集部員。体力だけには自信があり、各地のヒルクライムやロードレースに出没しては表彰台を狙う。乗鞍ヒルクライムは58分で走るが、最近は体重増加が気になりだしたアラサー。FTP290W。好物は激坂とスイーツ。千葉県出身。