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2015年11月26日

ニッポン最速列伝!! File.1 板子佑士さん 【前編】

File.1 板子佑士さん

 仕事や家庭以外の限られた時間の中で、目標のレースに向けてトレーニングに取り組む社会人レーサーたち。彼らの多くが目標とするレースに、Mt.富士ヒルクライムと全日本マウンテンサイクリングin乗鞍がある。2015年シーズン、この両大会の最高峰カテゴリーで共に入賞を果たした板子佑士さん(31歳)。現在、兵庫県明石市に奥さんと二人暮し。地元の実業団チーム「Life Ride」でトレーニングやレース活動を行っている彼の強さに迫る。

ママチャリで1000kmの旅へ

 スポーツバイクと出会う以前は、仕事が休みの週末に、趣味でバスケットボールやスノーボードを楽しんでいた。

「性格的に一つのことを始めると突き詰めるタイプで、スノボにハマってからは、毎週のように雪山に出かけて滑っていました。でも、一向に上達しなくて……。センスがありませんでした」と、日焼けした顔から白い歯をのぞかせながら苦笑いを浮かべる。

 2009年、26歳の時に、ロードバイクを中古販売店で購入。じつは以前からスポーツバイクには興味を持っていた。

「学生時代に、ロードバイクで旅をしていた友人に誘われて自転車旅へ。でも、体力に多少の自信はあったので、自転車はママチャリでした。実際に旅に出ると、ロードバイクの速さに驚きました。彼に着いて行くのが大変でしたね」

 神奈川から広島まで2週間をかけて1000km。漫画喫茶に泊まり、パンクなどのトラブルも経験したが、ロードバイクの速さは鮮烈な印象だった。

 ロードバイクを手にしてからは、週末はロングライドに出掛け、ヒルクライムやJCRCのレースにも参加。

「2年目に初めて参加した箱根ヒルクライム(2011年)は、年代別で真ん中くらい。JCRCでも初心者クラスで優勝した程度で、当時は基本的に通勤で乗ることがメインでした。相変わらず旅が好きで、夏休みには日本最北端の宗谷岬から東京まで走ったり、本州最南端の佐多岬から自走したりしました。ただ、いつも一人でしたし、正直イベントに積極的に参加しようとする感じではなかったですね。次第に自転車仲間が欲しいなと思うようにもなっていて、ちょっとした自転車難民状態でした」と、当時を振り返る。

転勤が転機となりレースの世界へ

 そんな板子さんのスポーツバイクを乗る環境が変化するきっかけが、勤め先の異動だった。重機メーカーの技術職として働いているが、2012年に神奈川から兵庫県へ転勤。

「スポーツバイクのイロハをわかってきたタイミングでの転勤でした。心機一転、やり直すつもりで、ショップやチーム選びから始めました」

 地元の明石市で活動し、年齢も近いメンバーが集まる「Life Ride」で第2のスポーツバイクライフをスタートさせた。すぐに地元でお世話になるショップを見つけ、週末はチーム練習で仲間たちと汗を流し、一緒にエンデューロレースなどにも積極的に参加するようになった。

「自転車仲間も増えて、仕事以外の人間関係の幅が広がりました。週末の土日の午前中はチーム練習です。自然と朝が早くなり、規則正しい生活ができるようにもなりました」

 週末の土日は連日150kmほど乗り込む。土曜は朝6時半集合で、地元の「みとろフルーツパーク」を起点に、信号のない1周7kmの周回コースを6周。その後、3〜4kmで12分ほどの登坂がある岩谷峠などアップダウンを含むコースを走る。日曜日は、フェリーで淡路島へ移動して起伏の激しい島1周コースが定番メニューだ。メンバーはチームメイト以外にも、実業団のエリートツアー個人年間チャンピオンなどレベルは高い。

「アップダウンの連続で脚を休める暇がなく、最後はお互いに千切れるまで追い込み合うので、全員が質の高い練習ができています。室内でのローラートレーニングは1年に1回やるかやらないかです。実走だからこそ限界まで追い込み切ることができ、効率的に強くなれているのだと感じます」と、強くなるためのトレーニグ環境に身を置き、手応えをつかんでいる。

「メンバーはそれぞれ家庭もあるので、淡路島の練習後は、昼に家へ帰れるかどうか、帰りのフェリー出発時刻との勝負になったりもしますよ」と笑う。

 週末の土日以外にも、平日の水曜日は、仕事終わりの19時ごろから仲間3〜4人とロード練習を行っている。

「1週間で一番追い込む日かもしれません。週末にも走る周回コースで70kmほど走ります。岩谷峠では、全員でアタックをして、頂上では吐きそうになりますよ!」と、土日以外に、平日の水曜も追い込むメニューに取り組む。

「一人では絶対に追い込めないレベルなので、練習仲間にはいつも感謝しています。また、基本的に練習がないとダラダラしてしまうので、自身を律するためにも、今では自らSNSなどでトレーニングの予定を立てることが多いです」

 仕事と家庭で過ごす時間以外は、ほとんどトレーニングに充てる生活を続けているが、

「ロードバイクは、トレーニングをやればやるだけ結果が出やすので、やりがいがあります。とくににレースで勝てるようになると、さらに上を目指したくなります」

 2012年は転勤や結婚もあったが、トレーニングを継続することで、2013年は、ツール・ド・おきなわ100kmで優勝。石鎚山ヒルクライムでも優勝を掴む。

 

~後編へ続く~

 

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ヒルクイラムレースでは、スコットのアディクトSLにホイールはZIPP202、コンポーネントはスラムレッドの重量5.3kgの軽量仕様で挑む。さらなる軽量化のためのフロントシングル化には、リスクを恐れてまだ踏み切れていないという

 

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板子佑士・Yuji Itako

1983年生まれ、神奈川県出身、兵庫県明石市在住。兵庫県内のメーカーに勤務し、妻と二人暮らし。2012年、転勤をきっかけにレースを志すようになり、2015シーズンは、Mt.富士ヒルクライムと全日本マウンテンサイクリングin乗鞍で共に入賞。初参戦した実業団エリートツアーでは一気にプロツアー参戦資格を獲得。ヒルクライムレースを得意としながらも、全日本選手権を完走するなどロードレースでも活躍。身長174cm、体重60kg、体脂肪率10%(レース時)。スポーツバイク歴6年。

成績

2013年

石鎚山ヒルクライム 四国のてっぺんクラス 優勝

ツール・ド・沖縄100km 優勝

2014年

晴れの国おかやま7時間エンデューロ 7時間ロードソロ 優勝

全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 男子B 優勝

ヒルクライム大台ヶ原 since2001 チャンピオンクラス 優勝

2015年

全日本自転車競技選手権大会 ロードレース 36位(完走)

久万高原ヒルクライム2015 チャンピオンクラス 優勝

Mt.富士ヒルクライム 主催者選抜クラス 6位

全日本マウンテンサイクリングin乗鞍 チャンピオンクラス 5位

富士チャレンジ200 6位

JBCF 栂池ヒルクライム E3 優勝

JBCF 乗鞍スカイラインヒルクライム E2 2位

JBCF 大星山ヒルクライム E1 2位


 

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