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2018年04月10日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」6-4)うまうまグルメ、史跡に寺社巡り、山でも海でも、フィールドは無限大

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第6章:底なしの魅力!?ツーリングを徹底的に楽しむ

6-4)うまうまグルメ、史跡に寺社巡り、山でも海でも、フィールドは無限大

ツーリングは自由に趣くままに行きたいところへ行って、好奇心を満たし、達成感や征服感を味わわせてくれる。食欲も人間の動物としての本能である。ツーリング中は新陳代謝が進むので、美味しいものを最もオイシク食べられるボディコンディションになれる。ツーリングは、人間の様々な本能を満たしてくれるのだ。

 

<食べるヨロコビを最大限に味わえる>

人間には様々な欲があるが、誰にでも必ずあるのが食欲である。言うまでもなく人間の動物としての根本的本能であり、これを満たすことは必ず幸せな気分になるのである。

より美味しいものを食べたいという欲もほとんどの人が持っている。ツーリングの楽しみは日常生活からの開放、つまり非日常を味わうことでもあるが、ツーリング中は体を動かし、たくさん空気を吸って新陳代謝が進むので、食事も間違いなく非日常的に美味しく食べられる。つまり美味しいものを最も美味しく食べられるボディコンディションになれるのであり、グルメを最大限に楽しめるチャンスなのである。

 

<貴重なグルメチャンスにはケチらない>

いろんな場所を訪れればその土地ならではの美味いものがあり、それを発見し食するのもツーリングの大きな楽しみである。そこでしか味わえないものは、非日常であり貴重な体験の機会でもある。これを我慢したり節約と称してケチったりするのはとってももったいない。昔は自転車旅行と言えば、お金がないからという理由で自転車で旅をするという人が多く、食事を切り詰めるスタイルも多々あった(筆者も若年時代はそうだった)。しかし、そんなビンボーツアーなど昨今では流行らない。ツーリング中の1日1~2回程度の食事ならば多少奮発したってしれているのだ。ツーリング自体、初期投資を除けばたいしてお金がかかる趣味ではないし、少しでも多くの種類の美味しいもの楽しみ、それを知る喜びや思い出となることを思えば食事代など安いものである。もちろん毎日美味しいものを食べておられるグルメの方々でも、ツーリング中は美味しいものをますます美味しく食べられるチャンスであることに違いはない。

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体を動かしたあとの食事は格別だ

 

<美味しいものの探し方>

その土地の美味いものと言っても観光地によくある名物料理などを謳った、客引きのいる店や誇大な宣伝のある店は心理的にも遠慮したくなる。食事処は客引きのいるような店ではなく、並んでいたり混んでいたりする所を選んだほうが間違いない。言うまでも無く美味しいから混むのだ。

ネットを活用して、「ぐるナビ」や「食べログ」などのサイトの評価や書き込みを参照にするのも良い。かつてはサクラ的な書き込みや商業的なPRも多かったが、昨今ではデータ量が豊富になり信頼度が高まっている。一方そのようなサイトには載せていない、知る人のみぞ知る隠れた穴場もある。そのような店を見つけたら、嬉しくなって何度も行きたくなるだろう。

港町を訪れた際には漁港近くにある店や、魚市場にある食堂に行ってみるのもいい。鮮度の高い海産物料理がリーゾナブルに楽しめること間違いなしである。もちろん事前に美味しいものやレストランなどを調べておいてコースに組み込めばベストだが、途中で美味しそうなお店を見つけるのもまた楽しみである。

ちなみに筆者は大のラーメン好きであり、行列のできる美味いラーメン屋があると聞くと東北でも北海道でも食べに行ってしまう。ラーメンは中国の料理ではなく日本で発達した日本食であり、日本のあちこちにご当地ラーメンがある。その土地ごとに味のトレンドがあり、同じ土地でも店によって味は異なる。全国各地のラーメン食べ歩きもツーリングの大きな楽しみなのである。美味いもので本能の欲求を満たせば、楽しみはますます深まる。

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漁港に近くのお店では新鮮な海の幸が味わえるはずだ

 

<ツーリングはその目的もフィールドも、無限大>

ツーリングの目的はもちろんグルメでも構わない。しかし自分の興味のあるところや、美しい風景、歴史や文化、名所旧跡、気持ちの良い道やチャレンジングなヒルクライムなど他にも様々な目的を持つことができる。目的や目標はひとつに限らず、いくつあっても構わないのだ。

ツーリングのテーマはある意味、無限大である。ネットや地図を見て自分の興味のあるところに自由気ままに行けばいい。例えば寺社、公園、美術館、旧道、旧跡など自分の興味のあるところを線でつないで行けばツーリングコースができあがる。しかし決めたからといって必ずそこに行かねばならなくはない。気に入った所は興味が満足するまでゆっくり見ればいいし、退屈だったらつまみ食い程度に見て次々に回ればいい。自転車の良いところは趣くままに好きなように、自由に楽しめることにある。

 

<寺社や史跡は、邪念を持たずに参拝する>

どこでも見つけやすいテーマは寺社や史跡めぐりである。サドルにまたがって感性を研ぎ澄ませ、時空を遡れば歴史を感じることのできるタイムトラベルが可能になるのだ。身近にあるお寺や神社を巡ってみよう。御神木をはじめ深い緑の木々は都会の中でも厳かな雰囲気を醸し出し、その薄暗さと静けさに神が宿っていることを感じるのは、今も昔も変らないはずだ。歴史ある街は日本各地にあるが見て回るにはクルマやバスでは機動的には動きづらい。自転車は最適の観光ツールでもあるのだ。また、自転車に乗ることにより、原点に帰った気持ちになって、邪念を持たずに参拝すれば昔から続く息吹きを感じることができる。

旧街道も面白い。東海道や中山道の他、いにしえからの街道は全国各地に残っており国道や幹線道路となっているところもあるが、歴史の面影を随所に見出すことのできる旧街道の姿がそのまま残っている場所があちこちにある。幹線道路やバイパスから取り残された旧道は静かでクルマも少なく走りやすい。道端には道祖神がいたり古い家屋や倉などの町並みがあったり、史跡や旧跡などの他、部分的に石畳の道なんかが残っていることもある。

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寺社めぐりには激坂のヒルクライムというご褒美(?)がついてくることも

 

<古代へのタイムトラベル>

歴史巡りのツーリングでは、古墳や貝塚跡を探してみるのも面白い。あまり知られていないが古代の旧跡は意外とあちこちにある。自治体のHPや個人のレポートなどで調べてみるとコースプランニングが楽しくなってくる。

古戦場跡も訪問してみよう。今は道路や住宅、農地などに変っているが、歴史の転換点にもなった古戦場跡にはどこかに緊張した空気が時代の面影として漂っている。お地蔵様も街中の思わぬところで出くわすものだ。これら史跡は開発の中でそのポイントだけが当時のままずっと取り残されており、それらをつなげていくことで歴史ロマンが膨らんでいく。自転車がタイムマシンになるのだ!?

 

<アートの世界に吸い込まれてみる>

アートの世界はあちこちにある。美術館、博物館、資料館などは自治体のHPやパンフレットなどで調べれば、近くでも知らなかったところが結構あることに気付くだろう。さらにネットでいろいろと検索すればその多さに驚くはずだ。ちなみに「東京の美術館」だけでも軽く100カ所以上はあるのだ。博物館や資料館もバブルの頃に建てられた「ハコもの」や「ふるさと創生」「町興し」といった名目の産物がたくさんある。税金の無駄遣いとも思えるものもあるが、これらを無駄のままにしないためにもアートをお勉強しておきたいものである。

また、自分の好きな文学や映画、TVドラマでも構わないが、それらの舞台を巡るのも面白い。単にその場所を見るのでなく、自分がその世界に入り込み「ここから主人公は海を眺めながら、こうつぶやいたのだなぁ……」などとその文学が書かれた背景やその時代と現在とのギャップに、感傷に浸ることもできる。建造物の観察も面白い。例えば大使館めぐりをすれば、その国のお国柄を垣間見ることのできる建築様式があったりして異国情緒を感じられる。また補修の具合などからもその国の財政事情などを想像できたりもする。

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美術館や博物館をめぐる場合はスニーカーや足音の立たないSPDシューズの着用を心がけよう

 

<公園めぐりは一粒で何度も美味しい>

公園めぐりをしてみよう。公園には美術館や資料館があったり、また史跡や古墳跡などが公園になっている場合もあって、テーマをいくつも発見できる。公園もそれぞれに周辺環境が異なり、そのつくりや訪れている人々もカラーがあり、ウォッチングをして見るとトレンドが見出せたりして興味深い。桜をはじめ多くの花が季節ごとに次々に咲き、新緑や紅葉など四季折々にさまざまな季節の横顔も楽しめる都会のオアシスだ。砂漠の湧水地をオアシスというが、都会という砂漠の中でも湧水地はあちこちにある。その多くが公園や寺社の中にあり、そのまま飲める湧水もある。乾いたのどに自然の潤いを与えてあげよう。

 

<江戸御府内88カ所巡礼と七福神めぐり>

四国の88カ所巡礼は有名だが、手軽にツーリングするにはちょっと難しい。あまり知られていないが東京都内にも江戸御府内88カ所というのがある。護国寺や新井薬師など有名なお寺から、ビルの上層階にある都心ならではのお寺までいろいろあるが、江戸時代中期に決定されたれっきとした札所であり、巡礼者にはご朱印が頂ける。週末ごとに巡礼していけば何カ月かで満願成就の喜びを味わえるだろう。七福神詣は各地で行われているが、自転車で回ればちょうど良い日帰りツーリングとして楽しめる。七福神とは、有福の神である大黒天、大度量の布袋尊、寿命の寿老人、清廉の恵比寿、威光の毘沙門天、人望の福禄寿、愛敬の弁財天の七神で、それぞれを祭ったお寺や神社が近い範囲内にある場合が多い。初詣などを兼ねて巡礼すれば良い年になるだろう。

 

<ショールームめぐりサイクリング>

テーマをもってのツーリングはジャンルを選ばない。それが企業の施設であるショールームであっても構わない。クルマのショールームに行けば大概は応対をしてくれるだろうし買うつもりなど毛頭なくても、話しを聞いているだけでいろんな事を知ることができる。インテリア商品、住宅展示場、電力会社の広報施設などいろいろあるが、メーカーが直接運営しているショールームなどは自由に見学できる雰囲気があって入りやすい。工場見学ができるところもある。例えば飲食物の工場ならば、アウトレット直売所が併設されている所もあり格安で購入できたりもする。試食や飲み物が出てきたり、おみやげをくれるところもあったりして、お得でお勉強になるツーリングを楽しめる。

 

<観光道路は良いツーリングコース>

一般に観光道路と呼ばれる道は風光明媚な場所につくられており、その中でも景色が良いポイントを結ぶようにルートがとられている。クルマではそんな景色のなかをハイスピードで走りぬけてしまうが、ゆっくりと風景を楽しむには自転車が最適だ。ツーリングのコースに是非組み入れておきたい。しかし観光地はその魅力から多くの人が集まる場所であり、混雑の中を走るのは快適ではない。そういう場所にはまだ人々が活発に動き出す前の早朝に行くのがお勧めだ。自然の景観が最も美しく見えるのは太陽光が横から当たる時間帯で風景の陰影が浮き彫りになって立体感が強調され、メリハリのある風景に生まれ変わる。夕方よりも大気が澄んでいる日の出直後しばらくのタイミングがベストであり、すがすがしい気分の中で壮大な風景に感動できる。

観光地や道路の情報なども自治体のHPから検索することができる。観光局や土木事業課などのページで観光情報の他に、道路の通行止めや閉鎖などの情報も入手できるし、一般車両が通行できない林道などの情報もある。そんなところも自転車なら通行できる場合があり、クルマが通ることのないツーリングには最高のフィールドとなる。ただし自転車も通行禁止になっている場合もあるので確認をしておこう。

 

<大規模自転車道で安全に走る>

クルマの少ない道は快適だが、それでもリスクはある。しかし自転車専用のサイクリングロードならばクルマのストレスから開放される。安全で快適なツーリングを楽しむには最高のフィールドだ。

大都市や中核都市の近郊にも多くのコースがあり、河川や湖沼に沿ったり田園風景の中を通るといったアップダウンの少ないコースが主流で、ビギナーやファミリーでも安心して楽しむことができる。景色の良い場所につくられていることが多く、季節の変化を感じやすく爽やかなツーリングが満喫できるだろう。サイクリングターミナルが起点となっているところもあり、トイレや売店、食事ができる場所もある。ルート案内のパンフレットや看板のほかコースの随所に距離の表示がある場合が多く、精神的にもラクに楽しむことができる。

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大規模自転車道であれば、途中途中に休憩所やトイレも設置されていて安心だ

 

<川辺のコースを走る>

川辺のコースは起伏が少なく走りやすい。信号や交差する道も少なく、野鳥や植物などの自然観察にも適している。川辺にはサイクリングロードも多く、初心者にもお勧めの気持ちの良いフィールドである。大きな河川のコースならば、どんどん上流に向かっていけば自然の変化に気が付くだろう。川辺の水鳥や河原に住む鳥の種類も違うし、生えている植物も変わってくる。緑の濃さも空気のにおいも微妙な違いが感じられるはずだ。同じコースでも、季節によっても日々の気候によっても様々な変化を見せてくれる。

首都圏ならば多摩川や荒川、江戸川、利根川などに沿ってのコースが河口近くからかなり上流まで何十キロも続いているので是非トライしてみよう。源流を極めるのもひとつの楽しみとなる。もちろん山奥のはじめの滴りをめざすのではなく、湖沼から流れ出ている川だとか途中のダムまでだとかである。例えば昭和の懐メロで有名な東京の神田川は、隅田川との合流地点が終点となるが、その源流は井の頭公園にある井の頭池の東端から流れ出ている。流れに沿って走れば都会の川の一生を見るツーリングができる。

 

<海岸は時計回り、湖沼は反時計回りで走る>

海岸沿いの道は、視界が開け風光明媚なところが多い。波の音を聞きながら走るのは実に心地よいのである。半島や島の海岸線を走るときは必ず時計周りでプランニングする。そうすれば必ず外側の道、つまり海側を走ることとなり、景色の見え方が陸側よりもずっと良い。そして交差する道は少ない。海側からクルマが飛び出してくることはないのだ。

湖沼は周回路が取りやすくスタートとゴールを同地点にしたプランニングが可能で、カーサイクリングにはとても便利だ。湖沼を走るのは海岸とは逆で反時計回りである。必ず湖沼側を走ることとなり、景色も安全性も外側車線よりも優れている。車道以外に湖畔沿いに観光用の道路がついていることもある。自転車が通行可能であればそちらを走っても気持ちが良い。

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湖沼を走るときは反時計まわりを心がけると走りやすい

 

<人との出会いはツーリングを彩る>

ツーリングに出発してからの情報は、途中で出会った人々からの口コミ情報が非常に役に立つ。鮮度も高く、ニーズに応じた直ぐに役に立つ情報をゲットできる場合が多い。最も有意義な情報は出会ったサイクリストからのものだ。同様の趣味を持ち、同じフィールドで同じ視点で得た情報はそのまま自分のものとして使えるのである。サイクリストに出会ったら手を上げて挨拶するのがマナーだが、休憩中や観光中のサイクリストを見つけたら積極的に声をかけて情報交換をしよう。相手もそれを望んでいる場合が多く、それがきっかけで共通の仲間がいることがわかったり交流がはじまることだってある。地元の人からの情報も貴重だ。道を尋ねる際に追加で聞いてみれば、何処に面白いものがあるとか、何かをやっているだとかの地元ならではの最新かつ貴重な情報が手に入るのだ。

ツーリングのテーマは自分で好きなように創造していくことができる。自分のペースでいつでも始められ、自転車旅ならではのスピードだから出会える「驚き」や「発見」、そして「感動」があちこちに転がっているのだ。ツーリングの楽しみを、どんどん深堀してみよう!

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は4月24日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第6章:底なしの魅力!?ツーリングを徹底的に楽しむ

1)知らなかった!地域の魅力、日本の美しさ、メッチャあるある

2)とにかく始める、まずは半日、そして日帰り、宿泊ツアーへ

3)楽しみの創造!プランニングするほどにドンドン世界が広がる

4)うまうまグルメ、史跡に寺社巡り、山でも海でも、フィールドは無限大

5)どこでもドア!?輪行を極める!

6)軽くコンパクト!荷物と装備とパッキング技術!

7)オシャレだけではない。安全にも快適さにもアクセサリーは重要

8)センスが光る!ウェアラブルグッズで快適に!

9)快適ライドの決め手!暑さと寒さ、風と雨、上手につきあう

10)仲間が増えれば楽しさ倍増、ビギナーも安心、自転車は人をつなげる!

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