2017年10月24日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-2) ダイエット、シェイプアップに最適!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
5-2) ダイエット、シェイプアップに最適!
引き締まったボディ、魅力的なスタイル、若々しいカラダ、自転車はこれらの夢を叶えさせてくれる。短期的な目先のダイエットではなく、リバウンドしない体質に改善できる。シェイプアップで体型を整え、カッコイイボディスタイルを手に入れる。その秘訣は続けること、そして楽しむことである。
<人間は太る宿命にある>
人類誕生から数十万年以上。その歴史の99%の時間、人間はずっと飢餓のリスクに直面していた。いつ食べ物にありつけるかわからないため、食べられる時にできる限りのカロリーを摂取し、いざという時に供えて「脂肪」という形で体内に蓄えることを、生き延びるために必要な機能として発達させてきたのである。
また、脂肪を蓄積する機能だけでなく、蓄積した脂肪を一気に使ってしまわないように、少しでも燃費をよくすべくカロリー消費をおさえようとする機能も、人間のDNAに刻み込まれて来た。しかし今日、飢餓のリスクが無くなっても、長年培われ続けたその機能は衰えることなく保持されているため、食事のたびに「脂肪」が体内に蓄積されていくのである。蓄積される分、消費をしなければ溜まりつづけて太っていく宿命にある。
そして一気に脂肪を減少させようとしても、飢餓に対する防衛本能から、少しずつしか消費できないカラダのしくみになっており、簡単にはダイエットできない宿命も背負っているのである。
消費カロリー以上に食事でカロリーを摂取すると脂肪は蓄積され続ける
<自転車はダイエットに最適>
これまでにダイエットをしようとした人は非常に多いだろう。ある調査によれば、とくに30代から40代の方々の過半数は、一度はダイエットにトライしたことがあるという。しかしそのほとんどは1年どころか半年も続けられず、一時的なダイエットで終わっているらしい。世の中にダイエットビジネスは数多くあるが、結果的にそのほとんどは継続的な大きな効果を得られていないようである。
意識の高い方は、安易な食事制限やサプリメントなどではなく、ジョギングやジム通いなど前向きにカラダの本質から改善しようと取り組まれていることが多いが、それでも何年も続けている例は多くはない。ジョギングを始められる方は多いが、とくに中高年の人は膝や腰への負担が大きく、半年以上継続する人は半分にも満たないという。
スポーツジムや水泳、ヨガ教室に通ったりする人もたくさんいらっしゃる。毎月数千円から万円単位のお金がかかり、時間の確保や制約がある人も多く、ダイエットによってリバウンドをしない体質改善に成功するには、かなり強い意志と経済的支出が必要となるようだ。
自転車の場合、とくにジテツウをすれば時間的にも経済的にも、そして肉体的にも負担は少ない。通勤だからこそ、今の生活スタイルを大きく変えずに無理なく継続でき、理想的なダイエットを実現できる近道なのである。運動に対する心理的ハードルも低く、気軽に始めやすいのもサイクリングの良いところである。毎日のジテツウはストレスも解消してくれるし、街の情景や季節を感じながらの通勤は楽しみに満ちており、いつまでも飽きることなく継続しやすい有酸素運動なのである。無理なく長期間継続できて、太りにくい体質に変えていくのは自転車が一番良い。
日常的な運動としてジョギングもダイエット効果が高いが、膝や腰への負担が心配だ
<ダイエットのメカニズム>
ダイエットのためには、脂肪を減らさなければならない。カロリーの摂取量が消費量より多いと体内に脂肪が蓄積される。逆に消費カロリーが摂取カロリーより多い状態を続ければ、理論的には脂肪は減っていきダイエットにつながる。摂取カロリーを減らすのは食事制限中心となるが、ここでは主に消費カロリーを増やすこと、つまり運動する=自転車に乗ることについて考えたい。
有酸素運動を始めるとまず血液中の糖質が消費される。脂肪燃焼は運動開始10分後ぐらいから少しずつ始まるが、20分以上経つと徐々に燃焼効率が高まってくる。脂肪分解酵素とも呼ばれるリパーゼ酵素が積極的に働き出し、脂肪を分解しエネルギーに変えて行くのだ。20-30分以上運動を継続していると、消費の主力は脂肪になっていく。少しお腹が空いた状態で自転車に乗れば、早い段階から脂肪も平行して燃え始め、効果は高まる。
カロリーを消費するのは主に筋肉であるが、10代の頃には比較的たくさんあった筋肉も、20代以降になると何もしなければ徐々に減り始める。筋肉が減少すれば基礎代謝率(運動しなくてもカロリーを消費する量)は低下し、10代と同じ食事量でも脂肪が付きやすくなる。
40代や50代になればなおさらである。継続的に運動していなければ筋肉は落ちていき、基礎代謝率は下がり続け、ますます肥満やメタボに近づいていくこととなる。毎日の自転車は筋肉を維持する為にも有効であり、基礎代謝の低下を抑制することにもつながっていく。ダイエットのためにも三日坊主にならないように、楽しんで続けて行きたい。
<痩せるのではなく、引き締める>
ジテツウでのダイエットは嬉しいことにお腹や腰周りの余分な脂肪が落ちてくるだけでなく、足も締まってくるし、太ももを上下に動かすお尻の筋肉によってヒップアップ効果もある。人間の基礎代謝は全体の4割が筋肉で行われるという。この基礎代謝を高めることで、正しいダイエット効果が得られるのであるが、身体を引き締める筋肉が増えることで、脂肪はますます燃えやすくなり、カロリーを消費しやすい身体に徐々に変わっていく。心肺機能のアップにより疲れにくく、また回復もしやすくなってくる。自転車はダイエットのための夢の乗り物なのである。
走行速度はちょっと速めの感覚で20km/h程度がひとつの目安である。人により様々だが、息が切れない程度のスピートを維持する。ギアは軽くして、70-90程度のケイデンスを維持するように脚を回す。軽いギアで回転数を確保するほうが、脂肪が効率よく燃焼される。逆に重いギアを踏んで、息が切れるような強い負荷になると無酸素運動となって、糖分でカロリー消費が行われ、脂肪燃焼は少なくなる。これはいわゆる筋トレであり筋骨隆々のマッチョな体質に向かうので足は細くはならない。
足への負荷をできる限り軽くして積極的にクランクを回す意識で乗っていると、体全体の余分な脂肪が燃焼しやすくなり、足もスリムに引き締まっていく。
<体重を1kg落とすには?>
体重を1kg増やすのは、気を抜いているとすぐだ。そのぶんバイクなど自転車本体やパーツなどで1kg軽くするとしたら何万円もの費用がかかってしまう。自分の意識とちょっとした努力で体重を落とすほうが、経済的にも肉体的にも精神的にもずっと良い。体脂肪は1kgで7,000~7,500kcalのカロリーを持っている。体脂肪を1kg落とすには、摂取カロリーと消費カロリーの差が7,000~7,500kcalとなるように、エネルギーとして消費する必要がある。ちなみに、体重50kgの人が体脂肪を1kg落とすのには、ランニングで150km・ウォーキングだと300kmが必要となる。
もちろん、一気に1kg落とす必要はなく、毎日100kcalの摂取カロリーと消費カロリーの差を維持すれば2~3カ月で達成できるはずだ。ちなみに、普通の人のダイエットに必要な1日の消費エネルギーは200kcalが目安といわれている。その消費のための毎日の必要時間は次のとおりとなるが、やはり自転車がおすすめなのである。
<リバウンドしないボディを作る>
体重を減らすことだけを目的にした食事ダイエットや、薬などによるダイエットは一時的には効果があるだろう。しかし体に必要な栄養が不足し、それを補うために筋肉や骨が分解されてしまい、かえって健康が害される可能性がある。急激なダイエットで体重が減少すると、体は生命を守るためにそれ以上体重が落ちないよう適応し、少ないカロリーでも生られるよう基礎代謝が減って、脂肪を消費しにくい体質になる。ダイエットを止めた途端に、体は元の体重に戻そうとする機能が働き、リバウンドするのである。ダイエットとリバウンドを繰り返すと、痩せにくく太りやすい体質になるリスクも高まる。
自転車は短期間で急には痩せるのでなく、時間をかけて徐々に引き締まっていくためリバウンドのリスクは小さい。また、筋肉の割合が増えて基礎代謝量がアップし、身体のコンディションが整いやすく太りにくい体質になりやすい。筋肉は脂肪よりも重いので短期的には体重が増えることもあるが、長期的には基礎代謝が増えて食べても太りにくい、リバウンドしにくい身体に体質改善していくのである。
<楽しむこと、続けることが最重要!>
大事なことはこの有酸素運動を継続することである。少なくとも週3回は乗りつづけたい。3-4カ月以上、食事にも注意しながら続ければ必ず効果は見えてくる。また風が皮膚を刺激し、内分泌の働きを活性化させ皮下脂肪も落ちやすくなり、さらには風を切って自由に爽快に気分良く走り、人的にも物的にも束縛なく好きに楽しむことにより現代病のストレス解消にも効果がある。
ダイエットに失敗するのは、そのほとんどが継続できないことが原因である。自転車に限らず、長期間継続して一定の有酸素運動をできればダイエットは成功するのである。自転車なら通勤でも日々のライドでも、日常生活の中で習慣化しやすい。食事も脂肪や炭水化物の摂り過ぎには注意は必要だが、身体を動かした後は美味しく楽しめるのである。一方、現在でも世界では10億人以上の人々が食料不足に直面し、飢餓に苦しんでいる。たまたま飽食の国と時代に生まれた我々としては、決して食料を粗末にせず、無駄の無い食生活と健康管理をしっかりと行いたい。そうすることが無駄な食費や医療費を削減し、それらで浮いてきた予算を活用できれば、飢餓に苦しむ⼈々の救いの一助になるかもしれない。
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は11月7日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人、茶利坊主)
第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
2)ダイエット、シェイプアップに最適!
3)違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!
4)カッコよく快適に!レイヤード術
5)予防する!身体のトラブル
6)カラダの異常!どうする!?
7)サイクリストの義務!自転車の健康管理
8)パンク!!! スマートな対処はカッコイイ
9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ
10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。