2017年10月10日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 5-1) 生活習慣病に、メタボ対策に、効果絶大!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第5章:ゴキゲン! 「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
5-1) 生活習慣病に、メタボ対策に、効果絶大!
日本人の死因の過半数が生活習慣病ともいわれている、ガン、心疾患、脳血管疾患で占められており、同じく生活習慣病である糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などがそれらの死因にも大きく影響している。自転車はそれら生活習慣病の予防効果が高く、メタボ対策にも効果絶大なのだ!
<最高のエアロビクス運動>
自転車は数あるスポーツのなかでもエアロビクス効果が非常に高く、かつ身体に最も優しいスポーツである。ジョギングやジムでの運動などに比べ、体重をサドルとハンドルとペダルの3箇所に分散するため腰や膝への負荷が小さく、ケガも少ない。
とくに肥満やメタボリック症候群(および予備軍)の人は概して身体が重く、足腰で全ての体重を支えるスポーツの場合は、腰や膝への負担が大きくなる。ちなみにランニングでは着地の際に体重の3倍近い力が片足にかかるという。さらに速く走るほど腰や膝への負荷は大きくなっていく。
メタボで出たお腹を揺らして、ジョギングやエアロビクスダンスをするのはちょっと見苦しいかもしれないが、そんな体型でもレーサージャージとヘルメットにサングラスでビシッと決めて、ロードバイクで軽快に走れば見栄えはずっとカッコイイのである。
<心肺機能と循環機能を高める>
生活習慣病の予防には心肺機能と循環機能の強化が有効である。自転車はこれらの機能を高めるのに効果が高い。脚にはカロリーを多く消費する大きな筋肉が集中しており、ペダルを回し続けるには大量の酸素が必要となる。ペダリングは脚だけでなく腹筋や背筋、腕や手など身体のほとんどの筋肉を使う効率的な全身運動でもある。したがって全身すみずみまで酸素をしっかりと供給する必要が発生し、空気を取り込むための心肺機能が強化されていく。取り込んだ酸素を血液で運ぶため、心臓のポンプ機能によって全身に供給されていく。心臓から遠い脚や全身の毛細血管まで届けることにより循環機能が鍛えられるのである。
<血管を健康にする>
高血圧は心疾患や脳血管疾患などの大きな要因である。じつは筆者も高血圧気味なのだが、血圧が高い状態でも自分ではとくに自覚症状はなく、日常生活にも自転車ライフにも支障をきたすことはない。
しかし血圧が高い状態が続くと、血管への負担がずっとかかり続け、動脈硬化がすすみ、血液の流れが悪くなったり、血栓(血の塊)ができやすくなったりする。さらに高血圧が続くと血管や心臓だけでなく、脳、腎臓などにも障害をもたらし、「脳卒中」「心筋梗塞」「狭心症」「腎不全」などといった、命にかかわりかねない大病のリスクが高まってくるのである。自転車に乗ってしっかりエアロビクス運動をすれば血流速度が速くなり、その効果で血管年令が若くなる。ペダリングの運動は心臓から血液を全身に巡らす補助効果もあり、血流が増えることにより、血管の働きも活発になってくる。
血栓などで詰まりがちになっていた血液がスムーズに流れやすくなり、さらに血管自体も活発に活動することで、血管壁が柔らかくなり動脈硬化しにくくなるのである。より多くの血液を筋肉に運ぼうとするので、末端の毛細血管は発達していき、血管自体が太くなったり、新しい血液の通り道を作ったりする。 ただし、重いペダルを踏み込みつづけていると、筋肉が強く収縮して血管を圧迫し、かえって血流を妨げることにもなりかねないので、ケイデンスを意識して軽いペダルをクルクル回すようにしたい。
<心疾患や脳血管疾患の予防になる>
心肺機能と循環機能が高まることで、心臓から毛細血管までもが丈夫になるだけでなく、血液中の中性脂肪が減少し、悪玉コレステロールを取り除く善玉コレステロールが増えてくる。善玉コレステロールによって健康な血液であるいわゆる「サラサラ血」となり、脂質代謝を改善し、高脂血症のリスクを減少させる。つまり高血圧や動脈硬化になりにくくなるのだ。
動脈硬化は心疾患の要因のひとつであり、循環機能が高まることで動脈硬化に対する予防や治療の効果があることが、医学的に認められている。脳血管疾患(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞など)の要因としても、動脈硬化や高血圧などがある。循環機能の強化は血管を健康にし、これらを改善する効果があり脳血管疾患の予防になる。
<お腹ポッコリのメタボ対策>
メタボリックシンドロームとは単なるデブではなく、内臓の周りの脂肪が多くなる内蔵型肥満と、高血糖・高血圧・脂質異常症などの症状が、同時に2つ以上現れている状態だという。中高年になるとお腹がぽっこりと出て、会社の定期検診などでメタボリック症候群と診断される人も増えてくる。医者からはメタボ解消のために運動するように進められ、そのひとつとして自転車が、効率の良い、続けやすい方法として推奨されるケースも多いようだ。内臓の周りにこびり付いた、ぶ厚い脂肪をなくすためには、毎日一定時間以上の有酸素運動を欠かさずに続けるのが効果的である。
株式会社シマノが、社員50人を対象に自転車に乗ってメタボを解消する3カ月間の社内実験を実施したことがある。その結果、週3回以上乗った人は体重が平均1.7kg、体脂肪が1.6%減少。血中インスリン濃度が高かった5人は全員が基準値内に収まるなど血液データでも改善が見られたという。
メタボロックシンドローム解消のためには、運動を継続させることが大切
<メタボ対策には最も効果的>
メタボで太った身体の場合、とくに膝や腰にあまり負担をかけずに続けられる運動は、ジムに通うよりもジョギングするよりもジテツウが良い。街の景色や風情を眺めつつ、走行空間周りの日々の変化などの発見もあり、楽しみながら毎日続けやすいのだ。霊長類であるヒトはもともと4本脚で歩く動物から進化してきた。2本脚で立つという行為は、動物としては極めて特異であり、腰や膝にとても負担をかけている。ヒトは腰痛や膝痛に悩まされる宿命を背負った動物なのである。
ジムやジョギングは、ただでさえ腰や膝に負担のかかるヒトの弱点に、さらに負荷をかけることにもなりかねない。重たい体重をサドルとハンドルとペダルの3箇所に分散し、路面からの衝撃も吸収できる自転車は、腰や膝への負担が少ない理想的なメタボ対策運動なのである。とくにバランス感覚の要求されるロードバイクなら、体幹の筋肉(インナーマッスル)も鍛えることができる。
<糖尿病の予防にもなる>
生活習慣病である糖尿病の患者は、全国で600万人以上。糖尿病予備軍といわれている人は1500万人もいるといい、中高年以上の3人に1人は糖尿病の可能性があるとも言う。一度発病すると食事療法や薬物療法(インスリンの投与)、運動療法などをずっと続けなければならない、ある意味「不治の病」である。
その予防に推奨されているのが自転車などによる有酸素運動だ。自転車に乗ることにより血液中の糖分が筋肉によって使われて減少することにより、糖尿病の予防となる。心疾患や脳血管疾患などの怖い合併症にもつながりかねないこの病気を予防するためにも、自己管理で血糖値をコントロールすることを意識したい。
血糖値は食後20分ぐらいから上がり始めるので、その頃から自転車に乗り始め、20~30分以上継続すると効果があるという。血液の中の糖分などがエネルギーとなって燃焼されて行き、食後の血糖の急な上昇を自転車に乗ることによってコントロールする事が可能となるのだ。 朝食後20分経ったら自転車で会社に向かい、夕食の後も20分後にジテツウで帰路につけば効果的である。また休日などは、1時間程度以上乗る事で脂肪や悪玉コレステロールを減少させ、糖尿病の予防につながるという。
<ストレス、不眠、精神疾患にも効果あり>
自転車は身体的な疾患のみならず、精神的健康にも効果がある。まずはストレスの解消だ。仕事や生活の中で不快なことがあっても、自転車に乗ると気分がスッキリするのである。筆者は十数年ジテツウを続けているが、毎日同じ場所を走っていても、日々周りの景色や街の情景を楽しみ、風を感じることで晴れやかに気分になってくる。
ジテツウをしていなくても、休日にサイクリングを楽しんだり、街中や近所の周りを走るだけでも気分転換になり、走った分だけ達成感を味わうことができて、ストレス解消につながるのである。生活習慣病予防に食事や運動は大切だが、睡眠の質も大きく影響する。ジテツウやサイクリングによる適度な疲労感は、睡眠の質を向上させ、グッスリと眠るのに効果的とされている。また、日光に当たることで幸せホルモンと言われている「セロトニン」が分泌され、それによりストレス、不眠、うつ病の予防や改善に効果があるという。
うつ病は、非日常の体験によって、感じにくくなっている感性に刺激を与えると、改善に効果があるとされる。自転車は顔に風が当たるとその感覚でスピードを感じることができ、風景や環境にも敏感になって、周りからの刺激をとらえようとする本能を回復させてくれ、うつ状態から開放されるのだという。1000円札の夏目漱石さんは、ロンドン留学中に神経衰弱でうつ状態にあったというが、ホームステイ先のペアレントに勧められてサイクリングを始めたら、病状が改善したといわれている。
<カラダに合わせて無理せずに>
自転車は様々な疾患に効果があるが、大切なのはずっと続けることである。何回か自転車に乗っただけでは大きな効果は得られない。何カ月単位で続ければ改善が体感できるはずだ。できれば何年も何十年も乗り続けたい。
自転車は運動の強弱や量を自由に加減できるので、肥満気味の人だけでなく体力がない人や持病がある人でも、楽しみながら自分の体調に合わせて運動量を調節することができる。無理せずにマイペースでゆっくり走れば長時間継続できるため、消費エネルギーも大きくなるが、マイルドな運動のため同レベルのエネルギー消費運動にくらべ、疲労感はずっと少ない。自分の体力や体調、仕事や生活に合わせて無理せずに、楽しみながらいつまでも自転車に乗り続けていただきたい。
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は10月24日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
(写真/本人、井上和隆)
第5章:ゴキゲン!「カラダ」と「バイク」のメンテ技術!
1)生活習慣病に、メタボ対策に、効果絶大!
2)ダイエット、シェイプアップに最適!
3)違和感なし!快適乗車で生涯サイクリストに!
4)カッコよく快適に!レイヤード術
5)予防する!身体のトラブル
6)カラダの異常!どうする!?
7)サイクリストの義務!自転車の健康管理
8)パンク!!! スマートな対処はカッコイイ
9)センシティブ!ディレーラー調整のコツ
10)命を預ける!?ブレーキのメンテナンス
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。