2017年06月06日
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-1)自転車が毎日をイキイキさせる!
瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
4-1)自転車が毎日をイキイキさせる!
自転車はペダルを回すことで進み続けるが、他のエネルギーに頼ることのないこの乗り物は回すのを止めると不安定になり、そのままでは倒れてしまう。働き続けなければならない、我々の人生を感じることができる乗り物でもあるのだ。そしていつまでも倒れずに働き続けるのに、自転車はとても大きな力になる。ジテツウ(自転車通勤/通学)は毎日をヴィヴィッドにし、ライフワークに豊かな楽しみを与えてくれるのだ。
是非、ジテツウを始めよう!!!
<ジテツウ激増の背景>
今、ジテツウが大変なブームになっている。ここ十数年来、自転車を楽しむ人がどんどんと増え続けているが、とくに東日本大震災以降、急激にジテツウを行う人が多くなった。
大震災の日、電車やバス、クルマなどの交通機関はことごとくマヒして機能しなくなり、百万単位の人々が帰宅難民となった。しかしジテツウをしている人は大渋滞で動かないクルマを横目に、普段と大差なく帰宅できたのである。歩いて帰路についていた人々は自転車店に殺到し、売り切れ状態となるショップが続出した。そこで運良く自転車を手にした人は、ほとんどがジテツウ初体験となったのだが、結果としてジテツウの快適さと、意外なほどの手軽さ、運動不足の解消にもなった心地よさを知る事となった。
またそれを見ていた人やメディアでの報道で、ジテツウに興味を持った人々がたくさんいた。それらがきかっけとなりジテツウを始める人が急増したのである。
<世界の先進都市のバロメーター>
世界の都市で自転車シティ化が進んでいる。とくにヨーロッパでは、国をあげて自転車通勤を推奨しているところもあり、例えばオランダでは、自転車通勤を始めるときに国からクロスバイクが買えるほどの購入補助金が出るという。
デンマークでは自転車が走りやすいように、ラッシュアワーに時速20km/hで走り続けると信号機がずっと青のまま進めるグリーンウェーブというシステムを取り入れている。
20世紀までは自転車不毛の国であった英国でも、ロンドンではジテツウする人が増え続け、通勤時にはクルマの交通量を自転車が上回る区間が多くなっている。
アメリカでもアジアでも世界の多くの都市で、自転車走行環境の整備は急速に進んでおり、ジテツウの多さや自転車環境の快適さが、自転車シティとして世界の先進都市のバロメーターとなりつつある。
(参考:第1章2項 東京を自転車シティに!)https://funride.jp/serialization/jitensyalife02/
<痛勤地獄からの開放>
ジテツウは始めてしまえばその魅力に嵌ってしまう。まず最初に感じられるのが痛勤地獄からの開放だ。ラッシュ時の満員電車はつらいが、自転車で通勤するならこの苦行から開放される。電車を待つ時間は不要だし、ギュウギュウ詰めの車内で長時間耐える必要もない。ごった返す人ごみの中を移動しなくても良い。電車の遅れやトラブルにイライラする事もなくなるだろう。さらに電車内ではインフルエンザや風邪などの感染病に罹患するリスクもあるが、ジテツウではそんなリスクはほとんど無い。
実際の通勤時間もジテツウのほうが短くなるケースがある。とくに電車の乗り換えが何度かある場合は、自転車通勤のほうが所要時間が短くなることが多いのである。
<身体も心も地球も?健康になる>
ジテツウは、乗り続けることで健康になり、ダイエットにも有効である。そして脳卒中や心臓病などの成人病予防にも効果がある。電力もガソリンも必要とせずとてもECOである。そして二酸化炭素も排ガスも出さない地球環境に最も優しい乗り物なのだ。自転車に乗って走ってみると、動力を使った移動とは周りの見え方が違ってくる。新たな発見があれば、気になるところをサイクリングしてから会社に向かうのもいい。季節毎に様々な趣を感じることもができるはずだ。家を早く出て、早朝から開いているカフェを探して朝食をとったりするのも、新たな楽しみになるかもしれない。
ジテツウによりいつもの風景にも新たな発見が生まれるかもしれない
<五感を研ぎ澄ますと、楽しみが増える>
ジテツウでは得ることのできる情報量や感情に響く刺激などがとても多く、好奇心が膨らみ様々な発見ができる。自転車は様々な趣のある風景や街並み、自然や四季の移り変わりを見て感じて走るのに適している。単なる通勤手段とするのではなく、感性を働かせて自転車を楽しむ事で、時系列的に前後の変化やそのつながりを直接肌で感じながら進む事ができる。
点を結ぶ線ではなく面として捉えることができ、更に五感を研ぎ澄ませれば全体を俯瞰しながら見ることも可能となる。無理せずシンプルに速すぎず遅すぎず、楽しみながら心地よい移動スピードで進むことのできる自転車は、ライフスタイルの価値観を見直す機会にもなるかもしれない。
<心身ともにウォームアップ!>
自転車に乗れば心身ともに活性化され、職場や学校へのアクセス時間が仕事や勉強のウォーミングアップになりスッキリとした頭の状態でスタートできる。戦場のような通勤ラッシュで心身ともに疲弊してたどり着くのは、決して頭にも身体にも良いスタート状態にはなり得ない。自転車の軽くリズミカルなペダリングは脳を刺激し、精神を安定させるセロトニンが活発に分泌される。更に心地よく身体を動かす事でストレスを発散し、心身のコンディションが整えられる。いつでもフル稼働できる最高の状態を作ってくれて、朝から頭が冴えて身体のエンジンのかかりが良くなるのだ。
<自分の楽しみの時間が増える>
ジテツウは自宅を出た時から楽しい自分の時間となる。つまり往復の通勤時間を楽しみの自分の時間に変えてくれるのである。とくに帰路は時間的制約から解放され、時間をかけても寄り道しても自由である。仕事の疲れをリフレッシュしながらサイクリング気分で自分の時間を満喫することができる。お昼休みも自転車があれば、普段いけないような、ちょっと遠くにある気になるお店にランチに行くこともできる。
一方、仕事では、時には終電に間に合わないほどの多忙な事もあるだろう。電車の本数が少ない地域では、その時間を気にしながら仕事を切り上げたり、もう一仕事したりと調整が必要な場合もある。電車の時間を気にしながらの仕事、または帰りのタクシー代を払わねばならない理不尽な思い、帰宅難民のリスクなどは、ジテツウの場合は無縁である。
もちろんジテツウだからといって深夜まで仕事をしても構わないという事ではないが、他の要因に影響される事無く仕事に集中でき、自分のペースを維持する時間のコントロール権を手に入れる事ができるのである。
<身体もココロもリフレッシュ>
運動不足解消や健康のためにスポーツクラブに通ったりジョギングをする人も多い。それらには経済的な負担があったり、準備やアクセスに時間がかかったりと何かを犠牲にする必要がある。しかしジテツウの場合には通勤時間を活用したエアロビクス運動であり、初期投資以外はほとんど何も犠牲にする事は無い。ランニングなどに比べて地面からの直接の衝撃を受けることが無いので、膝や足腰への負荷は小さく、身体を痛めるリスクも格段に少ない。毎朝リフレッシュできるうえに、日々続けることで、運動不足の解消や生活習慣病の予防など様々なメリットを享受できる。
職場や学校では頭や目を酷使するだろうし、人間関係などにも気を使ってストレスが溜まりやすいかもしれない。しかし帰路では頭を空にして、自転車で気持ちよく走り、心地良い疲労感でぐっすり眠れば、心身ともにとてもリフレッシュできるのである。
<継続することが重要>
但し、ジテツウの良さを知り様々なメリットを享受するためには、継続することが絶対条件である。毎日でなくても構わない。始めは週に2-3回からでも良いのだ。雨の日や飲み会の日もあるだろうから目標は週3-4回でもOKだ。とにかく続けよう。3日坊主では意味が無い。少なくとも2-3カ月続ければ、メリットを感じる事ができる。
最初は辛さもあるかもしれない。しかし往路にジテツウすれば帰路も原則としてジテツウをせねばならない。この強制力は続けるために効果的であり、そのうちに楽しさがわかってくると、何としてもジテツウしたくなってくるのである。そうなれば楽しみはどんどんと広がって行く。会社や学校に行くためのジテツウであれば、無理なく生活の中に運動が取り入れられやすくなり、ずっと続けて行くにはとても適したスポーツなのである。
<お小遣いが増える!?>
経済的なメリットもある。電車で通勤する場合、交通費が例えば片道400円とすれば、往復800円、年間200日電車通勤すれば16万円となるが、毎日ジテツウができたとしたら、この金額が浮いてくる。かなりのレベルのクロスバイクが買えるだろうし、ロードバイクにだって手が届く金額である。
クルマ通勤をジテツウに替えてクルマを手放したとしたら、燃料代や車検代、駐車場代や税金、保険やメンテナンス代などが浮いてきて、年間100万円もの節約になるとの試算もある。交通費やクルマの維持費だけでなく、健康になることによって医療費の節減にもなる。ジテツウを始めると、健康診断の数値も良くなって行くケースが多い。
また、会社にとってもメリットがある。今世紀からジテツウが急増したロンドンでの統計データによると英国の場合、社員の病欠は雇用主にはおよそ3万円の損失となる。平均的な病欠は年間4.5日なのに対し、自転車通勤者はわずか2.4日しか病気で欠勤していないそうだ。また、自転車は渋滞や電車の遅延の影響を受けにくいため、遅刻が大幅に減少したという。
<雨の日は乗らない>
ジテツウは天候の影響が大きい。原則として雨の日は乗らないほうがいい。雨が降っているとまず視界が悪くなる。雨よけのフードを被れば視界は狭まるし、雨そのものがメガネなどに付いたり目に入ったりして邪魔をする。クルマや歩行者、他の自転車などの道路利用者も視界が悪くなっていて、お互いを認知しにくくなる。
更にブレーキの効きも悪くなり、路面も滑りやすくなって、事故にあう可能性も高くなる。また、到着後も濡れた靴やレインウエアの干し場所の処遇にも頭を悩ませたりする。雨天時は原則として、電車などの公共機関を使うことをおすすめする。
朝、雨が降っていればジテツウは諦めやすいが、出発時には降っていなくて、夕方や夜の帰宅時間帯に雨の確率が高ければ悩ましい。私の場合は、出発時に降っていなければジテツウする。帰りは雨の確率が高くても降らないこともあるし、多少降っても自宅に着いてすぐに風呂やシャワーでOKである。帰宅時間が本降りならば、置いて帰ればいいし必要なら輪行したって構わないのだ。
夜に飲み会がある場合、ジテツウの際は飲んだ後は乗って帰ることはNGである。自転車は道路交通法では軽車両であり酒酔運転は違反である。お酒を飲む場合は置いて帰るか、輪行して駅からは押して歩いて帰ろう。
ジテツウはタイムや距離を競う必要はない。勝敗もヒエラルキーも無く、どれだけ自分が楽しめたか、満足できたかが最も大切なのである。このジテツウのブームを追い風に、さらにより多くの人が自転車そのものを見つめなおし、その本質を理解して自転車を愛する気持ちを深めて行けば、より素晴らしい自転車社会につながって行くだろう。
さあ、ジテツウを始めよう!
(写真/本人)
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は6月20日(火)に公開予定です。お楽しみに!)
第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!
1)自転車が毎日をイキイキさせる!
2)探究心に火が付く?ルート開拓
3)遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!
4)ジテツウ用バイクと必須アイテム
5)安全第一!市街地、幹線道路の走行テクニック
6)ミニマイズ!事故を事前に回避する
7)迅速に!交通事故での対応
8)確実に!盗難対策と自転車保険
9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。