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2016年10月11日

瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」 2-1)原点に迫る?自転車の本質とは

1)原点に迫る?自転車の本質とは

 
自転車は、日々進化し続ける現代文明の中でも、最もエコであり地球にやさしく、そして健康にも社会にも良い影響を与える素晴らしい乗り物である。

自転車は二百数十年前の18世紀にドイツでその原型が誕生し、それはクルマや機関車、飛行機などの各種輸送用機器の発展に大きく寄与した、ある意味20世紀における機械文明への礎であり、近代の最大の発明かもしれない。どんなに機械工学が発展した現在においても、この自転車を凌ぐ経済的な乗り物は存在しないのである。

人間の出力は、普通の人が長時間継続できるのはせいぜい0.1~0.2馬力でしかない。その出力で進むのにウォーキングやジョギングでは時速4Kmから10Km程度であるが、自転車は同じ出力で時速10Kmから30Kmと倍から数倍に外部エネルギーに頼ることなく時速を引き上げてくれる。

ウォーキングやジョギングに比べて体重を尻と手と足で支えるため、腰や膝など身体への負担も軽く、排ガスもCO2も出さない地球環境に最も優しい乗り物である。最近その魅力が見直されているが、さらにより多くの人が自転車そのものを見つめ直し、その本質を理解して愛する気持ちを深めて行くことにより、自転車を通じて、交通社会にも、地球環境にも、医療費削減にも良い効果をもたらし、「より良い自転車社会」に近づいていくはずだ。

辰巳写真 006
老若男女誰でも気軽に楽しめるのが自転車の魅力だ

自転車は自分でペダルを回すことで進み続けるが、他のエネルギーに頼ることのないこの乗り物はペダルを回すのを止めると不安定になり、そのままでは倒れてしまう。働き続けなければならない我々の人生を感じることができる乗り物とも言える。

サイクリングではサドルの上でいろいろと考える事もでき、他に頼らない自分の本質を見つめることに繋がるかもしれない。取り組み方次第では、人生勉強にもなるのである。

人間もいろいろな人がいるように自転車にも様々な種類があり目的がある。生活用具としてのママチャリなら買い物や子どもを乗せることがニーズであり、シティサイクルや実用車なら日常の移動や荷物の運搬などがそのメインの用途となる。スポーツサイクルでもMTBは山道を楽しむ目的で作られており、ロードバイクは舗装路での軽快な走りとスピード感を求めたつくりになっている。それぞれの目的に応じて設計され、素材が選択され加工されて作られており、人間の出力を各々の条件に応じて最適に活用させてくれる。

当然常用速度も、ジョギング程度からトップアスリートレベルまで大きく異なってくる。速度は人間の出力と走行抵抗の大きさで決まってくる。つまり同じ人でも走行抵抗の少ない自転車に乗れば速く走れることとなる。自転車の走行抵抗には、重たさ、駆動部などの摩擦、路面との転がり、そして空気抵抗がある。スピードを求めるロードバイクはそれぞれの抵抗が少なくなるように追求されて作られているのだ。自転車は機械であり技術研究の進展に伴い進化していく。とくにスポーツサイクルはより高いエネルギー効率を求めて軽くスマートになって走行抵抗の低減が日々追求されている。もちろん耐久性や快適性、デザインもより高度に進化し続けており、目的や用途によってその種類もどんどんと細分化している。

そして、その最先端の自転車、つまり一流のプロが使っているハイエンドの同じものを我々が自分のものとして使うことも不可能ではない。例えばクルマの世界でいうF1やスーパーGTなどのマシーンを所有するようなことが、自転車の世界ではあり得るのだ。

DSC00597トッププロと同じハイエンドマシーンに我々も乗ることができる点も自転車の魅力

自転車は自由な乗り物である。免許も必要なく、行きたいところへ自分の好きなペースで気持ちの趣くままに行くことができる。また体調や天候、道の状況など外的環境の影響で走ることが困難になっても、自転車が壊れて乗れなくなっても、押し、担ぎ、輪行、ヒッチハイクなどで移動することができ、帰ってくることも可能なのである。クルマと衝突するなどで自転車がグチャグチャにでもならない限り大概のトラブルは対応または応急処置が可能である。完全に乗車不可能に陥ることはメカニックをきっちりと身につけていればほとんど無いのである。

 反面自転車は地上との接点はわずか2カ所の数c㎡のみであり、進み続けなければ倒れてしまう不安定な乗り物でもある。また天候や路面状況、交通環境などの外部からの環境に対してはナイーブで影響を受けやすい。

しかし自転車の構造はパーツや駆動系のしくみなど見ているだけでなんとなくわかるシンプルなものだ。例えばクルマは2万点ものパーツからなりとても複雑な構造だが、自転車は頭で理解できればあとは組み立てと調整だけである。自転車のメカニックは免許も資格もいらず誰にでもできることなのである。

メカニックを身に付けなくてもサイクリングは可能であるが、やはり基本的なトラブル対処のノウハウや知識は身に付けておいて損は無い。応急処置は多少のスキルと知識があれば何とかできるものだ。まずは知識を頭に入れて事前に練習をしておく。ある程度のノウハウやスキルを身に付けておけば、様々なトラブルへの許容性や対応可能性は非常に高く、経験を積めば不安はどんどん萎んでいき、楽しみがどんどん膨らんで行くのである。

そんな素晴らしい自転車の本質をよく理解し、愛着を持ってニーズに応じた使い方をして行けば、より充実した自転車ライフが楽しめるだろう。

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シンプルな仕組みの自転車は多少の知識とスキルがあれば誰にだってトラブルの対応が可能

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<参考1:ガソリンスタンドは頼りになる>

ツーリングの際にパンクやチェーン、ブレーキなどのトラブルに直面し、自分では対処しきれない場合、助けになるのはガソリンスタンドである。クルマ用の工具類は揃っており、ツーリングで発生するトラブルにはほとんどが対応できる。また、クルマのメカニックに詳しい人がいて、とくに田舎には親切な人も多く何かと力になってくれるのだ。ガソリンスタンドはあちこちにあり、24時間開いている所も多いのでサイクリストには心強い味方である。警察官のいる派出所でも簡単な工具類は大概置いておりその場で貸してくれる。しかしメカニックのサポートは期待できない。

 

<参考2:スポークが折れたら>

比較的起こりやすいのがスポークが折れるトラブルである。段差などの障害物からの衝撃や木の枝などの巻き込みが要因だ。折れた場所はリムが大きく振れるのでニップル回しで両隣のスポークを緩めて振れを抑える。折れたスポークははずしてしまう。そのままにしておくと絡まって更なるスポーク折れを誘発する。1本折れると他への負担が増えるため折れやすくなるので、早急に対処したい。予備のスポークを数本チェンステイなどにテープで巻きつけておくと安心だ。

 

<参考3:フロントフォークが曲がったら>

壁に正面衝突するなどして前輪のフォークがフレーム側に曲がることもある。車輪をつけたままフォークのエンドにロープを掛ける。反対側を電信柱や太い立ち木などに固定して自転車ごとゆっくり引っ張る。様子を見ながら力を入れてひっぱると徐々に元に戻ってくる。力を入れて引っ張りすぎないようにしよう。転倒などでハンドルやクランク、ペダルなどが曲がってしまうこともある。まずは人間の力で押すなり引っ張るなりしてみる。だめなら段差を利用してハンドルやクランクを掛け、その上から足で踏んでみる。少しずつ体重をかけて様子をみながらやろう。

 

<参考4:リムが大きく曲がったら>

転倒や衝突などで大きな衝撃を受けた場合、リムが大きく曲がってしまうこともある。車輪をはずし、まずは手で体重を掛けて曲がりを矯正してみる。ダメなら段差などを利用して足で踏みながら曲がりを直す。少しずつ体重をかけて踏み込む毎にゆがみを確認しながら何回も繰り返していく。ブレーキを開いてリムが当たらない程度に直せれば走行は可能になる。但しブレーキは開いた状態なので、スピードは禁物である。尚、ディスクブレーキの場合はリムが曲がってもブレーキは使える。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は臨時号を10月18日に公開予定です。お楽しみに!)


瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」

第2章 ハマるとヤバい?自転車の魅力!

<項目>(予定)

1)原点に迫る?自転車の本質とは

2)戦略と心理とアクシデント、レース観戦のツボ

3)誰でも自由に!孫とも楽しめる真の生涯スポーツ

4)あちこち行きたい!自転車ツーリングの魅力

5)Mの世界?パスハンティングの快感

6)百花繚乱!イベントは選り取り見取り

7)自転車ナルシスト!自分だけの自転車に心酔する

8)仲間が増える!自転車コミュニティ 

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