2016年09月27日
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」 1-6)世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
第1章:東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう! その6 世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
<世界最大の自転車会議「Velo-city」とは>
日本で「Velo-city」を開催し、自転車環境改善の起爆剤にしよう!
「Velo-city」は、欧州サイクリスト連盟(European Cyclists’ Federation:以下ECF)が創設した自転車環境や政策などについて討論する、サイクリングに関する世界最大かつ最重要な国際自転車会議であり、世界の約50カ国から1000人規模で人々が集まり、自転車利用者と行政と、そして自転車に関連するステークホールダーが一体となって自転車利用環境を盛り上げる一大イベントでもある。
日常の移動手段として、またレクリエーションの一環としてサイクリングを推進することを目指し、サイクリングの振興に世界的に重要な役割を果たしている。
1980年にECFの主催によりドイツ ブレーメン市で開催されて以降は、欧州にて毎年開催されてきた。 その後、「Velo-city Global」として偶数年は欧州域外の都市で開催し、奇数年の欧州での開催と交互に実施されている。
この「Velo-city Global」を日本で開催することができれば、先進国に比べて日本の自転車環境が如何にみすぼらしいかという実態認識とその改善の必要性について、行政をはじめ世間一般への訴求ができ、「より良い自転車社会」につなげて行く事ができるだろう。
Velo-cityを主宰する欧州サイクリスト連盟のメンバー
<Velo-city の目的>
Velo-cityは一般的な会議とは異なり、さまざまな会議や催しが活発に開催されるイベントである。世界中から1000人を超える自転車愛好家が集まり、自転車の交流推進、観光、都市開発、設計などの議題についてのディスカッションや、多様なイベントが4日間に渡り行われる。
この会議は特定の専門家のみを招待するのではなく、サイクリングのための政策、プロモーション、規則に関与しているあらゆる人々を集める場所である。こういった人々や専門家のスキルと経験が混ざり合うことが、イベント成功への大切な構成要素となっている。
焦点を対話、参加、そして情報交換に当てた、さまざまなエキサイティングなセッションを設けられているのが大きな特徴である。さらに会議関連だけでなく、数千人規模のバイクパレード、協賛者やスポンサーのブース出展や個別イベントなどの活動も行われる。
「より良い自転車社会」に向けた、ポジティブな雰囲気のなかで議論と交流を行うことにより、質の高い情報やネットワークが構築され、自転車行政を大きく推進させている。
実際、2003年に行われたパリでのVelo-cityは世界都市のシェアサイクルの先駆けとなったVelib(ヴェリブ)の導入のきっかけとなり、自転車レーンや駐輪場の整備などが加速した。
ブリュッセルでは2009年の開催を機に自転車の利用促進、2020年までに自転車の死亡事故を50%削減という目標を掲げ、自転車政策に対する投資が高まった。
また、2010年のコペンハーゲンでの開催は、最初のVelo-city Globalと位置付けられ2025年に向けた具体的な自転車戦略を掲げた。そして2015年には世界で最も自転車にやさしいまちと評価されている。
ECFによるVelo-city の目的は次のとおりである。
■質の高い知識、サイクリングに関する有益な最新情報、また交通計画を国際レベルで広める。
■優れた自転車施策を持つ都市が、市民、事業者やその他にメリットを紹介し、会議を通じて、一般にPR する。
■サイクリングを効率的で健康的な、環境に優しい交通手段として認識されるようにし、その一層の活用を推進する。
■自転車計画を、交通、土地利用計画、またその他サイクリングが重要な役割を果たす関連の政策部門に組み込む。
Velo-cityでは大小さまざまなセッションのほかバイクパレードなども行われる
<”Team Velo-city Japan”とは>
このVelo-city Globalを日本で開催し、自転車環境改善を一気呵成に進めようと奮闘しているのが、NPO法人自転車活用推進研究会のメンバーを中心とする”Team Velo-city Japan” (Velo-city日本開催を目指す会)である。
昨年7月に自転車活用研究会にて、2000年からVelo-cityに参加している宇都宮共和大学の古池弘隆教授による、Velo-city 2015 (フランス ナント市)の報告会が行われた。
報告を通じ、その世界的な影響力や、逆に日本の自転車環境の貧弱さを憂慮した自活研メンバーは、直感的にVelo-cityの日本開催が「より良い自転車社会」に向けての大きな原動力となると確信したのである。
何よりも必要な事は、主要な都市(自治体)にVelo-cityの開催に立候補して頂くことである。開催には億単位の予算が必要なため、スポンサー探しにも着手せねばならない。
まずは、この招致活動に精力的に協力してくれる仲間を募り、体制を整える事からはじめた。多くの仲間にVelo-city日本開催を目指す意義を説明し、行政へのコネクションや影響力のある方々を中心に、積極的に活動していただけるメンバーを固め、昨年末に”Team Velo-city Japan”が結成された。
<道程は険しいが、Velo-city Global日本開催を目指す!>
推進メンバーは固まったが、課題は山積みであり高いハードルをクリアしていかねばならない。
開催時期は2020年を目標とした。2016年は台北で開催され、2018年はリオデジャネイロでの開催が決定している。Velo-city Globalは偶数年開催のため、その次は2020年となるが、立候補は本年11月より募集が開始される。それまでに自治体に2020年開催への立候補を決めていただかねばならず、そのための予算も来年度には一部を確保していただかねばならない。
しかし、Velo-cityの日本での知名度は低く、日本語の情報もほとんどない状況で、億単位の予算が必要な会議の開催の必要性を理解し、立候補を決めていただくのは一筋縄ではいかない。
まずは、自治体やスポンサー候補にVelo-cityを理解していただくためのパンフレット作りから始めた。
Velo-cityに関する日本語の情報はほとんどないため、自分達で翻訳をして写真データを入手し魅力あるデザインで興味を持っていただく内容にする必要があった。
“Team Velo-city Japan”としての予算などはなく、全てメンバーの手弁当とボランティア作業である。
また、周知活動のPR用ピンバッチを作成し、興味を持って頂いた自治体に提供したり、賛同者には1,000円で購入頂き、わずかながらの活動資金にもした。
日本招致のPRビデオも作成し、自治体や関係者への理解活動に活用し、Webでも公開をした。これらはメンバーの仕事の合間やプライベートタイムを駆使し、時間と戦いながらの献身的な活動の賜物である。
1月末には、京都で行われた自転車利用環境向上会議にメンバーが参加し、日本各地から集まった自転車行政に積極的な自治体に対し、Velo-cityの日本開催の必要性とメリットをPRするプレゼンを実施。
そして、2月末から台北で開催されたVelo-city Global 2016に参加して、しっかりと視察を行った。その際、主催者であるECFの幹部の方々に、さまざまなコネクションを頼ってコンタクトし面談にこぎつけた。
面談での感触は上々で、我々の意図をしっかりPRすることはできたかもしれない。彼らは台湾からの帰路に日本に遊びに来たが、その際にも我々メンバーとの懇親会などを行って関係を深めることができた。しかし、2020年には中国の上海や韓国のソウルも立候補の準備をしている事を知る事となる。
オリンピックと同様にVelo-city Globalは同じ地域で続けて開催する事はなく、もし2020年にアジアの他の都市で開催となると、その先当分の間アジアでの開催は見込めない。
東京は2020年はオリンピックの開催があるため残念ながら他の大きな国際会議を行うことは困難である。日本各地の可能性がありそうな都市を検討し、それぞれにメンバーのコネクションをフル活用して個別にアプローチを開始した。
その必要な資料として、英文21ページに及ぶVelo-city Globalの応募要領を、自分達で手分けして日本語に翻訳し、マニュアルの日本語版を作成。それを持ってそれぞれのメンバーが、候補になりそうな都市の自治体へのPRに奔走する。交通費など予算は無いので、メンバーが他の仕事での出張などの機会を利用して、上手く空き時間をつくり自治体担当者のアポをとって、開催のメリットやステップを説明するのである。
台北で開催されたVelo-city Global 2016を視察したTeam Velo-city Japan
<これからが正念場>
自治体の担当者は前向きでも、どの自治体も億単位の予算の話ならば市長級の方の了承が必要となって、なかなか立候補の準備には至らない。一方、さまざまなコネクションにより賛同いただける国会議員などを動かし、自治体トップへのアプローチも行っているが、行政を動かすのは容易ではない。
現時点では、いくつかの候補都市が2020年にこだわらず、2022年や2024年も視野に入れて、検討に着手しはじめてくれている状況である。
開催地として立候補する自治体の擁立が喫緊かつ最大の課題であるが、2020年開催に向けては、次のスケジュールとなる。
2016年11月 ECFによる立候補受け付け開始
2017年8月 応募締切
2017年11月 ECFによる現地視察
2017年12月 開催地決定
自治体が立候補するには予算の確保とともに、具体的なイベント内容やスケジュール、協賛者やスポンサーの確保、事業実施主体の選定などさまざまな課題があり、上記スケジュールに間に合うかは微妙なところである。
”Team Velo-city Japan”は自らは開催主体には成り得ない。
自治体の立候補を擁立するには、関連団体/事業体などによる応援を含めた運営体制の確立や、開催プランの詳細を策定するスキームも必要となってくる。
お力になっていただける方は、ボランティアとして何ができるかを具体的にして、自転車活用推進研究会のHPからコンタクトを頂きたい。
http://cyclists.jp/velo-city/index.html
皆で力を合わせて、Velo-city Globalを日本で開催し、自転車環境を改善して行こう!
参考1:Velo-city Global日本開催による効果と期待
1.世界的な自転車の都市として、都市の先進性のPR。
2.多くの参加者・関連イベントの実施により、大きな経済効果(MICEの効果)が期待できる。
3.自転車利用環境向上を進めるきっかけになりる。
4.自転車利用による健康増進に向けた取り組みの拡大に寄与する。
5.災害の多い我が国ならではの自転車利用形態の認識を共有できる。
6.総合交通体系の一部としての自転車へ。
参考2:これまでの開催都市
実施年月 開催都市
1980.4 ブレーメン(ドイツ)
1984.9 ロンドン(イギリス)
1987.9 グローニンゲン(オランダ)
1989.8 コペンハーゲン(デンマーク)
1991.11 ミラノ(イタリア)
1992.9 モントリオール(カナダ)
1993.9 ノッティンガム(イギリス)
1995.9 バーゼル(スイス)
1996.10 パース(オーストラリア)
1997.9 バルセロナ(スペイン)
1999.4 グラーツ(オーストリア)/マリボル(スロベニア)
2000.6 アムステルダム(オランダ)
2001.9 エジンバラ&グラスゴー(イギリス)
2003.9 パリ(フランス)
2005.6 ダブリン(アイルランド)
2007.6 ミュンヘン(ドイツ)
2009.5 ブリュッセル(ベルギー)
2010.6 コペンハーゲン(デンマーク)Velo-city Global
2011.3 セビリア(スペイン)
2012.6 バンクーバー(カナダ)Velo-city Global
2013.6 ウィーン(オーストリア)
2014.5 アデレード(オーストラリア)Velo-city Global
2015.6 ナント(フランス)
2016.3 台北(台湾)Velo-city Global
2017.6 予定 アーネム、ネイメーヘン(オランダ)
2018 予定 リオデジャネイロ(ブラジル)Velo-city Global
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は10月11日の予定です。お楽しみに!)
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」
第1章 東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう!
<項目>(予定)
4)自転車活用推進研究会は、快適な自転車走行環境を実現させる
6)世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。