2016年09月13日
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」 1-5)マナー向上とルール順守のために、グッチャリは頑張る!
第1章:東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう! その5 マナー向上とルール順守のために、グッチャリは頑張る!
<荒川が危ない!>
「どけ!」「じゃまだ!」「危ない!バカヤロー!」
関東サイクリストの聖地と言われる荒川。その河川敷道路でローディーから歩行者や野球少年などの一般利用者に浴びせられた罵声である。
「背後から猛スピードでスレスレに通過され、転倒しそうになった」
「いきなり自転車の集団が、すごい速さで体の近くを通り過ぎて行き、恐怖を感じた」
「スピードを落とすように注意すると、『うるさい』と逆ギレされた」
などなど、一般利用者からの苦情も後を絶たないようだ。
自転車が加害者となった歩行者の死亡事故も、この荒川河川敷道路で発生している。
自転車の多い荒川下流(河口〜笹目橋)の河川敷道路は、国土交通省(以下国交省)が災害などの緊急時に使用するための設備として整えた道路であり、平常時に「自由使用」ということで一般に解放されている。歩行者もグラウンド利用者もスケーターも緊急時用設備を使わせて頂いているだけであり、決してサイクリングロードではない。「アラサイ」という言葉は当てはまらないのである。
そこを傍若無人に走行するローディーが増加し、国交省は「自転車の速度を20km/h以下にする」といったルールを決めた。それでもマナーの悪いローディーへの苦情が絶えないため、更に人が走る速度並みに「徐行」することを求める規定が設けられているのが現状である。解釈によっては、荒川河川敷道路は時速7~8Km以上では走行できない事となるのだ。
(実情は、他の河川敷利用者が近くに居る場合には徐行せねばならないと解釈されている)
このままでは、荒川から自転車が締め出される事にもなりかねず、更にはスポーツバイクが社会的に排除される事にもつながりかねない忌々しき事態なのである。
<グッチャリは荒川を守る>
社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクト(以下グッチャリ)は、自転車のマナー向上やルール順守と、安全意識の啓発などを活動の中心としているボランティア団体である。
グッチャリは、2007年に元F1レーサーでサイクリストの片山右京さんをプロジェクトリーダーとして設立された。以来、東京都内や近郊のサイクリングイベント、国交省や警視庁のマナーアップ・キャンペーンなどに協力し、自転車利用者に交通安全やマナー意識の向上を呼びかけてきた。
その中心的な活動が、荒川でのマナーアップやルール順守を自転車利用者に直接呼びかける啓発活動である。
2011年5月に「あらかわミーティング」と称した河川敷での青空会議を開催し、リーダーの片山右京さんは、荒川での自転車ルールを考え行動しよう呼びかけた。
それ以降、定期的に荒川を中心として様々なマナーアップ活動を続けており、配布したマナーアップチラシは約3600枚、活動にご参加いただいた賛同者は述べ1400人近くになる。
<荒川でのグッチャリの活動>
グッチャリがこれまでに行ってきた荒川での主な活動を紹介したい。
●あらかわマナーアップミーティング、マナーアップチラシ配り
荒川の利用ルール検討などの話し合いイベントや、マナーアップチラシ配布を自主的に行ったり、国交省のキャンペーンに呼応して荒川周辺の区役所や警察などとともにマナーアップイベントを開催し、参加者や河川敷利用者へマナーアップやルール順守の呼びかけを行う活動を、毎年数回実施。
●荒川でのゴミ拾い活動&マナーアップチラシ配り
NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムとの共催で、河川敷の随所にあるゴミ溜まりでゴミ拾いを定期的に実施。ペットボトルなどの一般ごみの他、産業廃棄物や大量の注射器など膨大なゴミの量に唖然とするが、通りすがりのランナーがわれわれの活動に賛同し、飛び入りでゴミ拾いに参加してくれた事が嬉しかった。
ゴミ拾いの後は自転車利用者へのマナーアップチラシを配布し、啓発活動を行う。
●野球少年たちと共にマナーアップチラシ配り
ローディーに罵声を浴びせられることが良くあるという、浦和リトルリーグの野球少年たちと共に、自転車利用者へのマナーアップチラシ配りを実施。
●地域住民にサイクリストへの理解を求め「芋煮会」を実施し招待
荒川地域住民の方々から「荒川を走っている自転車の人たちって暴走族みたいなんでしょ?」という衝撃の言葉を受け、自転車への理解を深めてもらい、荒川での上手な共存を目指すべく「芋煮会」を毎年5月に開催。地域住民の方々に「自転車クイズ」を実施しルールやマナーを知ってもらう活動も行う。
●彩湖エンデューロイベントでの啓発活動
ワイズロードのご協力で、彩湖エンデューロイベントにてステージトークやブース出店の機会をご提供頂き、イベント参加者へのマナーアップ/ルール順守呼びかけや、チラシ配りなどを毎年実施。
<主要な活動>
ツール・ド・三陸
東日本大震災の被災地復興支援イベントとして、陸前高田市や地元実行委員会などとともに「ツール・ド・三陸」を2012年より実施。毎年復興の状況を目の当たりにすることにより、震災の傷の深さを知り、そこから一生懸命に立ち上がってきた街や人々の努力を、肌で感じることができる。単なる自転車イベントではなく、復興やボランティアの意味なども考える事ができる有意義なイベントだ。参加者は初回から400人、800人、1000人、1200人と毎年増え続けている。
今年は9月24、25日に開催されるので、是非ご参加を頂ければありがたい。
http://www.tour-de-sanriku.com/
警視庁との協力
警視庁千住署とのコラボで荒川でのマナーアップ・キャンペーンを実施。その際、我々のこれまでの活動を知って頂くこととなり、「交通安全活動を積極的に推進し、安全で快適な社会の実現に多大な成果を上げていただいている」という主旨で、交通功労者として表彰をして頂いた。感謝状を受けとった代表理事の韓 祐志は「この感謝状はいつも一緒に活動している仲間全員への表彰です。グッチャリの活動は褒められるためにやっているわけではありませんので、浮かれてはいられません。荒川で起きている自転車の問題を少しでも多くの人に知ってもらい、考え、行動してもらえたらうれしいなと思います」とコメント。
また、交通安全運動の一環として、警視庁千住署が行った交通安全パレートに招待され、白バイの先導に続いてグッチャリのメンバーがマナーアップや交通安全を訴えながら行進した。
更に、警視庁の自転車部隊「ビームス」出陣式にも招待され、グッチャリのメンバーはビームスと一緒にパレードランやマナーアップ活動を展開。
<グッチャリの目指すもの>
グッチャリではこのように地道な活動を継続して行くことにより、荒川のサイクリストが変わった、良くなった、と言われる事を、更には荒川から発信された「変わった、良くなった」が日本中に広がっていき、サイクリストのマナーアップと自律性が「当たり前」になっていくこと願っている。
グッチャリの活動は、その主旨に賛同頂いたメンバーのボランティアで成り立っている。賛助会員になって頂くには、入会金1,000円と年会費1,000円が必要だが、活動の費用のほとんどは百数十人の年会費で賄われている。イベントやボランティアに参加頂いても、食事も交通費もすべて自己負担である。
グッチャリの活動は啓発活動だけではない。仲間同志でランを行ったり、飲み会や懇親会なども定期的に行っている。自転車を通じた仲間のコミュニティでもあるのだ。
また、活動主旨にご賛同頂いたパールイズミさんの定番商品として、グッチャリジャージを設定して頂き、誰でも自由に購入することができる。
メンバーにならずとも、このグッチャリジャージを着用する事により、マナーアップ意識の向上になるだけでなく、周りの人々にもルール順守や安全を考えて頂く機会になるかもしれない。
http://www.pearlizumi.co.jp/gocha/
今後も荒川河川敷道路を中心に自転車利用者への啓発活動を続け、このようなイベントをはじめ、震災復興支援サイクリングイベント「ツール・ド・三陸」などさまざまな機会を通じて、「より良い自転車社会」に向けて頑張って行く。
そして賛同者や仲間を増やし、活動を広げて行くことがその実現につながると思う。
ご賛同いただける方は、是非仲間になって頂きたい。
警視庁千住署が行った交通安全パレートのセレモニーで挨拶を行った著者。グッチャリ代表として、自転車のマナーとルール順守を訴えた
(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は9月27日の予定です。お楽しみに!)
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」
第1章 東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう!
<項目>(予定)
4)自転車活用推進研究会は、快適な自転車走行環境を実現させる
5)マナー向上とルール順守のために、グッチャリは頑張る!
6)世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。