2016年08月02日
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」 1-2)東京を自転車シティに!
第1章:東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう! その2 東京を自転車シティに!
東京の自転車環境
東京の自転車走行環境は、世界の都市に比べて極めて貧弱である。
2013年時点で、東京の自転車レーン(歩道上の自転車歩行者道は含まない)は総延長わずか9kmと、総延長900kmのロンドンや1500kmのニューヨークの100分の1に満たない状況であった。
自転車活用推進研究会では、2年半前の都知事選で舛添前知事に「より良い自転車社会に向けた、自転車行政の推進」を約束いただき、その後東京都建設局や国交省に働きかけ続けた甲斐があってか、ここ1年で都内の自転車レーンや車道上の矢羽根ピクトグラム(自転車の絵と進む方向を示した矢印)がずいぶん増えた。さらに東京都は昨年、2020年のオリンピック開催までに自転車推奨ルートを整備することにより、約400kmの自転車が走行しやすい空間を確保し、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる道路空間を創出するという報道発表を行った。しかしそれは、道交法では自転車通行禁止(例外を除く)となっている歩道上の自転車歩行者道などを多く含んでおり、また競技会場や主要な観光地の周辺7地区内に限った整備で、途切れ途切れの整備プランであった。都内をネットワーク状につなげるには程遠いレベルである。そして400kmというのは、そのほとんどが世界標準の自転車レーンとは言い難いのが実態でなのある。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/04/20p4h300.htm
「東京都 自転車走行空間整備推進計画」より
東京の車道自転車レーンはNYやロンドンの100分の1
世界の都市が自転車シティ化している
世界の多くの国・都市の「行政」も自転車の価値に注目し、自転車の活用を促す政策を次々と導入している。渋滞、大気汚染、ヒートアイランド化、駐車スペース不足、肥満の増加、医療費の増大など、現代都市社会が抱える問題を解決する切り札として、自転車が期待されているのである。
今、世界中で自転車の価値が見直されており、多くの国・都市が、大気汚染、ヒートアイランド、渋滞、過酷な通勤ラッシュ、高齢化、医療費増大など、現代都市社会が抱える様々な課題に対処する切り札のひとつとして、自転車の利用を促す政策を次々と導入している。
誰でも乗ることができ、健康に良く、経済的で、環境に優しく、楽しく、そして速い。500mから5km圏内の移動は自転車が最速であるといわれているが、皇居を中心に半径5kmの円を描くと、山手線がほぼすっぽり収まる。
すなわち、自転車は東京都心最速の移動手段と言っても過言ではない。
ロンドンはオリンピックで自転車シティに生まれ変わった
ロンドンは2012年のオリンピック開催で自転車政策を大きく推進し、「欧州最悪」と言われた自転車に優しくない街から、自転車シティへの変貌を遂げた。2008年に市長となった、自身も熱心なサイクリストとして知られるボリス・ジョンソン氏は、就任直後から自転車活用を軸とした新たな交通政策を矢継ぎ早に打ち出した。
•延べ900kmにおよぶ自転車レーンネットワーク「サイクルスーパーハイウェイ」を整備
•市街に6万台分の駐輪ラックを増設
•市内約600カ所のドッキングステーションで網羅されたシェアサイクル「サイクルハイヤー」を開設
ジョンソン前市長の政策はオリンピック期間中に急増した交通需要対策としても的中。今やロンドンは「短期間で自転車先進都市に変身した街」として多くの国・都市の行政機関の注目を集めている。
ロンドンの自転車スーパーハイウェイ
他の世界標準都市の現状
アムステルダムの自転車レーン網(緑部分)
ベルリンの自転車レーン網(緑部分)
シェアサイクルも自転車シティの世界標準
現在都内ではいくつかの区でシェアサイクルが導入されている。それぞれ運営主体が異なっており、連続性・網羅性が課題であった。この4月からようやく都心4区(千代田区、江東区、中央区、港区)での相互乗り入れ、乗り捨てが可能になったが、都内を網羅するには程遠い。
シェアサイクル活用のポイントは一にも二にも網羅性であ。都内のサイクルステーション数は未だに2桁であり、パリのヴェリブは約2000カ所、ロンドンのサイクルハイヤーは約700カ所のステーションを備えている。
オリンピック期間中に100万人規模で増加するといわれる交通需要に対応するためにも、オリンピック会場を含む区部全域をカバーするシェアサイクルが必要である。
駐輪場整備は重要課題
駅前などの一等地に十分な広さの駐輪場を確保するのは、どこの国・都市でも簡単ではない。 世界の自転車先進都市は、どのように駐輪問題に対応しているのだろうか。
そのひとつに「駐輪ニーズは利用者によって異なることを前提として、街中に多様な形態の駐輪スペースを整備する」という施策がある。
主要駅に自転車が集まりやすいのは確かだが、駅前だけにいくら駐輪スペースを整備しても、利用者のニーズとはマッチしない。利用者によって目的地は異なり、さらに複数の目的地を移動するケースも多い。
駅前駐輪場の利用者の約6割は鉄道利用以外の目的であるとする調査もある。
そこで、欧米の街では、主要駅前に大規模な駐輪場を設ける一方で、歩道や家、店舗前のデッドスペースなど、街角のちょっとした隙間を見つけて小規模かつ簡易な駐輪ラックを数多く整備するのが主流となっている。そこは単なる自転車置き場ではなく、盗難やイタズラに遭いにくいよう愛車をチェーンなどでくくりつけておける工夫がされている。
駐輪スペース は 多様なニーズに対応を
都内の駐輪場の総収容台数は90万台であり、乗入れ台数66万台を大きく上回っている。 にも関わらず、年間65万台の自転車が違法駐輪として撤去されており、駐輪場の立地と利用者ニーズが噛み合っていない。
たとえば、千代田区の昼間人口85万人のうち20万人は丸の内・大手町エリアに集中しているが、丸の内・大手町エリアに公営駐輪場は存在せず、震災以降急速に高まっている自転車通勤のニーズに全く対応できていない。
もちろん利用者もルールとマナーをより徹底して遵守すべきだが、行政も利用者ニーズが多様であることを前提として、駅前のみならず街中に多様な形状・サイズの駐輪スペースを整備することが望まれる。
収容力は十分なのに大量の撤去が行われている
東京を自転車シティにするために
2020年のオリンピックは、東京が生まれ変わる千載一遇のチャンスである。自転車の持つ本来の利点を存分に活かすためにも、また、さらなる高齢化の進展をふまえ歩道を歩行者が安心して歩ける空間に戻すためにも、 自転車レーンをはじめとして自転車を使いやすい環境を充実させることが必要だ。「使える」「使われる」自転車走行空間をつくるためには、連続性と網羅性が何より重要である。
東京を世界クラスの自転車先進都市にする第一歩として、都心全域と五輪会場をつなぐ、自転車レーンネットワークを作って行きたい。
自転車活用推進研究会では、都心全域と五輪会場を網羅する自転車レーン網「TOKYOサイクルネットワーク」の整備を提唱している。
(注):ここでいう自転車レーンとは、車道上の自転車レーンの他、車道歩道との構造分離・進行方向の規制・交差点等での連続性の担保がなされた自転車道も含む。
これにご賛同頂ければ、是非「+1LaneProject」に「いいね」をお願いしたい。
http://plusonelane.tokyo/
皆さんで力を合わせて、東京を自転車シティに変革させよう!
<参考資料>
「新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」http://cycle-tokyo.com/
「+1LaneProject」http://plusonelane.tokyo/
(次回の掲載は8月16日の予定です。お楽しみに!)
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」
第1章 東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう!
<項目>(予定)
2)東京を自転車シティに!
3)複雑怪奇な自転車交通ルール
4)自転車活用推進研究会は、快適な自転車走行環境を実現させる
5)マナー向上とルール順守のために、グッチャリは頑張る!
6)世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。