2016年07月19日
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」 1-1)新都知事に自転車行政を推進させる!
NPO法人 自転車活用推進研究会や一般社団法人グッド・チャリズム宣言プロジェクトで理事を務め、「より良い自転車社会」に向けて精力的に活動している瀬戸圭祐さんの新連載(隔週火曜日掲載)がスタートします。第1章は東京五輪に向け注目を浴びる東京の自転車走行環境についてです。
第1章:東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう! その1 新都知事に自転車行政を推進させる!
現在、東京都知事選の真っただ中であり、東京だけでなく、日本中でその注目度は高い。各候補とも東京を変革し日本を変えて行くと意気込みを表明しているが、自転車行政も東京が変革することにより、日本中の自転車環境を改善して行くことにつながるのである。
そういう意味でも我々自転車利用者にとって、この東京都知事選は「より良い自転車社会」に向けて大変重要であり、東京以外の方々にとっても日本各地での自転車環境の改善に与える影響は大きく、決して他人事として欲しくはない。
先回2年半前の東京都知事選では、自転車活用推進研究会(以下:自活研)は「新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」というサイトを立ち上げ、各候補者に対し、知事に就任した際には、「より良い自転車社会に向けた、自転車行政の推進」を行う事を求める書簡を送付した。
舛添前知事は最初にその呼びかけに応じられ、その主旨に賛同頂き推進を約束頂いた。
実際、舛添前知事は就任直後、自転車道の整備に力を入れたいと言及し、自転車レーンの整備のための調査費として、約2000万円を予算に計上した。
しかし歩道上に自転車通行区分を作る事も推進するなどとして、道交法を理解していない事が露呈された。つまり自転車は車両であり車道走行がルールで、歩道は通行禁止(例外を除く)であるといった基本的な事を認識されてないままに、自転車行政を進めようとされたのである。
これに危機感を抱いた自活研は、世界の主要都市の自転車環境の実例をベースに具体的な改善案を作成し、「東京都における自転車走行空間ネットワーク整備に関する提言書」を東京都建設局道路管理部に手渡し、道交法に基づいた正しい自転車行政の推進を陳情した。
http://plusonelane.tokyo/file/purpose-book.pd
更に、ネット上で「+1LaneProject」と銘打ったキャンペーンを展開。
東京を世界クラスの自転車先進都市にする第一歩として、都心全域と五輪会場を網羅する自転車レーン網 「TOKYOサイクルネットワーク」の整備を提唱し、世界の大都市に比べて著しく遅れている自転車環境の改善をしっかりと訴求した。
陳情した時点でこのキャンペーンに3万5千人以上の賛同者を得ており、その旨もしっかりと東京都に伝えた。
その後、東京都は「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて『自転車推奨ルート』の整備に取り組みます」という声明を公表したのである。http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/04/20p4h300.htm
実際、この1年で都内の自転車レーンや車道上の矢羽根ピクトグラム(自転車の絵と進む方向を示した矢印)が随分増えたことは、皆さんも実感できるのではないだろうか。
しかし、2020年のオリンピックに向けて、東京都内を網目状に網羅する自転車レーンの設置にはとても間に合わないスピードである。
このままでは、途切れ途切れの自転車レーンが各所にバラバラにできるだけで、連続性のあるネット状になるには程遠い状況なのである。
過密国道246号に設置された自転車レーン。2km程度で、まだまだ活用されていない
何とかせねばと、東京都建設局や国交省の方々への更なるロビイング活動を模索しているうちに、舛添前知事の辞任となった。
となると、新たな知事の方にも自転車行政を積極的に推進して頂く事を約束頂く必要がある。
ちなみに、舛添前知事以前の知事は自転車行政よりもクルマ行政優先というか、自転車の事はわかっていない方々であった。
今度の新しい知事も、舛添前知事と同等以上に自転車行政をしっかりと推進していただかねば、オリンピックに向けた自転車環境整備など夢に終わってしまい、期限の無い先送り行政になってしまいかねない。
自活研では早速に臨時の理事会を開き、対応を協議した。
前回の都知事選では各候補者に対し
①車道上の自転車レーンの整備
②分散設置された多様な駐輪スペース
③シェアサイクル
の推進を求めたが、今回はこの見直しからの議論である。
自転車環境改善を訴える自活研の小林理事長
世界の大都市では東京マラソンのような自治体イベントが行われており、大規模な自転車イベントも都市主催で開催されている。都民や国民の自転車への意識を向上させるため東京でも大規模な自転車イベントの開催を要求しようという意見が出たり、逆にシンプルに車道上の自転車レーンを網目状に張り巡らすことだけを約束させるほうが、実現性が高いといった意見など議論は続いた。
今回の議論のひとつのポイントは、サイクリスト目線ではなく、一般自転車利用者、とくに母親や高齢者視点での自転車走行環境整備が必要だという事であった。
実際に、絶対数が減り続けている交通事故において、自転車関係する事故の比率は増え続けており、その多くは利用者数の多い母親や高齢者、子どもたちなのである。
一方自転車だけを見るのでなく、事故そのものを減らすべく都心部でのクルマの制限速度の引き下げなどの必要性も検討された。さらに視点を広げ世界では常識となっているタンデム自転車の公道使用の検討も要望に入れる事とした。
自活研の小林成基理事長が中心になって何回も議論を続けてまとめ上げた、都知事候補者への約束して頂きたい内容は次の通りとなった。
1.歩行者が歩道上を安全に通行でき、自転車が安全に走れる車道上の自転車レーンを軸とした世界標準の自転車走行空間ネットワークを構築し、市民生活に優しい街を実現してください。
2.子どもたちや高齢者、女性(とくに母親)など自転車利用者の安全と快適のために、クルマのドライバーが自転車を容易に認識でき、自転車利用者にとっても走行空間と進行方向が認識できるよう、路面にピクトグラムや矢印(矢羽根)をできるだけ早く、たくさんの道に描いてください。
3.オリンピックに向けて外国人観光客を含め、老若男女誰もが安心して歩ける街にするため、歩行者と交錯する都心部でのクルマの速度を低減させてください。
4.盗まれたり、いたずらされたりしないよう駐輪ラックや監視カメラを備えた駐輪スペースを街なかに分散配置してください。
5.視覚障害者をはじめ自転車の楽しさに触れる機会のない方にもさわやかな風と疾走感を与えるタンデム自転車(2020年東京パラリンピックの正式種目)の公道使用を検討してください。
そして都知事選公示の7月14日に各候補者宛てに、要望書を送付したのである。
と同時に、「新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」2016都知事選署名キャンペーンのサイトを立ち上げ、賛同者に署名のお願いを開始した。http://cycle-tokyo.com/
ここまで読んで下さった皆さま、是非当サイトにアクセスして、お名前とメールアドレスのインプットにて署名をして頂きたい。
皆の力が東京を動かし、「より良い自転車社会」ニッポンにつながって行くのである。
是非ともご協力を!
谷垣法務大臣(当時)にシクロクロスの説明中の筆者。自転車行政への陳情も行った
(次回の掲載は8月2日の予定です。お楽しみに!)
瀬戸圭祐の「快適自転車ライフ宣言」
第1章 東京を自転車シティに!「より良い自転車社会」を実現させよう!
<項目>(予定)
1)新都知事に自転車行政を推進させる!
2)東京を自転車シティに!
3)複雑怪奇な自転車交通ルール
4)自転車活用推進研究会は、快適な自転車走行環境を実現させる
5)マナー向上とルール順守のために、グッチャリは頑張る!
6)世界最大の自転車国際会議を日本で開催しよう!
著者プロフィール
瀬戸圭祐せと けいすけ
中学/⾼校時代に⽇本全国を⾛破し、その後、ロッキー、アルプス、⻄ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の⼤⼭脈を⾃転⾞で単独縦断⾛破。 ⼗数年ジテツウを続けており、週末はツーリングや⾃転⾞イベントなどを企画実施。 ⾃転⾞の魅⼒や楽しみを著書やメディアへの掲載、市⺠⼤学での講座、講演やSNSなどで発信し続けており、「より良い⾃転⾞社会」に向けての活動をライフワークとしている。 NPO法⼈ ⾃転⾞活⽤推進研究会 理事、(⼀社)グッド・チャリズム宣⾔プロジェクト理事のほか、 (⼀財)⽇本⾃転⾞普及協会 事業評価委員、丸の内朝⼤学「快適⾃転⾞ライフクラス」講師、環境省「環境に優しい⾃転⾞の活⽤⽅策検討会」検討員などを歴任。