2018年09月04日
最新自転車パーツの現在地 【キャットアイ】ライト編
自転車のライトを選ぶときの基準
菊地 ところで、自転車用のライトを選ぶときの基準というか、メーカーの違いはデザイン以外に、どんなポイントがあるんですか?
塚本 そうですね。電球やバッテリーを外部から買ってきてライトを作るだけなら、そんなにむつかしい話ではありません。ただ、私たちの強みというのは製品開発に係わる人材です。自転車に毎日乗るスタッフがデザインや設計を行なっています。
例を挙げると、レンズは専門スタッフが社内におり、人に優しい配光について研究していますし、厳密な規格のドイツの検査機関と同じ測光器や、3Dプリンターといった設備も整っています。
菊地 モノ作りは変わりましたか?
塚本 ええ。効率的かつスピードがアップしていると思います。企業秘密に係わることなので、お見せできないのが残念ですが、3Dプリンターを導入してから、アイデアを思いついてからサンプルができるまでの時間が圧倒的に短くなりました。
また、一貫して自社で行なうことで、細かなノウハウの積み重ねも製品の質を向上させるのに役立っていると思います。
菊地 スピード感があるのはいいですね。作っている人のストレスも少ないだろうし。
キャットアイといえば、防水性やホルダーの評判も高いですよね。
塚本 ありがとうございます。リフレクターで培った超音波溶着といった、樹脂と樹脂を特殊な工程で溶着する技術を使って、製品の隙間を無くし、水を遮断する事で、高い防水性が実現できています。
品質保証のため、製品化にあたっては30項目以上のチェックポイントがあって、まるで破壊検査かと思うような振動試験や、2年に相当する耐候試験も行なっています。
菊地 単純に言ってしまえば、ライトは明るいほどいいと思いますが、同時に消費電力も多くなってしまいますよね?
塚本 カートリッジバッテリーというのは、私たちの製品のこだわりの1つです。交換式であれば、出先で交換することもロングライドも可能になる。人気でいえば400ルーメンが中心、金額でいうと200ルーメンが売れ筋です。
ただ、地方に行くと700-800ルーメンは必要だという声もありますし、どれを選ぶかは人それぞれです。
Voltシリーズの最高級モデル《1700》2万6000円(税抜き) PHOTO:CAT EYE
ハイモードの1700ルーメン(持続時間約2時間) PHOTO:CAT EYE
ミディアムモードの500ルーメン(持続時間約5時間) PHOTO:CAT EYE
ローモードの200ルーメン(持続時間約15時間) PHOTO:CAT EYE
菊地 東京でもライトは明るい方がカッコいいし、暗いライトだと自転車も人もチープな印象になりますね。
塚本 そうですね。必要な明るさには個人差もあるのですが、街乗りなら200ルーメン、一般的には400ルーメンぐらいは必要です。ただし、安全意識の高い方は、やはり明るいライトを好まれる傾向にあります。
菊地 ヘルメットやタイヤ、ブレーキも同様だと思うんですけど、安全に係わるパーツやアクセサリーは、自転車やオーナーのイメージに大きく影響しますね。
塚本 ええ、そうです。そして、より安全に走っていただくために、リアライトの数を増やすべきだと考えています。1つよりも2つ、2つよりも3つのほうが目立つので、ヘルメットやウエアラブルなリアライトを提唱しています。
菊地 リアは走行中に自分で確認できないけど、切れたときの不安といったら……。
塚本 ですので、バッテリーオートセーブ機能があります。
ヘッドライトの場合は、ハンドルバーに取り付けているため、バッテリーインジケーターの点灯や、ライトの光量の変化で気づきやすいですが、リアライトは、意識しないとなかなか気づき難いものです。そのため、バッテリー残量が少なくなると、バッテリーインジケーターの作動と、自動で消費電流を抑えた点滅パターンに変更して、家に帰るまでの1時間程の寿命を確保し、電池残量が少ない事を知らせてくれます。
現在は他社も追随していますが、これは私たちが最初に手掛けた機能です。そして、ヘッドライトのバッテリーを交換式にしているのも、同じように私たちのこだわりです。
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。