2018年10月28日
芦田昌太郎の「どっちのインプレショー」 第10回 ウエア編
自転車アイテムは選択肢が多く、時には重大な決断を強いられることも。アイテムが豊富になってきて喜ばしい反面、我々サイクリストの悩みは増えるばかり。この連載は似て非なるものや対極に位置するものをピックアップして比較インプレッションをお届けいたします。
今回比べるのはエアロジャージとエアロスーツ。最近はヒルクライムの大会でも見かけるようになってきたエアロスーツ。ジャージもエアロスーツも最近のトレンドは袖が長くなって切りっぱなしの袖口。バイクだけでなく、ウエアまでエアロになってきた印象が強いですよね。とは言え、エアロスーツはなかなか手を出しにくいのではないでしょうか。そんな現状を打破すべく、レリックから両タイプのウエアをお借りしてインプレッションしていきたいと思います。人生は右か左か常に岐路に立ち選択を迫られているもの。選べるのはふたつにひとつ。さぁ、今の気分はDotch?
これこそ戦闘服!
試着前の第一印象でどちらかを選ぶならば……エアロスーツ! 何と言っても速そうですもん。それに格好良い。肩口やお腹回りの締め付けも少なそうですし、ウエア自体の重量でもアドバンテージがあるはず。期待を込めて、軍配を上げました。ただ心配なのは、少々専門的すぎるというか普段使いには向かなそうだということ。エアロスーツでサイクリングなんて想像がつきません……私の場合、レースでしか着る機会がないかも知れません。
恥ずかしさの向こう側はパラダイス
まずは第一印象で選んだエアロスーツを着てみます。今回のモデルは「タウルス エアロスーツ」。スカイブルー×ブラックが爽やかです。ん……あれ? 着れない! 肩回りの可動域が狭いせいで手こずりましたが、慣れれば大丈夫。さてエアロスーツに変身。は、恥ずかしい……。生地が薄いと得体の知れない羞恥心に襲われます。水着は平気なのに不思議な感覚です。そして少し慣れてくると抜群の着心地に身体中のセンサーが反応します。腿と袖は薄いベールに包まれているようで過度な締め付けもなく、肩やお腹回りは想像以上の楽さ。生地全体で身体をホールドしてくれるのでライド中にストレスを感じることはありません。しかし、直立姿勢はかなり窮屈です。歩く時も前屈みにならないといけません。が、あくまでライディングポジションでの性能を追求しているので、ここは仕方のないところか。いちばん大事なのは乗車ポジションですからね。そして驚いたのは、汗をかく脇の下はメッシュ、前面は汗抜けの良さそうな素材、さらに腕・肩、腿、背面と裁断パターンによって生地を変えていること。これが抜群の着心地の秘訣かも知れません。一応背面ポケットも2つ付いてますが、補給食くらいしか入らないでしょう。ご覧のとおり襟は胸近くまで大きく開いているので、脛毛に加えてお手入れ箇所が増えそうな予感。胸毛がフレディ・マーキュリーな方はケアをお願いしたいなぁ。もうひとつ特筆すべき点は、その軽さ! 抜群のフィット感が本当に軽く感じさせてくれます。ワンピースなので使う生地自体も少ないのでしょうが、身体に触れるものは重量よりも違和感がない方が軽く感じるように思えます。
袖や裾は切りっぱなしになっており、身体にピタッとフィットする。ライディングフォームに合わせた裁断で、自然と前傾姿勢に
前面はメッシュ生地を採用し速乾性を高めている。襟の開き具合は好みが分かれるところ?
普遍的な良さと革新的進化
次にエアロジャージである「アトリア エアロジャージ&ビブショーツ」をインプレッション。「富士ヒル・シルバーへの道」の連載で着用した「クラテル」シリーズと同様のコンセプトで、こちらもエアロスーツに負けず劣らずの着心地。切りっぱなしの袖は長めで、袖口とジャージの裾、さらにはビブショーツの裾にもシリコンプリントが施してあって、ずれにくいのが特徴。もちろんライディング・ポジションを考えた裁断になっていて、ピタッとフィットします。一般的なジャージとの差は、背面や脇、肩口のカッティングと肩・上腕にかけてのツルツル・スベスベの生地でしょうか。エアロと銘打つだけあって余計なバタツキは感じられず、しかも気持ち良い。特徴的な襟の形が意外としっくり来ます。そして、ビブショーツはビタっとしていて、思わずサイズが小さいのではないかと思うくらいです。ふんわりと包んでくれたエアロスーツと比べると、コンプレッション系の着心地でしっかりとした着圧があります。「シルバーへの道」でも感じたのですが、これが結構な優れものなのです。ペダリングが簡単になるというか、腿の上げ下げが楽になるのです! 軽めのギアでクルクル回していると、その効果が分かるはず。私、このビブショーツ、結構好きです。
長めの袖は最近のトレンドだ。シリコンプリントが施されズレにくい仕様になっている
ビブショーツはタイト目の設計。ほどよいコンプレッション性がペダリングをサポートする
さて、両方のインプレッションが終わったところでラストジャッジのお時間となりました。今回、私が選んだのは……
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エアロジャージ!
トレーニングとレースは別物
いや、本当は欲しいのはエアロスーツなんです……でも、いつ着たら良いか分からなくて。いちばん着るのはジャージ&ビブショーツなのは明白。でもエアロスーツは格好良いなぁ。いやいや、着る機会なんて年に1~2回。生地が薄くてデリケートそうだし、大胸筋、腹筋の形まで見えちゃうし。でも富士ヒルでは着用したいかも……。嗚呼、それもこれもエアロスーツの完成度があまりにも高く、対するエアロジャージもすこぶる優秀でセットアップはコンプレッション系ビブショーツ。こんなに悩むのも全部レリックのせいだ!
なんてことはさておき、エアロスーツは用途が狭いという1点で落選としました。もちろんレースでは威力を発揮するのは間違いなし。ただ、普段走っているコースや練習内容、ライド中にランチしたりコンビニをウロウロしている自分の姿を想像すると……やっぱりジャージ&ビブショーツに落ち着くという保守的な結果に。ただ、今回お借りした「アトリア エアロジャージ」なら流行にも乗れてフィット感もエアロ感も申し分ないので、必要十分ということになりました。
最後に、くどいようですが富士ヒル一発勝負ならエアロスーツを着たいというのが本音です!
凝った裁断パターンで高いフィット感を実現していたアトリア エアロジャージを今回はチョイス!
今回インプレッションした商品
アトリア エアロジャージ
価格:16,200円(税込)
サイズ:S、M、L、XL、XXL
カラー:BLACK、WHITE、NAVY
アトリア ビブショーツ
価格:15,984円(税込)
サイズ:S、M、L、XL、XXL
カラー:BLACK、WHITE、NAVY
タウルス エアロスーツ
価格:24,840円(税込)
サイズ:S、M、L、XL、XXL
カラー:WHITE、RED、SKY BLUE
問:reric HP → http://reric.jp/
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。