2018年08月01日
芦田昌太郎の「どっちのインプレショー」 第9回 補給食 特別編
自転車アイテムは選択肢が多く、時には重大な決断を強いられることも。アイテムが豊富になってきて喜ばしい反面、我々サイクリストの悩みは増えるばかり。この連載は似て非なるものや対極に位置するものをピックアップしてお届けいたします。さて今回は特別編ということで、前後編にわたりライドのお供となる補給食を徹底的に試食、そして完全に私の主観で番付をしていきたいと思います。あくまで個人的な好みということでご容赦ください。
補給食のススメ
普段走るときは、みなさんはどんな補給食を持っていきますか? ジェル、パワーバー、あんぱん、ちくわ……サイクリストの個性が出るところですね。私はというと、走るコースにコンビニがあるのなら緊急用にジェルをひとつ。補給箇所が少ない時はジェルと固形食をポケットに入れています。今さらですが、交通量と信号の少ないコース=(イコール)コンビニのないコースということに気付きました。だから私が好むコースはコンビニが少ないのか。山梨県の山岳コースなんてスタート地点のコンビニのあと、100km以上次のコンビニが現れないのです。あるのは自動販売機とたまにしか開いていない商店のみ。かつてはバックポケットにロブションのバゲットを1本差して走ったこともありました。半分を生ハム、残り半分をクリームチーズ&ブルーベリージャムの自家製補給食。口の水分が根こそぎ奪われて、走りながら食べるのはキツかったです……噛んでも噛んでも飲み込めないんですもん。食べやすさ、吸収速度などを考えるとやっぱり市販されている専用のものが手軽ですね。
速効性のジェル、豊富なバリエーションが楽しい
それでは早速インプレッションを始めたいと思います。
まずはジェル部門から。上りトレーニングとヒルクライムのレース中に実食した10種類を紹介していきます。ジェルのメリットは何と言っても消化吸収の速さ。すぐにエネルギーに変わり、カフェイン入りのものもあるので、ここぞの場面で投入するには最適。レース終盤まで垂れずに頑張れます。パッケージも小さいので背中が気にならないのも嬉しいですね。
【PowerBar】
パワージェルシリーズ
・レッドフルーツパンチ
・フルーツ・マンゴーパッションフルーツ(カフェイン配合)
・ハイドロ・コーラ(カフェイン配合)
・ハイドロ・オレンジ
今までのパワージェルシリーズに新ラインナップ登場。4種とも基本的には同じですが、ハイドロはリキッドになっているのでドリンク代わりに飲めます。一方ジェルの方は粘度があるものの、果汁配合でフルーツ感たっぷりで味がおいしい。開封したときの「うっかりゴミ」を防ぐトラッシュチェーンが◎。いずれも100kcalの素早いエネルギー補給が可能です。
パワーバー HP ⇒ http://www.powerbar.co.jp/
【Mag-on】
エナジージェルシリーズ
・ピンクグレープフルーツフレーバー(カフェイン配合)
・アップルフレーバー
いちばんの特徴は120kcalものエネルギーと同時に「水溶性マグネシウム」が摂れること。新登場のピンクグレープフルーツ味をはじめて口にしたときは喉がカッと熱くなったが、苦味と酸味がクセになります。アップルフレーバーは優しい甘味がちょうどよい。どちらも口当たりが良かったです。
Mag-on HP ⇒ https://mag-on.net/
【WINZONE】
・エナジージェル・パイナップル風味
こちらもマグネシウム配合。加えてエネルギーをすばやく筋肉に届け、持久力をサポートすると言われるヒドロキシクエン酸も入っています。サラっとしていて苦しい局面でも摂取できる飲み込みやすさも良い感じです。エネルギーは115kcal。
WINZONE HP ⇒ http://www.nippon-shinyaku-shop.com/ext/winzone-gel.html
【グリコ・パワープロダクション】
・ワンセコンドCCD
・ワンセコンドBCAA
言わずと知れたグリコ・パワープロダクション。ワンセコンドはとにかく飲みやすいのが特徴。スッキリとした後味なのでライド中も一気に飲めます。CCDは165kcalと群を抜く熱量。一方ライド後や追い込んだ直後はBCAAで身体に必要な分岐鎖アミノ酸を瞬間補給。キャップ式というのが好みの分かれるところでしょうか。
グリコ・パワープロダクション HP ⇒ http://www.powerproduction.jp/
【INPARA GEL】
・インパラジェル・ブルーベリー風味
分解・吸収の速度がゆっくりなパラチノース(糖質)を配合。エネルギーは65kcalと低いが持続性が高く、スタート前に摂るのが向いています。ジェル系には珍しいブルーベリー風味は甘すぎず、容量もちょうど良いです。
INPARA GEL HP⇒ http://reric.jp/fs/reric/run-ac-gear/1109804
高カロリー・高タンパク質、満足度も高い固形タイプ
続いて固形部門の9品目。ジェルに比べエネルギー量が高く、タンパク質も多い。しっかりとお腹に溜まるのがエナジーバーのメリット。味もそれぞれ特徴があって楽しみも倍増。食べ比べてお気に入りの1品を見つけたいものです。こちらは用途に合わせて練習前やレース前、そしてレース後に試してみました。
【PowerBar】
・エナジャイズ・バナナパンチ
・パワージェル・ショッツ・コーラ(カフェイン配合)
プロテインプラスシリーズ
・カプチーノ・キャラメルクリスプ
・レモン・チーズケーキ
・バニラ・キャラメルクリスプ
エナジーバーの元祖ともいえるエナジャイズはオートミールとバナナを固めたようなねちゃっとした食感。ショッツはグミ状で1袋211kcal、お菓子感覚で補給ができます。固形ですが、ジェルに近い存在。一方、プロテインプラスは高タンパク質・ハイカロリーのリカバリー用。冷やして食べるのがオススメ。なかでもレモン・チーズケーキはかなり美味。
パワーバー HP ⇒ http://www.powerbar.co.jp/
【前田製菓】
・WAY TO GO~ハイプロテインクッキー~
あたり前田のクラッカーで有名な前田製菓が出す補給食。1袋5枚入りで200kcal。ひと口サイズが◎だが、脂質が多いのが気になるところでしょうか。味は折り紙つきです。
WAY TO GO~ハイプロテインクッキー HP ⇒ http://www.atarimaeda.com/products/lineup/way_to_go.html
【Enemoti】
・クルミ餅
自然の原材料を使ったクルミ餅で腹持ちが良いです。他の補給食にはない和菓子のテイストが食べやすい。パラチノース使用で吸収が穏やか。パッケージが開けやすく、手がベタつかないように餅をオブラートに包んである配慮に心打たれます。
Enemoti HP ⇒ https://www.enemoti.com/
【ハニースティンガー】
ハニースティンガーは天然はちみつを30%以上使用したナチュラルエナジーフード。ワッフルは最近増えてきたグルテンフリーで、ナトリウムも豊富なので塩分補給にも効果的です。
ハニースティンガー HP ⇒ http://honeystingerjp.com/
【番外編・丸善】
・別撰素材ソーセージGOLD
・別撰素材チーかまGOLD
最近の私のお気に入り。補給食の甘さに飽きたらコレ。走行中に剥くのはちょっと難しいけれど、このGOLDシリーズは味も歯応えも別物、口もお腹も満足。バックポケットからはみ出すので、恥ずかしいのが玉に瑕。
丸善 HP ⇒ http://www.mrz.co.jp/
補給食・新時代到来か
ここまで番外編を含め全21種の短評を記してきましたが、どれも甲乙つけがたい印象。全体的に味も喉ごしも以前よりも良くなったと思います。かつては「外国の味」独特の甘味や大雑把な味付けが苦手だったのですが、最近はだいぶ繊細でナチュラル志向になってきたので、いよいよもって悩ましい。老舗は良い新陳代謝を起こし、新興勢力の台頭も目覚ましい。もちろん今回紹介できなかったものもたくさんあります。みなさんも是非色々と試してみてはいかがでしょうか?食べ比べも意外と面白いものです。ひとりだとツラくなってきますので、チームメイトやお仲間でワイワイと楽しんでみてください。
さて、ここからは私の独断と偏見でシチュエーション別にナンバーワンを選んでいきます!
おいしさ部門
まずは一番大事な味部門!やっぱり美味しくなくちゃ食べられません。
・固形食:ハニースティンガー・グルテンフリーワッフル塩キャラメル
・ジェル:Mag-onピンクグレープフルーツフレーバー
ハニースティンガーのワッフルはさすが。デパ地下に売ってそうな味です。ほんのり塩味なところが◎。僅差の次点には前田製菓のWAY TO GO。対してジェル部門のマグオンは味のバランスが良く、甘・酸・苦のハーモニーが目新しい。
飲み込みやすさ部門
これ、味と同じくらい大事です。飲み込むのがツラいと苦しいだけです。
・固形食:PowerBarパワージェルショッツ・コーラ
・ジェル:インパラ
パワージェルショッツは固形とはいえジェル寄りなので、当然の結果か。インパラはブルーベリー味と分量が少ないことが勝因。ただ熱量は低い。次点でパワープロダクションのCCD。トロみがついていてスルッと飲み込めるが、ちょっと量が多い。
高カロリー部門
これも大切な要素。ライド中はしっかり補給できるものが欲しいところ。
・固形食:PowerBarパワージェルショッツ・コーラ
・ジェル:グリコ・パワープロダクション・ワンセコンドCCD
単純なエネルギー量ならPowerBarのプロテインプラスだが、回復用ということもありランキングからは除外。グミで211kcalは圧巻。CCDは165kcalとこちらもジェルの中では群を抜いている。
パッケージの開けやすさ部門
走りながら補給することを考えると、開けやすいのは大きなアドバンテージ。
・固形食:Enemotiクルミ餅
・ジェル:PowerBarパワージェル・フルーツ
エネもちは全種類のなかで断トツの開けやすさ。スルッと剥けてパクッ。工夫が光る包装です。パワージェルシリーズはトラッシュチェーンに軍配。ハイドロは同じシステムなのに何故か上手く開かなかった……。
パッケージデザイン部門
効能にはまったく関係ないのだが、見た目も大事。トータルで格好良く乗りたいときはコレ。
・固形食:ハニースティンガー グルテンフリーワッフル・塩キャラメル
・ジェル:Mag-on
ハニースティンガーなら、「身体にも気を配ってます!!」という雰囲気を出せるかも……。マグオンはポップなデザインが元気をくれる。まぁ飲まなきゃ元気は出ないんですけれど。
ネーミング部門
名は体を表すという通り、分かりやすいというのも大事。
・固形食:Enemotiクルミ餅
・ジェル:PowerBarパワージェル・ハイドロ
エネルギー長持ちのお餅、漢字だと恵根餅。隅々までエネルギーが供給されそうなイメージです。PowerBarは、「パワー」「ジェル」「ハイドロ」と、イメージに直接訴えかけてくる直球勝負が小気味良いです。
ドリンクへの溶かしやすさ部門
ちゃんと溶けてくれないとボトルに残ってしまいます。帰宅後はしっかりと洗浄を。
・固形食:該当なし
・ジェル:WINZONE Energy Gel
ジェルのなかでいちばんサラサラ。ウィンゾーンならドリンクに溶かすのも容易で、パイナップル味はスポーツドリンクとの相性が○。
総合部門
発表します!アシダの勝手にランキング・総合優勝は……
・固形食:PowerBarパワージェルショッツ・コーラ
・ジェル:Mag-onピンクグレープフルーツフレーバー
トータルで一番だと思うのはこの2つ。とりあえず持っておけばどうにかなります。もちろんレースもOK。不安材料は満腹感が得られないことくらいで、トータルで選ぶならこの2つで決まり!
夏場は塩分補給も忘れずに!
勝手に1位を決めてみましたが、完全に私の好みですので悪しからず。実際に比べてみたところ、一番大切だと感じた要素は、じつは「飲み込みやすさ」でした。他は我慢もできますが、喉ごしだけはどうにもなりません。とくにジェル系は粘り気もあるので余計に大切になってきます。飲み込みにくい時は、ミニボトルに入れて水分で割っておくのもオススメ。ちなみに私は、レース前に「インパラ」と「エネもち」、ヒルクライム中は「ウィンゾーン」と粉末の「CCD」を溶かしたドリンクと気付けにカフェイン入りの「マグオン・ピンクグレープフルーツ」、そしてゴールしたらご褒美の「パワーバー・プロテインプラス」を摂りました。んんん、カロリー摂取しすぎ……。ただ、おかげでラストまで心拍を落とさずに上がれました。ここまでとは言わないまでも、1時間くらいのヒルクライムならスタート前と途中でひとつずつ補給するのが良いですね。
夏場は熱中症にも気を付けないといけないので、塩分補給もプラス。そして走り終えたらすぐに回復系のプロテインやアミノ酸を。この夏、しっかり練習して秋のヒルクライムもがんばりますよ~!
(写真/小野口健太)
※今回取り上げた商品の詳細・価格につきましては各HPをご確認ください。
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。