2018年07月09日
芦田昌太郎の「どっちのインプレショー」 第8回 携帯ポンプ/CO2インフレーター
自転車アイテムは選択肢が多く、時には重大な決断を強いられることも。アイテムが豊富になってきて喜ばしい反面、我々サイクリストの悩みは増えるばかり。この連載は似て非なるものや対極に位置するものをピックアップしてお届けいたします。
今回の対決は携帯ポンプvs.CO2インフレーター。みなさんがライドに出掛けるときに持って行くアレです。「チューブ(もしくはタイヤ)、ポンプは持って走れ」とビギナーの時に先輩サイクリストから教わりましたよね。使わずに済むことがいちばんですが、パンク時になくてはならない必需品。目的は同じなのにアプローチの違う2つの製品。どちらにするか悩ましいですよね。そこで改めてこの2つを比較・考察して参ります。人生は右か左か常に岐路に立ち選択を迫られているもの。選べるのはふたつにひとつ。さぁ、今の気分はDotch?
一瞬で充填!のCO2インフレーター
現時点でどちらにするかと尋ねられたのならば、CO2インフレーターでしょうか。とにかく一瞬で充填できるので圧倒的に作業が速い! それにCO2インフレーターならば、小さいのでツール缶にも入りますし、替えチューブとインフレーター、工具、チェーンを入れるとピッタリでカチャカチャと音鳴りもしないのでちょうど良い。ちなみに小さめのサドルバッグにも全部入ります。一方、携帯ポンプはフレームに固定できるというメリットはあるものの、エアロ形状のフレームに乗る身としては抵抗感があります。エアロダイナミクスを携帯ポンプで台無しにする訳にはいかないので、CO2インフレーターが良さそう。
あれ?答えが出てしまった…が、ここで終わるような企画ではありません! 両者ともしっかりとインプレッションして考察していきたいと思います。
諸刃の剣、マイナス面も把握しよう
まずは第一印象で選んだ「CO2インフレーター」をインプレッション。前述した通り、一瞬です。1秒かからずにパンパンに入ります。むしろ少しエアを抜くくらいです。それに小さいのが良いですね。口金の形状はL字型とストレートタイプと2種類ありますが、私はL字の方が使いやすく感じました。反面、軽いのはストレートタイプで、重量差は7g。意外と違うものですね。今回の新たな発見でした。ただメリットばかりではありません。1回使いきりなので失敗したら終わり。タイヤを嵌める前にちょっとだけチューブを膨らませるのですが、この「ちょっとだけ」というのが慣れるまで難しい。また、チューブ交換したらビードにチューブが噛んでいないかしっかり確認を。CO2インフレーターだと充填した瞬間にバーストします。そしてカートリッジは1回使いきりなので、使用したら買い足さなくてはいけないということ。コストも嵩むし、カートリッジは結構重たいです。口金は軽くてもカートリッジと合わせると、軽量な携帯ポンプより重いです。それからエア充填の際は急激に冷たくなるのでカートリッジを素手で触らないように。これは気化熱という現象で、凍傷になるほど冷たくなるので注意が必要。
すばやくエア充填できるが、少し注意点もあるCO2インフレーター。慣れてしまえば問題なく使えるはずだ
軽量・スマートで普遍的な使いやすさ
一方、「携帯ポンプ」はポンピングするだけというシンプルな構造。そして今回比較したトピークのモデルにはネジ込み式の口金が本体に内蔵されていて、使う時は本体から引き出して使用。ネジ込みなのでエア漏れもしないですし、この小ささで仏式・米式の両方に対応。空気圧も8BARくらいまで入るのでチューブ交換した後も変わらずに走れます。コンパクトなボディに使いやすさとこだわりが詰め込まれた逸品だと思います。こちらのデメリットはポンピング回数の多さ。とにかく多い。今回もどれほどシュコシュコしたか分からなくなるくらいシュコシュコしました。そして気化熱で冷えるインフレーターとは反対に摩擦熱でポンプ本体が熱くなりますし、ポンピングしやすいとは言え最後の方は押し込むのも重たくなってきます。これは今回比較している携帯ポンプが「軽くて小さい」「携行性抜群」のものなので、ポンピング回数の多さは仕方のないところ。実際この携帯ポンプならば、バックポケットにも収まりますし、82gと驚異的な軽さ。CO2カートリッジ1本と同じくらいです。入れやすさ、扱いやすさを求めるのならば、もう少し長さのあるものや足で押さえるタイプのものもありますので、そちらがオススメです。
携帯ポンプにはさまざまなモデルがあるが、ネジ込み式の口金になっているものが、不安定な場所でも間違えなく空気を入れられるためおすすめだ
さて、両方のインプレッションが終わったところでラストジャッジのお時間となりました。私が選んだのは……
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携帯ポンプ!
チューブとの相性も考えよう
今回はどちらのメリットが嬉しいかではなく、デメリットの大きさで判断。私にとっての最大のデメリットは「CO2とラテックス系チューブの相性が良くない」ということです。ラテックス(天然ゴム)の二酸化炭素の透過率が窒素よりも15倍高いと言われていて、あっという間にエアが抜けてしまうのです。私もかつて新潟の三国峠で、替えのチューブラータイヤはラテックス、CO2カートリッジ2本の状態でパンク……タイヤ交換するもすぐにエアが抜けはじめ、その抜けていく理由も分からず、不安に苛まれながら少し走って最終的に輪行するという苦い記憶が。無知は怖いですね……。良い経験になりました。反対にブチルチューブならばエアは抜けないのでご安心を。ラテックスもCO2が使えないということではなく、緊急用としてならば大丈夫です。どちらのチューブもCO2を充填したあとは帰宅後にエアを全部抜いてフロアポンプで入れ直しましょう。要はタイヤ・チューブによって使い分けるのがベターなのですが、どちらかを選ぶのであればオールマイティな携帯ポンプに決定!
また最近は両方とも使えるハイブリッド型の携帯ポンプも充実してきているので、決めきれない場合は多少ゴツくなるもののハイブリッドも選択肢のひとつとなるでしょう。
今回インプレッションした商品
エアーブースター (写真上)
価格:2,900円(税別・16g CO2カートリッジ 1本付)、3,300円(税別・25g CO2カートリッジ 1本付)
重量: 22.5g (エアーブースターのみ)
マイクロ エアーブースター(写真下)
価格:2,600円(16g CO2カートリッジ 1本付)、3,000円(25g CO2カートリッジ 1本付)
重量:15.5g (マイクロ エアーブースターのみ)
レースロケット HP
価格:3,800円(税別)
重量:82g
カラー:ブラック、シルバー、ゴールド
ハイブリッド型なら……
ハイブリッドロケット HP
価格:5,500円(税別)
重量:97g (カートリッジを除く)
問:トピーク http://www.topeak.jp/index.html
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。