2018年03月29日
芦田昌太郎の「どっちのインプレショー」 第6回 ソックス編
自転車アイテムは選択肢が多く、時には重大な決断を強いられることも。アイテムが豊富になってきて喜ばしい反面、我々サイクリストの悩みは増えるばかり。この連載は似て非なるものや対極に位置するものをピックアップしてお届けいたします。
いよいよ自転車シーズンの到来ですね。今回は、先日行われた「TOKYOエンデューロ2018 in彩湖」の会場ブースから気になるモノを探してみました。メーカーやショップ、そしてフードとたくさんのブースが並んでいます。私もMCの傍ら、恒例の「何か買いたい病」が発症し、サイクルキャップを買いました。今回、ブースエリアのなかでも一際目立つ幟を立てていたのは「R×L」でお馴染みの武田レッグウェアーさん。
発見しました! 似て非なるモノ、じっくりと比較したことのなかったスポーツ専用ソックスです。今回比べるのはノーマルタイプのラウンドソックスと五本指ソックス。どちらもミドルショート丈で素材の違いはあれど、ほぼ同じ感覚で比べることができる商品を試させて頂きました。
人生は右か左か常に岐路に立ち選択を迫られているもの。選べるのはふたつにひとつ。さぁ、今の気分はDotch?
スポーツ用ソックスのススメ
まったくの先入観で選ぶのなら普通のラウンドタイプのソックスが好みです。5本指が良いは分かるのですが履くのも脱ぐのも面倒くさいですし、洗濯後に干す時も難儀します。あくまで私個人のイメージですが、五本指は「オジサン」っぽい気がしますし……。あ、私も立派なオジサンですが……。それにデザインが豊富なのもラウンドタイプです。そもそも靴下なんて薄手か厚手かくらいの差でどれも同じだと思っていましたし、普段のライドは3足○円みたいな靴下を使用しています。
ところが、これが大きな間違い! 専用ソックスがいかに凄いか、今回身を持って知ることになりました。たかが靴下と侮るなかれ。ブースにいらした「R×L」の担当者さん曰く、「ソックスは本来パワーロスを生む要因のひとつだったが、様々なポイントを素足に近づけることでロスやストレスを減らすことが出来る」とのこと。みなさんも履いてライドすればわかります。今回の命題であるラウンドvs.五本指の対決は同条件になるよう、ローラー台でじっくり比較してみました。
TOKYOエンデューロの会場で軽く試着し、その後自宅でのローラー台トレーニングでじっくり比較しました
ソックスでペダリングが変わる
まずは第一印象で選んだ普通のタイプ。とても気持ち良い履き心地で締め付けもちょうど良いです。「R×L」のソックスは左右立体設計で、マチを入れて立体的に編んであります。ここまで細やかな配慮がなされているソックスに出会ったのは初めて。これでフィットしない訳がありません。さらに足裏には広範囲に滑り止めを配置。今まで使ってきた滑り止め付きのソックスはあまり好みではなかったのですが、「R×L」はまったくの別物。シューズがピタッとくっついてきます。40分くらい走り込んだところで気づいたのですが、足先・ふくらはぎに無駄な力が入っていないのです! 私はシューズの中でつま先を丸めてシャフトを掴んだり、逆につま先を反らせたりする癖があるのですが、このソックスだと全くその癖が出ないのです。つまりは、膝から下が自然体でいられたということ。ペダリング時も意識が向くのは股関節の運動のみ。ソックスの存在だけでこんなにも違いが感じられるとは思ってもみませんでした。
ソックスを介して足とシューズがぴたっと一体化するような感覚に驚いた
素足感覚が気持ち良い
一方、「五本指ソックス」。こちらも同様に足の形にぴったりフィット。さらに驚くべきは足の指一本一本に合わせて指の腹の部分が立体編みされていること。見た目にもぷっくりしているのが分かります。ラウンドタイプとの違いは、滑り止めが各指の付け根だけにあることと、綿が使われているためか僅かに肌触りが良いように感じられること。走行中も指間部のゴワつきは感じられませんし、しっかりとパワーがペダルに伝わっていきます。シューズの中で足が喜んでいるようで、まさに「素足感覚」。私にとって親指が独立して動くというのは大事で、時代劇や日本舞踊では足袋ですよね。そうでないと美しく動けないですし、チャンバラもやりにくいのです。一度だけスニーカーで時代劇という公演をやったのですが、90回のステージずっと気持ち悪かった思い出があります(笑)。
指のひとつひとつが立体編みされている。日本ブランドならではの高い技術力を感じます
さて、両方のインプレッションが終わったところでラストジャッジのお時間となりました。私が選んだのは……。
・
・
・
・
ノーマルタイプのラウンドソックス!
さらばアンクリング、無駄な動きにさようなら
本当に甲乙つけがたい対決……。なので最後は私の好みで決着をつけました。履き心地や汗の観点から言えば「五本指」なのですが、素足感覚過ぎるというか五指が独立して動き過ぎてしまうのが気になりました。それだけ作り込まれているという証拠。ここぞで踏み込みたいレース本番では五本指が向いていると思います。一方ラウンドタイプは、ちょうど良いホールド感で五本指よりも無駄のない動きを反復させ続けることができました。全面的に配置された滑り止めも良い感じ。シューズとの一体感を高めてくれます。「PROJECT75 富士ヒル・シルバーへの道」(https://funride.jp/serialization/project75-1/)が進行中の現在、回転数や心拍を一定のゾーンに収めて練習しているので、今の私に必要なのはこちらのソックス! 富士ヒル対策の武器をまたひとつ手に入れてしまいました。
また、今回比べた「R×L」のソックス、どちらのモデルも立つんです! ソックスを足の形のまま置けるのは、つま先側だけでなく踵と足首の部分までちゃんと立体編みされているからでしょう。そしてこれこそがアンクリングを無くして円滑なペダリングを助けてくれている秘訣かも知れません。今回の対決は「R×L」の完成度の高さが際立つ結果となりました。
立体製法によって立つソックス。素足感覚に近づけるための工夫が詰まった逸品だ
今回比較したソックス
TRR-19R (店舗限定販売商品)
価格:900円(税別)
サイズ:S (22-24cm)、M (24-26cm)、L (26-28cm) ※実寸目安
カラー:ブラック、ホワイト、レッド/ブラック、イエロー/ブラック、ブルー/ネイビー、グリーン/ネイビー、ワイン/ネイビー
素材:ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン
TRR-17G
価格:1,600円(税別)
サイズ:S (22-24cm)、M (24-26cm)、L (26-28cm) ※実寸目安
カラー:チャコール/ブルー、チャコール/レッド、チャコール/ピンク、ホワイト/レッド、ホワイト/ネイビー、ブラック/グレー、フラッシュグリーン
素材:アクリル(ドラロン)、綿、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン
問:武田レッグウェアー http://www.rxl.jp/index.html
(写真/小野口健太)
著者プロフィール
芦田 昌太郎あしだ しょうたろう
俳優。富士ヒル90分切りの中級クライマー。表紙の女性モデルに惹かれ初めて買った自転車雑誌がfunride。以来、大会MCを務めるなど縁が続く。