2026年05月16日
長野県を味わい尽くす! ジャパンアルプスサイクリングロードの魅力

長野県の3つのアルプスを望む、全長878km、獲得標高15,000mを超えるダイナミックなルートをアピール
自転車を通じて長野県の魅力を発信する団体「ジャパンアルプスサイクリングプロジェクト(JACP)」が設定した「ジャパンアルプスサイクリングロード」。 面積が広大で起伏に富み、四季折々の美しさに満ちている長野県の魅力を十分に満喫 できるコースだ。地域ごとにさまざまな顔をもつルートの素晴らしさを長野県とともにメディア向けにアピールした。
「長野県サイクルツーリズム意見交換会」 と銘打って行われたこのイベント。ジャパンアルプスサイクリングロードの概要から各地域のPR、国土交通省総合政策局モビリティサービス推進課の星氏の第3次自転車活用推進計画についての講演。さらにメディア関係者も含めた意見交換会が行われる充実の内容だった。

ジャパンアルプスサイクリングロードとは?
~Expedition Nagano~ さまざまな特色を持つ8つのエリアを設定

南北に長く3つのアルプスを擁する長野県。ジャパンアルプスサイクリングロードは下記8つに分けられており、 長野県の3つのアルプスを望む、全長878km、獲得標高15,000mを超えるダイナミックなルートだ。
- 信越自然郷・北信五岳エリア
- 戸隠・鬼無里エリア
- 千曲川エリア
- 八ヶ岳・ビーナスラインエリア
- 諏訪湖エリア
- 北アルプス・大眺望エリア
- 木曽路・高原エリア
- 南信州・伊那路エリア
山岳、里山、湖、高原、歴史的な町並みなど、長野県の多様な魅力を満喫できるルートが揃う 。最短が16.9kmの諏訪湖ルート、最長が213.5kmの南信州・伊那路エリアと距離もさまざまだが、単独あるいは複数のルートを組み合わせ、長距離を一気に走るのではなく、1日100km程度の「自由なペースで楽しむ旅」が提唱される。 それぞれのルートは絶景や歴史、各地の多様な食文化を体感できる 。
長野県は 令和8年6月1日宿泊分から宿泊税の導入を決定。この財源による サイクルツーリズム強化事業が創設されるという 。これにより走行環境(看板)の整備、サイクルステーションや「サイクリストに優しい宿」の拠点整備支援、サイクルトレインの運行支援など、受入れ環境のさらなる充実が図られる計画だ 。

各エリアの取り組みを紹介
各エリアごとに多種多様な特色をもつジャパンアルプスサイクリングロード。その魅力を各地域のプレゼンテーションから紐解いていこう。※地域後のカッコ書きは、その地域を含むエリアを表記。
諏訪(諏訪湖エリア/八ヶ岳・ビーナスラインエリア/南信州・伊那路エリア)
圧倒的なインフラ整備とライト層の拡大
諏訪湖を中心としたこのエリアは、2024年に全面オープンした全長約16kmの「諏訪湖周サイクリングロード」を核とした整備が特徴である。県や市町村が多額の予算を投じて、自転車優先レーンの色分けや路面標示といったハード面の整備を徹底した結果、安全性が飛躍的に向上した。このインフラ整備は、本格的なサイクリストだけでなく一般観光客の利用を強く促しており、レンタサイクルの稼働率は以前の約5倍にまで成長している。特に週末には、老若男女が数時間かけて湖畔を一周するポタリングを楽しむ光景が日常となった。現在は、周辺の飲食店や宿泊施設との連携を強化し、単なる通過点ではなく滞在型の観光地としての魅力を高める取り組みが進んでいる。また、諏訪湖を起点としてビーナスラインや八ヶ岳方面へ向かう上級者向けルートの拠点としても、その重要性が再認識されている。
辰野町(木曽路・高原エリア)
歴史的街道と次世代育成を軸にした街づくり
辰野町は「日本一のホタル」という季節限定の観光資源を補完する柱として、年間を通じて楽しめるサイクルツーリズムを推進している。特徴的なのは、歴史的な街道である「塩の道」を軸に、近隣自治体と連携して「黄金海道」という広域ルートを提唱している点である。単なる走行環境の整備にとどまらず、次世代を担う子供たちを対象とした自転車教室の開催や、若手の地域おこし協力隊による体験型ガイドツアーの運営など、ソフト面と人材育成に重きを置いている。町内にはサイクリストの交流拠点も設けられ、地域の歴史や文化を深く知ることができるストーリー性のある旅を提案している。また、小規模な自治体ならではの機動力を活かし、地域住民とサイクリストが共生できる環境づくりを目指している。ハードの派手さよりも、地域に根ざした持続可能な自転車文化の醸成を重視する姿勢が、この地の特色である。
https://www.town.tatsuno.lg.jp/gyosei/soshiki/sangyoshinkoka/kankosite/4/cycling/index.html

豊丘村(南信州・伊那路エリア)
Eバイクで巡る「河岸段丘」の農村体験ツアー
天竜川とアルプスに囲まれた「河岸段丘」の地形を有する豊丘村は、有名観光地の混雑とは無縁な「ゆっくりとした時間」を最大の価値として提案している 。ここでは自転車を単なる移動手段ではなく、村の主産業である農業と結びつける取り組みが特徴的である 。具体的には、Eバイク(電動アシスト自転車)を活用して急勾配の坂道を克服し、季節のフルーツ(イチゴ、桃、ブドウ等)を収穫しに行くガイドツアーを運営している 。収穫した作物を地元の喫茶店で特別メニューのスイーツに加工してもらうなど、地域一体となった「食の体験」がプログラム化されている 。道の駅「とよおかマルシェ」を拠点に、シャワーやロッカーなどの受入れ環境も完備されており、小規模な村ながらも農家との深い交流や、オーダーメイドに近い手厚いもてなしが提供されている 。
https://www.vill-nagano-toyooka-kanko.jp/

松本市(北アルプス大眺望エリア/木曽路・高原エリア)
専門部署が牽引する「城下町と山岳」の融合
松本市は2021年度に「自転車推進課」という専門部署を立ち上げ、日常利用から観光まで多角的な施策を展開している 。地形的には、標高2,000m級の「美しヶ原」や「乗鞍高原」での本格的なヒルクライムが全国的な人気を博す一方、国宝松本城を中心とした平坦な城下町でのポタリングも楽しめる 。受け入れ環境も先進的で、松本駅前には更衣室やメンテナンススペースを備えた「サイクルステーション」が設置されている 。また「サイクリストに優しい宿」や、給水・トイレ提供を行う「サイクリングオアシス」の認定制度により、市内各地で歓迎ムードが醸成されている 。歴史ある喫茶店文化やバーの街といった都市の魅力と、大自然のフィールドが「自転車」というキーワードでシームレスに繋がっており、多様なニーズに応える体制が整っている 。
https://visitmatsumoto.com/article/cycling

白馬村観光局(北アルプス大眺望エリア・戸隠・鬼無里エリア)
国際水準のインフラを誇るオールシーズンリゾート
スキーリゾートとして世界的に有名な白馬村は、その知名度と山岳地形を最大限に活かし、オールシーズンのマウンテンリゾート化を自転車を通じて推進している。ロードバイクによるヒルクライムだけでなく、岩岳のマウンテンバイクパークや、未舗装路を走るグラベル、村内の景色を楽しむポタリングなど、多様な走行スタイルに対応しているのが最大の特徴である。村内には22箇所のサイクルステーションや21の「サイクリストに優しい宿」が認定されており、シャワーや更衣室といった受入れインフラの充実は県内随一である。また、年間10回以上のサイクルイベントが開催され、常にサイクリストが訪れる活気ある土壌が築かれている。若手世代が中心となってトレイルの維持管理や地域活動を行っており、民間主導のエネルギーと行政の支援が理想的な形で融合している。インバウンド層も含めた多様な客層に対応できる、国際水準のサイクルエリアといえる。
https://www.vill.hakuba.nagano.jp/hakuba-cycling/

信越自然郷 (信越自然郷 ・北信五岳エリア)
広域連携と鉄道活用が生んだ「旅サイクリング」の形
飯山駅を拠点とする「新越自然郷」は、9市町村にまたがる広大なエリアを一つのフィールドとして捉えた、広域連携の先進事例である。最大の特徴は、飯山駅のアクティビティセンターで借りた自転車をエリア内14箇所の協力施設で返却できる「乗り捨て」サービスである。これにより、利用者は体力や天候に合わせて柔軟な旅の行程を組むことが可能となっている。また、レンタサイクルの約7割をEバイクが占めており、急勾配の多いエリアながら初心者や家族連れでも広域移動を楽しめる環境を整えている。JR飯山線など複数の鉄道会社と連携したサイクルトレインの運行や、荷物搬送サービスの実施など、サイクリストのストレスを徹底的に排除するソフトサービスが充実している。さらに、欧州の国際展示場「ユーロバイク」へ出展するなど、旅サイクリングの本場であるヨーロッパ市場を強く意識したプロモーションを展開している点も特筆に値する。
https://shinetsu-activity.jp/cycling/


第3次自転車活用推進計画についての講演も!

信州の未来を拓くサイクリングロード
「ジャパンアルプスサイクリングロード」は、単なる自転車ルートの整備に留まらず、長野県が持つ豊かな自然、歴史、食、そして人々の営みを結びつける新たな観光の動脈である。各地域がそれぞれの地形や文化を活かし、ハード・ソフトの両面から独自の進化を遂げている点は、他に類を見ない強みといえる。
今後、宿泊税の活用やデジタル技術の導入、さらに海外市場への積極的な発信により、このルートは世界中のサイクリストが憧れる「聖地」へと成長していくことが期待される。自転車というスピードでしか出会えない景色や交流が、訪れる人々に深い感動を与えると同時に、地域の持続可能な発展を支える大きな力となるだろう。信州の壮大な山並みを背に、誰もが自由に、そして安全に旅を楽しめる「サイクルツーリズム県・長野」の実現に向けた挑戦は、今まさに加速しているのである。
関連URL:ジャパンアルプスサイクリングプロジェクトhttps://japanalpscycling.jp/
著者プロフィール
猪俣健一いのまた けんいち
子どものころから学校の授業やクラブ活動で行うスポーツには馴染めず、自転車(スーパーカー自転車やMTBルック車)で走り回るのが大好きだったが、中学3年生のときにテレビでマウンテンバイクと出会い競技をスタート。マウンテンバイクダウンヒルをメインにレースに出場するが、1999年に最高峰カテゴリーで走ったのを節目に、選手としての才能に見切りをつけ裏方に回ることを決意。2000年からフォトグラファーとして活動し、日本のトップリーグや海外のレースなど、マウンテンバイクやBMX、ロードレース、トラックなどあらゆるジャンルの自転車競技を撮影する。さらに自転車雑誌の記事執筆や編集作業も手がけるほか、BMXレーシングではオーガナイザーとしても関わるなどマルチに活動している。