2020年02月05日
【2020ハンドメイドバイシクル展 】Vol.1 “マスプロメーカーにはない魅力や個性”
国内のカスタムフレームビルダーが一堂に会する“ハンドメイドバイシクル展”が1月25、26日に東京・科学技術館で開催された。今年はパーツメーカーや具材メーカーを含む52社が参加し、マスプロメーカーにはない魅力や個性ある製品を展示した。
自転車を愛でる目を養う絶好の機会
自転車を学ぶ方法はいくつかある。たくさん走ることでわかることも多いし、カタログをしっかり読むことも大切だ。けれど、もし順番をつけるなら、自転車をじっくりと見ることがいちばんだろう。フレームの工作や素材、形状には、必ず、そうなった理由がある。たとえばチェーンステー長が405㎜だとしても、素材や形状や、他のパイプやジオメトリー、組み合わせるタイヤによっても寸法の意味するところはまったく違ってしまう。
といっても、メーカーの開発者に話を聞ける機会など滅多にないし、カタログに書いてあることは必ずしも自分の疑問に答えてくれるわけじゃない。そういった疑問に作り手が答えてくれるのが、ハンドメイドバイク展の最大の魅力。フレーム工房に足を運ぶのに敷居の高さや躊躇いを感じる人でも、展示会なら話しやすい。そんなわけか、毎年のように主催者が驚くほどの人気を集めている。
ショー会場にあった魅力的なバイクの中から、2回に渡って、気になったバイクを取り上げてみよう。
AMANDA
40代のライダーが時速20㎞で16時間を快適に走るため、高強度&高弾性カーボン繊維を使ったフレームに、オリジナルのホイールとハンドル周りが個性を引き立てている。ステンレスメッシュを巻いた強化タイプのヘッドチューブや、GOKISOハブを改造して作ったディスクブレーキ仕様のカーボン2重補強穴開きディスクなど、強さと滑らかさを両立している。また、1975年に作ったというチェーンリングを用いるなどサステナビリティの高さもあって、さすがインテリ系に愛されるブランドらしい仕上がりだ。
長時間を快適に走らせるため、エアロポジションでの走行時間をメインに考えている。ステムはダブルデッカータイプ。
機関車の動輪を彷彿とさせるロコモティブ(機関車)タイプのディスクホイール。フランジとローター間にある赤いパーツはGOKISOのハブで、スポークホイール用に再利用も可能だという。
問い合わせ先:アマンダスポーツ amanda_chiba@ybb.ne.jp
毎年のことだが、ドバッツの佇まいの美しさは、力作が集まる会場の中でも特筆すべきもの。定番ロードモデルのサクシードにマッドガードとヘッドライト、ディスクブレーキを装着した長距離ツーリングモデル。金属フレームはディスクブレーキ仕様の場合、カーボンフォークを使うのが常套の手法だが、全体のフォルム乱さないクロモリ製でまとめている。ボトルケージ台座、美しく機能的なケーブルラインを作り出すトンネル位置など、ていねいに作った自転車の手本となる1台だ。
しつらえたようにフレームとフィットする本所のチタン製マッドガード。前後ともに見事なクリアランスはベテランの面目躍如である。
最近はカスタムフレームでも見ることの少なくなったシートステーのチェーンフック。シングルテンション構造の変速機が増えている今こそ輪行時にあると重宝する。
シートステーの延長線に合わせてシートチューブを切り落としたオリジナルデザインの“ファストバック”。ポストの固定は薄くて細いシートステーに穴を開ける集合タイプ。溶接部が集合するシート部にあるため、オーダーフレームでも嫌がられる工法の1つ。
まるでダウンチューブが隆起したように、フレーム小物の異物感を感じさせないアウタートンネル。溶接の巧みさ、曲線を作り出す才能は同業者が羨むほどだ。
問い合わせ先・公式HP:ドバッツ・ライノ・ハウス
SVECLUCK ZIPITY/スベクラック ジピティ
グラインデューロのためにAbove Bike Storeが製作したMTB“スベクラック・ジピティ”。フレームのカラーリングはもちろん、キャリバーやスプロケットのローギアの配色にもこだわりをみせ、マスプロメーカーには作れない雰囲気を醸し出している。
自社でペイント設備を持ち、品質に徹底的にこだわりを持つ。下地から何層も塗膜と研ぎを重ね、スペーシーで奥行きのあるペイントに仕上がっている。
公式HP:Above Bike Store
CHERUBIM/ケルビム
コロンブス100周年パイプの“チェント”を採用したニューモデルをはじめ、今年も力作揃いのケルビム。チーフビルダーの今野真一さんにおすすめを訊くと「本業のレーサーを」と示したのが、競輪の神山雄一郎選手のトラックレーサー。ダウンチューブと同径の太めのトップチューブが特徴で、一流選手の実践マシンらしくシンプルなフォルムの中に迫力がある。
公式HP:ケルビム/今野製作所
GOKISO
超高性能ハブで知られるGOKISOはプロトタイプのスルーアクスル仕様のディスクブレーキ用ハブと、1日に1セットしか作れないというハンドメイドの高精度カーボンリムを出品した。
公式HP:GOKISO
つづく
文:菊地武洋
写真:山田芳朗
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。