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2019年12月03日

【片山右京さん・今中大介さんインタビュー】共同事業を介してスポーツ自転車の裾野を広げていく

「日本全国Doスポーツ宣言」として、ランニングや自転車など競技を限定せず「Doスポーツ」全体をこれからのフィールドとすることを発表したアールビーズでは「競技団体との連携強化」も重要プロジェクトのひとつとしている。その第1弾として発表されたJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)とアールビーズの共同事業について、全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)理事長である片山右京氏(右)、副理事長の今中大介氏(左)にインタビューを行った。

理事長を務める片山右京氏のコメント

ーーー「自転車の普及と発展」を目的とする今回の共同事業で期待することは
目的はシンプルで「日本人を強くする。そのためには競技の裾野を広げよう」。
これまでもいろんな人がそう言ってきたけれど、具体的な計画はなかった。
それをちゃんとやる。スキームをつくり、具体化していきたい。
「自転車競技登録者を強くする」というところにフィーチャーしたとき、コアな人だけでなく「開拓」をしていくということは避けられない。まだまだ国家レベル規模とはいえないが、そこを模索していく。
実例でいくとMt.富士ヒルクライムだろう。
2019年の大会では1時間以内が22人も誕生した。それだけ強い選手がいるので、ヒルクライムであってもロードレースのような展開になる。
そのタイムは今の日本のトップ選手と同等のレベルといってもいい。(ホビーヒルクライマー上位には)非・JBCF登録者も多くいるけれど、彼らを次の登録者とする導線を作っていきたい。

自転車の競技者登録数は、陸上競技など、他NF(国内競技団体)と比べると少なすぎる。単純に言えばボトムアップが不可欠。多くのチャンネルを駆使して横展開して裾野を広げていかなければならない。

ただそれだけ(裾野拡大)をやっても広がらないな、というのもある。(幅広い層にアプローチする上で)JBCFのパートナーには課題解決能力が不可欠だ。アールビーズはRUNNET利用者数だけでなく、マラソンなどのイベント企画、IT・ネットサービスに取り組んできたさまざまな実績がある。スピードもある。そこに期待がある。
本来自転車は乗るだけで面白くて、乗っている人だけがハマるポイントがある。そのエッセンスを持っている企業がJBCFには必要だと思った。
僕たち(JBCF)だけではできないことができるようになる事業連携だと考えている。

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ーーー何をやっていくのか? 
本当に国内自転車ロードレース界から世界チャンピオンを出したり、日本人にマイヨ・ジョーヌを着せようと思ったら、国家レベルでやらないといけない。制度やカレンダー、予算規模などすべてを変えないといけない。
ただし自転車の世界に強みがあるのは経産省直結のJKA(競輪とオートレースを統括する公益法人)がやってきた歴史と、モビリティの側面では国交省が推進しているMaaS(Mobility as a Service)がある。これからはモビリティとしての自転車がもっと身近になる。経済効果も期待できるし、モビリティの側面から啓蒙したりメッセージを送ることは自転車競技に必要不可欠なものだと思っている。

では、どういう施策があるの?と言ったら、今はまだ想像がつかないと思う。
ただ変化しなくてはいけない。約50年間続いているJBCFに登録してくれるコアな登録者は「誰よりも速く」とか「人より強くなれる」という達成感などで成り立ってきた。しかしここまで多様化した情報社会の中で、自転車競技を継続するためには、いろいろなチャンネルが必要になってくる。それが「変化」だと思う。

コアなファンも大事だが、そこからもう一歩脱皮できないと現状マーケットからでは世界で戦う選手を輩出できないだろう。国内でワールドチャンピオンを輩出している他の競技を見ると、先行投資や人材育成をきっちりやってきている。他競技にならって子供からジュニア、高体連、学連と分かれている現在の体制を統合するのもひとつの考え方。年代だけじゃなくて、競技力別にして甲子園のような県予選大会から始めるというのもいい。

自転車を社会の役に立つものにしたい

NFとしてのJCF(日本自転車競技連盟)も時代の中で変わっていかないといけない。僕もそこに関わっているし、変化も感じている。だが一番大事なのはそこからもう一歩進むこと。自転車は「車」なんだと。
単に競技を行う小さな世界に収まらず、国のオーガナイズで道路を走る環境を整備するとか、eバイクなどの社会インフラを作ろうとしている人たちと協業するとか。
自転車を、経済効果があって人の役に立つものにしなければならない。「スポンサーをしてください」と言っても誰もしてくれない。
ちゃんとしたプラットフォームを持たないといけない。
小さいアライアンスを組んでも、本当のコントロールはできないな、と思う。
一流選手は突然変異でもないかぎり出てこない。日本は「自転車大国」、だからプラットフォームが必要だ。

次の世代の自転車競技のために誰が声を上げるのか。しかし言葉は残念ながら消えてしまう。座右の銘や、映画を見て「そうだ」と思ったことも、上司や家内に怒られたことも一年後には忘れてしまう。
体感するしかない。ペダルを踏んでいるヤツは違う。ヒルクライムをした人にしかわからない世界がある。ツール・ド・おきなわを完走しないとわからないことがある。
自転車の素晴らしさはたくさんある。そこにモビリティの可能性をプラスアルファすると「化ける」と思っている。モビリティとして、社会の中に融合し、そこから自転車競技を広げていきたい。

MaaS:ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念である。利用者はスマートフォンのアプリを用いて、交通手段やルートを検索、利用し、運賃等の決済を行う例が多い。(引用:国土交通政策研究所報第69号2018年)

片山 右京(かたやま うきょう)さん
1963年5月29日生まれ。「カミカゼ・ウキョウ」の異名を取り、アグレッシブな走りでファンを魅了したフォーミュラ1(F1)ドライバーとして知られる。引退後は自転車競技選手としても活躍。「Mt.富士ヒルクライム」や「ツール・ド・おきなわ」などに市民レーサーとして出場し、数々の好成績を収めている。「KATAYAMA PLANNING株式会社」代表取締役を務める傍ら、2018年からは全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の理事長に就任。また同年には東京オリンピック・パラリンピック組織委員会自転車競技運営スポーツマネジャーにも就任し、東京2020の自転車競技責任者として多忙な日々を送っている。出身地である神奈川県相模原市の名誉観光親善大使のほか、白山ジオトレイル名誉顧問、大阪産業大学工学部客員教授も務めている。

 

JBCF副理事長 今中大介氏 「サイクリング愛好者を巻き込んで、大きなムーブメントに」 インタビューは次ページ

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