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2021年11月24日

【自転車日本縦断ギネスワールドレコーズチャレンジ】落合佑介さん、136.5時間の挑戦/後編

2021年10月15日、サイクリストの落合佑介さんが日本縦断に挑戦。狙うは挑戦の時点でギネスワールドレコーズに認定されている高岡亮寛さんがもつ6日と13時間28分(157時間28分)。
事前情報では5日間で縦断達成するというプランが掲げられており、条件の悪い気候などに悩まされつつも、5日16時間30分(136時間30分)と、20時間58分の短縮に成功。現在(2021年11月5日現在)はギネスワールドレコーズに申請中となる。記録が受理されれば、ギネスワールドレコーズ新記録として登録される。
前編はこちら
それでは後編をお届けします

すべての日程をサポートしたクルー総監督の森脇裕さん(左)とチーフクルーの丸田友之さん(右)(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT
丸田さんはじめスタッフは都内から鹿児島・佐多岬まで自走でサポートカーを届けた(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

サポートスタッフから見た落合さんの姿:森脇裕さん寄稿
走行中の痛みに対する対処法は?
機材について教えてください。 今回の挑戦で役に立ったと感じた機材を挙げてください。
栄養補給について
さらに結果を狙うならどこを改善したいか。
ギネスワールドレコーズチャレンジを終えて今の心境を
この挑戦で掴んだものは。予選会・RAAMへの手応えはありますか?
チャリティを行った理由は。


走行中の痛みに対する対処法は?

2,600km連続走行して、痛みがまったく出ないということはないと思っています。どうすれば痛みが出ないようになるかは試していくしかありません。DNFするのも1つの対処法と思っています。
痛みは必ず悪いことばかりではなく、自分の身体と対話できている証拠だと思っています。私は毎回色々な場所で痛みが出ては対処を繰り返しています。
毎回痛みが出る場所への対処は必ず必要となることから、前もって軽減させるようにもしており、股には股擦れ防止のプロテクトJ1、肩の痛み対策には振動を軽減するためにレッドシフトのサスペンションステムを使用しています。他にもアグレッシブデザインの日焼け止めやリップクリームも必需品です。

機材について教えてください

機材は普段から大阪にあるベックオンでメンテナンスをしていただいています。スタッフの野村さんはRPPの一員としても参加していますので、日本縦断でも兵庫県姫路市から北海道石狩市まで帯同し、メンテナンスとお笑い役(https://www.youtube.com/watch?v=TC_zgNjyxrI&t=56s)を担っていただきました。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

ギネスのルールとして、自転車の交換が出来ない為、マッキサイクルズのハンドメイドバイクを1台使用しました。カーボンとクロモリのハイブリットバイクで、カーボンの軽さとクロモリの乗り味を兼ね備えています。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

ホイールはGOKISOの50mmハイトのカーボンホイールを使用しました。今回のルートは平地が殆どだった為、エアロ効果を重視しました。

タイヤはiRC TIREのASPITE PRO RBCC 700×26Cを使用しました。パンクによるロスタイム発生のリスクが少なく、雨天でもグリップ力を発揮して安定して走れるものをチョイスしました。

ケミカルはワコーズのチェーンルブリキッドを使用しました。耐久性と撥水性に優れたエクストリームに、パワーというオイルを追加で塗布しています。厚い油膜を作りだし、チェーンの動きにクッション性をもたせることで、長時間のライドでの疲労軽減が期待できます。慣れている機材が一番で、普段から使用している機材をチョイスしています。

ただし、機材もステップアップさせたいので、1つチャレンジしています。今回はレッドシフトのショックストップステムです。舗装路やグラベルからの恒常的な振動を減らし、大きな衝撃は最大70%削減される画期的なステムです。段差などは角が取れて、マイルドな乗り味でした。一度つけたら、もう手放せないほど依存してしまいました。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

今回の挑戦で役に立ったと感じた機材を挙げてください。

どれもウルトラロングを走れるように、身体が疲れにくいことを重視して私なりに考えた機材ですので、すべて役に立ったので全部という答えになるでしょうか。
どうしても1つだけということでしたら、今回はサイクルコンピューターとして使用しているLEOMOのTYPE-Sです。

リモートバイクフィッティングとして知られていますが、私の使い方はサイコン+音楽+地図+クルーとのコミュニケーションです。ハンドルに取り付けていたのでスマホを持つ必要性がなく、軽量化出来ました。メインで使用していたナビのGPSが突然ストップしてしまい、地図としても使用するという応急対応でも使用しました。
アパレルになりますが、役に立ったのはサンボルトのビブパンツです。数か月前から全てプレミアムパッドにお値段そのままでグレードアップされており、高反発で型崩れせず、サドルと股の摩擦も最小限に抑えられました。

栄養補給について。どんな方法を用いていましたか。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

もっとも重要視していることは胃に負担をかけないことです。普段の食生活が出来るようにもしています。
特に野菜を摂取する機会が減りますので、野菜ジュースで補うようにしています。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

前半はおにぎり、中盤はおにぎりとパン、後半はパンやカップラーメンが中心でした。おにぎりが減った理由は夜中の雨で冷えている時に、冷えたおにぎりを食べてしまい、お腹を壊してしまったからです。カップラーメンになったのは雨が降り続き防水のために全身レインウエアとなり、バックポケットへのアクセスが困難になったためです。止まって補給することはロスタイムですので出来るだけ避けたいと思い、ボトルにお菓子を詰め込んで飲みました。
普段とは違う補給としてはブーストショットです。青森港のフェリー時間に間に合わすために、大舘市から青森市までの100kmを4時間で走る必要があった時と、ゴール前の最後の追込み用で飲みました。
1,880km走ってからのグロス25km/hは厳しかったですが、間に合うことができたのもブーストショットのお陰です。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

さらに結果を狙うならどこを改善したいか。

天候と風向きが味方してくれる時にチャレンジしたいです。過去3回日本縦断していますが、今回が全体を通してもっとも苦しめられました。

今回失敗したと思っていることは2つです。

1つ目が既に試し始めていますが、サドルの改善です。今回は坐骨結節と恥骨の痛みがありましたので、インフィニティシートに変更しました。RAAMというアメリカ横断自転車レース(4800km)のために作られたこのサドルは医学博士によって作られた、長時間乗ってもお尻が痛くなりにくいということですが、フィットすればフォームやペダリングが安定して結果が期待できると思います。

2つ目はクルーとの関係です。スタートするとコミュニケーション時間が極端に減少してしまいます。ご存じのように、不足するとミスやトラブルのリスクが上がり、不満が積もりやすくなります。
あと、居心地良く車中で休む時間も増えてしまいました。もっと休憩時間を減らしていきたいです。
ただ、この2つは相反しているところもあり、どうするか悩ましいところでもあります。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

ギネスワールドレコーズチャレンジを終えて今の心境を

フィニッシュ直前は、段々とゴールの距離が近づいているのはわかったのですが、とうに陽も落ちて暗闇の中を走っていました。
光がいくつか見えていましたが、どこでどうゴールと認定されるのか、時間は? 認定は? 案内されるままにインタビューを受けているうちに「終わった」と認識しました。なんだかまだ終わっていないような気持ちでした。
直前の休憩で「あと100kmになった今の気持ちは?」と聞かれ、「今日はもう終わりましょう」と答えていました。しかし、ゴール後にインタビューを受けていると、だんだんと走りたくなる気持ちが湧いてきました。何と言っても宗谷岬以降はやっと追い風でしたから。
でも、その先は直線を暗闇で走り続けないといけなくなりますので止めました。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

この挑戦で掴んだものは。予選会・RAAMへの手応えはありますか?

今回の日本縦断の経験を通じて、本当に色々な経験をさせていただきました。今までブルベ、ジャパニーズオデッセイ等いずれも単独で走っていましたので、自己完結で走ることの楽しみがありました。
今回は日本各地から走行をサポートしてくれるクルーが集まり、沿道から多くの声援、SNSから激励の言葉をいただき日本縦断の魅力を体感しました。こうした盛り上がりは、昨年のRoppongi Expressの高岡選手、今年の8月にギネスチャレンジをした、なるさん(Twitter名)が作り上げ、そして今回はクルーのSNSやYouTube企画、私が走っている間にギネスチャレンジを盛り上げてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT

私が目指しているのはアメリカ横断レースRAAM5,000kmのレースですので、日本縦断はやはり通過点と考えなければならないと思っています。日本縦断は半分の距離です。今まで3,800kmまでしか走ったことのない私にとってRAAMは未知の世界です。
しかし、5,000kmの練習をする休みが取れるわけではありません。普段の練習や今回の日本縦断の延長線上に、RAAMのゴールが見えています。そしてRAAMのライダーは一人ですが、一人で勝てるレースではありません。今後もRPPメンバーとともに協力してRAAMでの男性初の表彰台を狙っていきたいと思います。

(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT
(c)RANDONNEUR PLUS PROJECT
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チャリティを行った理由をお聞かせください

「RPP日本縦断ギネスチャレンジ企画」期間中にご報告いただいた金額は合計44,583円でした。
今回のチャリティイベントに賛同し、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
日本各地では災害が毎年起こり、毎年被害が出ています。情報を得る度に、どこで起こっていても心を痛めます。
私はここまで大きな災害経験はありません。それはたまたま運が良いだけだと思っており、いつかどこかで災害に遭うと思っています。私は大きな目的や目標があってチャリティをするのではなく、少しでも多くの方に広がって欲しい、チャリティが生活の一部になればという想いで活動をさせていただきました。
身近な自然災害であれば道の崩壊を何度も目にしています。これは自転車に乗られている方の多くが経験されているのではないかと思います。通行止めの影響は自分の走行スケジュールの変更を余儀なくされ、行きたいところに行けない、予定時間に間に合わなくなることもあります。
旅のトラブルを楽しむという考え方もありますが、目的地にたどり着けない、待って下さっている方に迷惑をかけます。どこかに被害が生じるようなことが少しでもなくなれば良いな、と思っています。


【スポンサー一覧】(社名50音順)
ASPITE PRO RBCC( アイ・アール・シー 井上ゴム工業株式会社)
プロテクトJ1(株式会社アースブルー)
ACTIVIKE リカバリープロテイン(合同会社ACTIVIKE)
IZANAGI、AERO-R1CV(株式会社オージーケーカブト)
ショックストップステム(Alternative Bicycles)
CICLOVATION、Qbicleバイクポーター(株式会社 ACTION SPORTS)
CloudGPS(株式会社リアルタイムシステムズ)
grupettoサコッシュ日本縦断ver(grupetto)
GOKISOワイドフランジハブ、GD250mmハイトクリンチャー(株式会社近藤機械製作所)
オーダーサイクルジャージ サンボルト(サンボルト株式会社)
COLUMBUS、ZEROFIT SOCKS(株式会社 日直商会)
BOOST SHOT、BOOST Nano AG(株式会社ポディウム)
メカニック野村(スポーツサイクルショップ BECKON)
Code 3 Cr-mo x carbon(macchi cycles)
TYPE-S、パワーマウント(LEOMO, Inc.)
R250 超軽量縦型輪行袋、防水トップチューブバッグ レギュラー グレー(有限会社ワールドサイクル)
チェーンルブリキッド エクストリーム、パワー、ラスペネ、Aggressive Design(株式会社和光ケミカル)

関連URL:RANDONNEUR PLUS PROJECT https://randonneur-plus.com/

写真と文:RANDONNEUR PLUS PROJECT

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