2020年04月30日
「この危機にさらに強くなる」NTTプロサイクリング入部正太朗の終わりなき挑戦(後半)
昨年、悲願の全日本チャンピオンに輝き、今年からUCIワールドチームのNTTプロサイクリングに移籍した入部正太朗。しかし、本格的なヨーロッパでのレースデビューを前に、世界的な新型コロナウィルス感染拡大の影響で日本への帰国を余儀なくされた。新たな挑戦を前に出鼻をくじかれることになったが、入部は来るべきレース再開を見据えて、自らのレベルアップに取り組んでいる。後半は短期間に終わったイタリアでの生活と、ステイホームで続けているトレーニングについて紹介する。
ヨーロッパでの拠点イタリアへ
マレーシアのツール・ド・ランカウィ(2月7~14日)で連日アシストとして全力疾走を続けた入部は、回復を図るためヨーロッパへ旅立つ前に日本に戻った。
「毎日暑い中、オールアウトするまで走っていたので、肺周りの筋肉が張っていました。すぐヨーロッパに帰ると疲労を引きずる可能性があったので、落ち着いて疲労が抜けるまで日本で練習しました」
その間、UAEツアーで他チームスタッフ、選手らの新型コロナウィルス陽性が明らかになり、レースが打ち切りになるなど、その脅威がいよいよ身近にも迫っていると感じることになった。
「各チームのスタッフ、選手が心配で、事が大きくならないようにと願っていました。でも、あの時点では今の状況は想像できなかったですね」
3月1日、入部はヨーロッパでの活動拠点となるイタリア・トスカーナ州のルッカに渡った。ルッカには入部を担当するチームの英国人コーチが住んでいて、育成チームであるNTTコンチネンタルサイクリングチームのサービスコース(拠点)もある。さらに滞在するのは、チームの女性マッサーとその夫が経営する小さなホテルとなった。
「初めての海外生活ですが、コーチがそばにいることで練習の精度もより上がる。拠点があることは、機材トラブルにも対応できる。マッサージも受けられるので、僕にとって環境が整っていました」
このころイタリア北部のロンバルディア州では自治体の封鎖が始まっていたが、ルッカはまだ外出の規制はなく、平穏だった。入部も街の中心部へ出かけたり、チームメイトと屋外で練習したりと通常の生活を送りながら、次のレースに向けて準備を進めていた。しかし、新型コロナの感染はしだいにイタリア全土へと広まり始めた。
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。