2016年02月23日
【ショートインタビュー】中長距離トラック女子チーム CIEL BLEU KANOYA
去る2月9日、メルセデス・ベンツのギャラリーにて日本初となる中長距離トラック女子チーム“CIEL BLEU KANOYA(シエル ブルー鹿屋)”の発表が行なわれた。当日はミドルサイズSUV“GLK”の後継モデルとなる”GLC”の発表、およびメルセデス・ベンツ コレクション ネクストドア(イベント型ブランド体験施設)のプレス発表と兼ねて、当チームのプレゼンテーションも行なわれた。多くのメディアに囲まれる中、華々しく行なわれた模様はすでに自転車メディアで発表されている。そこでFUNRiDEでは、ゼネラルマネージャー兼監督を務める高宮 正嗣氏にショートインタビューを行なった。プレゼンテーション当日のかこみ取材での質疑とあわせてお届けしよう。
鹿屋体育大学自転車競技部 黒川剛監督(左)、CIEL BLEU KANOYAゼネラルマネージャー兼監督 高宮正嗣氏(右)
——設立の経緯を詳しく
2020年東京オリンピックと同じ年に鹿児島県で国民体育大会が開かれます。そのあたりもチーム設立に至った経緯でもあります。選手2名がしっかりトレーニングできる環境と言うのも含めて鹿児島県鹿屋市がベストではないか、選手にとっても良い。地域住民の方にとっても今後、自転車文化を根付かせるためにも大学時代よりもさらに上の活動をさせていただくのが経緯です。
——中長距離トラックプロチームは初だが
日本のトラック競技の現状では主にロードチームの実業団に参戦しながら、あるいは大学生、高校生による部活動の2つしかない状況の中で、彼女たちは世界選手権2位、アジア選手権3位という成績を残している。では高い成績を残しているチームがないのか。というのは疑問でした。これをフォーカスすることでトラックレースの面白さ、皆さんの目に触れる機会が増えると思います。
——初レースは
このジャージを着て初めて出るレースは全日本トラック選手権(4月16-17日)がデビューです。ロードレースに関しては今トラックに注力しながらすき間を塗って参戦することになる。国内にも新しいチームができているので、そういった選手たちと走ることで彼女たちにも刺激になると思います。ロードバイクもキャノンデールからサポートされている。ロードも走ってきちっと成績を残し、トラックで戦えるようになるはず。当然、中長距離のトラック選手としての強化を行なうためにロードも走らないといけない。日常のトレーニングやレースでこのジャージとキャノンデールに乗って、皆さんの前で良い走りをしたい。
ーープロチームということで練習や環境はどのように変化するのか。
UCIトレードチームに申請をしています。よってナショナルチーム以外が出場する以外の国際レースにも出られるので、UCIポイントの獲得を目指してレースに出場していきます。
——契約期間は?
契約年数は1年ですが、東京オリンピックが視野に入れているので、単年での活動は考えていません。
——活動資金はどのように得ているのか
鹿児島県の企業様をはじめ、クルマに企業名を記載している企業様に現在チームの活動を援助していただいております。また様々な手段で企業様へご提案をし活動資金を集めている状況です。
上野みなみ(左)素晴らしい車を提供していただくので、それに見合った成績を上げる必要がありますが、良い刺激になるので今まで以上に頑張りたいです/塚越さくら(右)クルマばかりが目立ってしまっても駄目だと思っています。このクルマと同じくらい目立てるように頑張りたい。
——今回メルセデス・ベンツから提供されるVクラスの内装の感想は?
シートは3列ついているのですが、現在は2名なので2/2という形で考えている。センターコンソールはテーブルになり、食事などもできる。身に余る車だと思います。Vクラスの展開の中でも大きい展開です。ホイールベースも長い設計です。またラゲッジスペースも十分あるので、屋根に積まずに中に収納できますのでありがたいですね。
上野、塚越両選手と、メルセデス・ベンツ日本株式会社 社長 上野金太郎氏
ショートインタビュー
編:メルセデスからのサポート関係の発展は、イベントでの上野金太郎社長との出会いがきっかけであるのは周知ですが、どのような交流であったのか、詳しく教えてください。
高宮さん:昨年の2月に開催されたサイクリング屋久島にメルセデス・ベンツ日本の上野社長や関係者の方々がお越しになられていた際に、偶然鹿屋体育大学自転車競技部の 学生がボランティアで走っておりました。そこでお話させて頂く機会があり、発展してサポートを受けるお話しになったのです。
編:今後は選手を増強する気持ちはありますか。
高宮さん:設立のきっかけとしては上野と塚越の活動を支えるためのチームですが、今後は選手やスタッフのメンバーを増やし、東京オリンピックでのメダル獲得の一翼を担いたいと考えております。
編:なるほど。では加入の基準は?
高宮さん:まだ詳細は発表できません。これから煮詰めていきます。
編:より競技に集中できる体制を整えておられると思いますが、スタッフの人数、役割を教えてください。
高宮さん:スタッフ人数は3名です。チーム代表、そしてGM兼監督(スポンサー様との協議・レーススケジュール、トレーニングスケジュール等の帯同、管理)、事務スタッフとなります。
編:レース時のスタッフは?
高宮さん:レースではメカニック、マッサーにスポットで対応してもらいます。また当チームは、日本自転車競技連盟や日本ナショナルチームと連携していきながら、トレーニング・レースを組み立ててまいります。また国立スポーツ科学センターの職員の方とも協議しトレーニング内容を決定していきます。
編:シエルブルー(青空)を名称に加えた理由は?
高宮さん:鹿屋体育大学自転車競技部に関係するすべて(選手・スタッフ・OB会等)の総称が「BLUESKY」でした。自転車競技の本場フランスで将来的に活動する際にフランス語がベストだと考えたためです。
編:プロチームとして活動されることによる、収益のシステムを教えてください。
高宮さん:当チームは地域密着型プロサイクリングチームとして活動しております。そのため、地域で開催されるイベントへの参加や開催をしていき運営費を捻出させていただきたいと考えております。また様々な自転車関連事業を展開していく予定でございます。(レンタサイクル・スクール事業等)。その他につきましては企業様からのスポンサー費用から活動費用を捻出させて頂く予定です。
編:今季の目標成績を教えてください。
高宮さん:リオデジャネイロオリンピック出場、全日本選手権(トラック)の優勝!
鹿屋体育大学、大学院を経て成長を遂げた2名のトラックスペシャリストは、地域に密着した形のプロサイクリストとして活動を始動した。これまでどおりストレスフリーといえる土地勘のある場所で、さらなるステップアップを目指す。目標はリオ、そして東京オリンピック。上野、塚越両選手は、3月2日からスタートするトラック世界選手権では日本代表として、最後となるリオの出場枠を賭けた戦いが待っている。ここでの走りも今後のチームの行く末を占ううえで重要だ。ともあれ初の中長距離トラック競技プロチームを応援したい。
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得