2019年09月01日
執念 〜入部正太朗、2019年全日本選手権優勝への軌跡~(後編)
チームメイトと意見をぶつけ合い、救われる
悲しみが癒えぬまま、そして練習不足でコンディションも下降気味の中、次のビッグレース、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ 5月19~26日)の開幕が迫ってきた。
「本音を言うと。TOJに満足のいく状態で臨めるという感じではなくて、不安を抱えていたんですね」
そんな時期に追い打ちをかけるような出来事があった。普段は明るい雰囲気のシマノレーシングのイメージでは考えにくいことだが、年下のチームメイトたちが入部に今までの不満をぶつけてきたのだ。
「今までの積み重ねなんですけど、簡潔に言うと僕に至らないところが多くて、みんなが不満に思ってることがあっても、それを言い合えない関係性が続いていたんです。自分の考えがずれていても感情的になって強く言ったりとか、そういうことを繰り返してきたんで、溝ができかけていたんですね。そういうのをチームメイトがTOJ前に教えてくれることがあって、僕は救われたんです」
しかし、チームメイト同士、胸の内をぶつけあったことでシマノレーシングはより結束した。
「僕が至らぬことをやってきて、レースでも失敗してきてたのに、みんな受け入れてくれて、手を差し伸べてくれた。ありがたいなと思ったし、みんなに救われたんですね。もしかしたら、そこで受け入れてもらえなかったら、もっと孤立したり、居場所がなかったと思います」
一時はチームから孤立しかけたという入部。しかし、そんな彼を救ったのもチームメイトだった
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。