2018年09月01日
【第18回アジア競技大会(2018ジャカルタ・パレンバン)現地レポート】自転車競技最終日 2種目でメダル獲得 男子ケイリンで新田祐大が銀メダル! 男子マディソンも橋本・今村組が銅メダル
男子ケイリン表彰式。男子スプリント表彰式。左から銀メダル・新田祐大、金メダル・JAI ANGSUTHASAWIT、銅メダル・アジズル・ハスニ・アワン
インドネシアで開催されている第18回アジア競技大会。自転車トラック競技はいよいよ最終日を迎え、男子ケイリン、女子スプリント、男女マディソンが行われた。
男子ケイリン
男子ケイリンに出場したのは新田祐大(日本競輪選手会福島支部)と脇本雄太(日本競輪選手会福井支部)の2名。両名とも順当に決勝戦に駒を進め、日本は出場国中唯一2名を決勝に送り込んだ。1回戦は新田と脇本ともにトップでフィニッシュし、ケイリンが日本のお家芸であることをアピール。2回戦は脇本がトップ通過、新田も危なげない走りを見せ2位で通過した。
決勝は新田3番手、脇本5番手でレースが進んだ。誘導が外れてもなかなかペースが上がらないなか、残り1周のポイントで新田が先行しトップに立つ。新田の後に続くのがスプリントの覇者、マレーシアのアジズル・ハスニ・アウァンと最後尾からポジションを上げたタイのJAI ANGSUTHASAWIT。4コーナーを抜けてゴールスプリントで新田がリードするが、JAIが僅差で交わし、1位JAI、2位新田、3位アウァンの順でフィニッシュした。
JAIと新田の差はわずか0.003秒だった。仕掛けるタイミングを迷ってしまったという脇本は5位でレースを終えた。
優勝 JAI ANGSUTHASAWIT(タイ)
2位 新田祐大(日本競輪選手会福島支部)
3位 アジズル・ハスニ・アワン(マレーシア)
男女マディソン
東京オリンピックから正式種目に追加された男女のマディソン。2名1組が選手交代しながらポイントレース形式で行うレースで、交代時に手を繋いで加速させるタッグが見どころだ。男子には前日にオムニアムで金メダルを獲得した橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と今村駿介(中央大学)の組が出場した。
橋本・今村組は16回あるスプリントポイントの3回目と5回目こそ、各5ポイントを獲得するものの、着実にポイントを獲得していく香港と韓国との点差を広げられてしまい、最終のスプリントで倍付けのポイントを獲得するものの3位でゴール。金メダルは香港。銀メダルは韓国が獲得した。
男女マディソンでの日本チームのタッグ。交代したパートナーを加速させるスキルが重要な競技だ
男女マディソン表彰式。左より2位・韓国、優勝・香港、3位・日本
優勝 香港 59ポイント
2位 韓国 53ポイント
3位 日本 28ポイント
https://en.asiangames2018.id/sport/cycling-track/event/cycling-track-men-madison/phase/ctm020100/
女子マディソン
女子マディソンには、オムニアム金メダリストの梶原悠未(筑波大学)と橋本優弥(鹿屋体育大学)の組が出場した。この日まで戦ってきたことと、ワールドカップに向けたトレーニングで疲労が蓄積するなか、ポイントを伸ばすことができずに4位でレースを終えた。
女子マディソンには梶原・橋本組が出場、4位でメダルには届かなかった
優勝 韓国 76ポイント
2位 香港 61ポイント
3位 中国 31ポイント
4位 日本 14ポイント
女子スプリント
女子スプリント準決勝には前日に前田佳代乃(京都府自転車競技連盟)と日本選手どうしの1/8決勝から勝ち上がった太田りゆ(日本競輪選手会埼玉支部)が出場した。準決勝の相手は、ガールズケイリンへの出場経験もある香港のリケイシ。この対戦で太田はリケイシに2本先取され敗退した。
女子スプリントで今後の可能性を探って格上の相手に挑んだ太田りゆ
新田 祐大(日本競輪選手会福島支部)のコメント
出発直前に競輪での落車があったが、ジャカルタ入りしてからの調整期間で調子が向上して、チームスプリントでの自己ベストを出すことができた。これが最終日のケイリンに向けてモチベーションを高めてくれた。落ち着いて自分の力だけを発揮することだけを考えレースを決勝まで走ることができた。落車で出場を不安に思う部分があったが、ブノワコーチが自分が出たいなら出るべきだと話してくれて、その気持ちに応えようと思った。ここに来られなかった仲間たちの思いも強く感じていて、そういう意味でもメダルを持ち帰りたいという気持ちがあった。このレベルまで回復させてくれたスタッフにも感謝しているし、自分の自信にもつながった。
レースは残り2周くらいからは、誰かが先頭に立ってスピードがどんどん上がる展開になるだろうと予想していたが、そうはならなかった。自分のなかで残り1周前では自分の力を出したいと思っていたので勝負に出た。思っていた展開とは違ったが、そこからの立て直しという部分ではうまくいったと思う。ゴール前では抜かれてしまっていたのがわかっていたので、車輪をゴール線まで届けようと思ってハンドルを投げたが届かなかった。
今回の表彰台のメンバーは面白い部分があって、優勝したJAI選手(通称TJ)はオーストラリアにいて、タイに国籍変更した選手。3位のアウァンもすっとオーストラリアで練習していた選手で、僕もオーストラリアでトレーニングしていた。TJと一緒にトレーニングしたこともある。彼がアジアに入ってきたと聞いたときは、一緒に頑張りたいと思った。今回の優勝もタイとして初めてのものだと聞いた。悔しい思いはあるが、そういう仲間たちと表彰台に乗れたことはうれしかった。
脇本雄太(日本競輪選手会福井支部)のコメント
自分が仕掛けたところで迷いがでてしまった。それがすべてだったと思う。決勝進出を目指す2回戦は、多少失敗しても3着に入ればいいので思い切って走れた。決勝戦は、金メダルを目指していたので躊躇してしまった。
決勝5位の脇本は2回戦まで完璧な内容のレースをしたが、決勝で仕掛けるタイミングを誤った
ブノワ・ベトゥ(JCFトラック短距離ヘッドコーチ)のコメント
表彰台に日本人2人が立ってほしかったし、思いどおりではなかったが、今日のケイリンはいいレースだった。脇本はもっと早く仕掛けるべきだったし、やり方も改める必要があるが、完全にがっかりすることはない。新田がメダルを獲ってとてもいいレースを見せてくれた。
フィニシングラインでの差は僅差で、この経験を将来につなげていきたい。新田と一緒にメダルを獲得するのがはじめてで、徐々にいろいろな部分が良くなってきている。負けはしたが、すべてネガティブにとらえる必要はない。
私が好まないのは、自分のすべてを出し切らずに負けることで、それでは何も勉強にならない。今回は違って選手は優勝するために走った。これによって今後のプランニングも決めることができる。
3位のアウァンは1年前には世界チャンピオンで、スプリントも優勝していることから、レベルの高い表彰台だったと思う。1位のJAIも強くレベルの低いケイリンではなかった。
橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)のコメント
昨日のオムニアムの疲れが残っていたので、最終日のマディソンは勢いで走った。ここに来るまでマディソンに特化したトレーニングをしていなかったため、まずはメダルを目標にして走った。
銅メダルを獲得できて良かったが、上位2カ国とは大きな差があった。東京オリンピックに向けて、チームパシュート、オムニアム、マディソンとすべての種目への能力を高めていき、もし今後マディソンに集中するなら、ヨーロッパの六日間レースに出場することなども考えていきたい。
イアン・メルビン(JCFトラック中距離ヘッドコーチ)のコメント
できるだけいい組み合わせを考えて今村と橋本(英也)をマッチングした。結果的にこれまでワールドカップに向けてウエイトトレーニングを盛り込んでいたこともあり、今大会がベストではなかったが、2人とも頑張ってくれた。チーム全体として疲労が蓄積しているのは否めない。繰り返しにはなるがワールドカップに目標を向けている過程で仕方ない部分もある。
このトレーニングの影響は女子に強く出てしまっていて、梶原と橋本(優弥)には疲れがたまってしまっていた。しかし、それ以外にもスキル面やパートナーとの連携など改善すべき点がある。
このアジア大会を振り返って全体的に目標としていた部分すべてをクリアできたわけではないが、金メダルも獲れたし、選手がやるべきことをやってくれたことはうれしい。ベストな結果ではなかったが、ポジティブな部分や収穫があった。これまでやってきたトレーニングが2年後に向けて非常に重要な意味をもってくる。さらにワールドカップで結果につながればいいと思う。
太田りゆ(日本競輪選手会埼玉支部)のコメント
対戦したリケイシ選手はすごく格上でタイム自体も10秒5の相手。どうやったら勝てるかというより、どうやって今後の可能性を見いだしていくかということが重要だという話をコーチとしていた。強くても諦めずに戦う姿勢を見せるとか、リスクを背負うとか、そういうことを考えながら走った。
相手のリケイシ選手は経験も豊富で脚もあって、すべての面で負けていて、自分のやりたいことがいくつかあったが、何もさせてもらえないのを1本目で感じた。
相手が私のことを意識していないというのも走りながらわかっていた。そのなかでどう戦うか、1本目はただ失敗してしまった。2本目は私が前ということもあって、自分から仕掛けようというのが頭にあった。ダッシュをしているときの抜かれにくいライン取りなど、やろうと思っていたことができなかったところもある。スピードが違っていて、2コーナー過ぎの直線で抜かされるなんて久しぶりだった。
いろいろと世界のトップとの差を感じたというのが正直なところ。できないながらに勉強もしているし、考えているので、何もわからずやっていることではないというのが、自分のなかで変わっている点。終わったときに出てくる反省点を練習でやっていきたい。
リスクを取って難しい相手にどうにか勝てるようにしていきたい。ワールドカップでは、そういうことをしていかなければならない時期に入っている。
2018年8月31日(金) ※現地時間 自転車競技最終日
■リザルト
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写真と文:猪俣健一
関連URL:https://www.joc.or.jp/games/asia/
JCFホームページ http://jcf.or.jp
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。