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2017年11月06日

ロード日本代表・浅田監督が力説、TTの底上げはロードレースの好成績につながる!【みんなのタイムトライアルジャパン】

11月25日(土)に開幕する「みんなのタイムトライアルジャパン」。来年9月まで隔月で全6戦開催されるシリーズ戦で、年間ポイントによるランキングも争われる。


 

ロード日本代表監督の浅田顕さんは、ロードレースの競技力向上のためにはタイムトライアルの実力アップが不可欠と唱える。TTバイクも持ってないし、自分には関係ないやと思っている人でも、タイムトライアルの中に速くなるヒントが隠されているかもしれない。

 

日本と世界の差は、TTの実力

 

日本代表監督として世界中のレースを転戦し、各国のトップ選手を目の当たりにしてきた浅田さん。その中で、日本人選手の実力不足を感じるのは、集団から抜け出すための独走力で、それこそタイムトライアル(TT)の力と同じものだという。浅田監督が指導するこれからの若い世代にとって、TT力の底上げこそ、ロードレースの好成績につながるというのだ。

浅田監督:世界のレースを見てつくづく感じることは、日本人のパワー不足。ここでいうパワーとは、一定の距離や時間で速度を維持する能力です。日本は世界のトップ選手と比べてまだまだ低いと感じています。具体的には、日本人は器用で他の選手のアタックについていく能力は高い。しかし、集団からアタックして引き離していくことに関しては、力不足が浮き彫りになります。
TTはまさにその独走力がものをいう種目。世界選手権のTTでもエリート世代の世界トップと日本のトップでは大きな差がある。この体力差を埋めていかなければ、いつまで経っても日本は世界に近づけないでしょう。

しかし、日本ではTTの練習環境も競技環境もまだ十分ではない。

浅田監督:日本の交通事情では止まらないで走る(練習する)のは難しいので、苦手種目になっているかもしれないです。まだ国内ではTTの大会は少ないし、あったとしても平坦の簡単なコースが多い。
一方、世界のTTは年々コースが複雑化しています。極端な例ですが、今年のノルウェーでの世界選手権はヒルクライムでのゴールでした。アップダウンやコーナーのあるコースで、コース取り、ペース配分などテクニカルなのが世界のTTの主流になりつつあります。

「国内でもTTを練習試合のように定期的に実戦でできることが必要」と、新たに始まる「みんなのタイムトライアルジャパン」への浅田さんの期待も大きい。

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なかなか公道ではできないノンストップの独走をTTなら楽しめる

 

TTに必要な筋持久力を鍛える

 

では、TTが速い選手というのはどのような部分が優れているのか。浅田さんはとくに筋肉の持久力が必要だという。

浅田監督:日本人は心肺の持久力がないわけではない。他のスポーツ、例えばマラソンは今は低迷しているけど一時期は世界のトップレベルにありました。しかし、TTを速く走るには心肺機能だけでなく、大きな力を長続きさせる筋持久力が必要。陸上の長距離選手のように細い人がタッタッタッと走るのではなく、重いペダルを長時間グイグイ回す力が筋持久力です。

そのためには、筋肉の絶対的な量も必要だ。

浅田監督:TTが得意な選手は体重が多い。一見スプリンターにも見えるぐらいの体格をしていますが、その筋肉は持久力も備えています。今の世界のTTのトップレベルは平均50㎞/h。普通の人ならスプリントでもなかなか出ない出力です。その高い出力をつねに出し続けるには、大きな筋肉が必要なんです。
子どものころからマラソンが得意といった持久力の高い人は、もちろんTTで有利ですが、筋持久力は後からつけることもできます。筋肉をつけて粘り強くし、筋肉をつけてまたさらに粘り強くするの繰り返し。根気が必要ですが、確実に筋持久力は上がっていきます。

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正しいトレーニングを継続すれば必ずTTのタイムは向上していくと浅田監督

 

自転車でのトレーニングが基本

 

トレーニング次第で、TTの実力、つまり筋持久力は上がるという浅田さんだが、それではどのようなトレーニングが必要なのか。まずは自転車で走るトレーニングの中で能力を上げていくのが基本だという。

浅田監督:ある程度連続で走れる場所を見つけて、20分でどれだけの距離を走れるか、または20分ぐらいで走れるコースでどれくらいのタイムで走れるかを何度も練習することで、筋持久力を上げていきます。最近はパワーメーターを持っている人も多いので、20分でどれだけ高い出力で走れるかを見ることも方法のひとつです。もちろん5分、10分で終わるTTもあるので、それに合わせた練習をする場合もありますね。
その次に重要なのは、ペダリングの技術と空気抵抗。無駄なく最後まで長持ちする身体の使い方ですね。筋持久力、ペダリング、空気抵抗といった三つの大きな要素をつねにに意識して、練習してほしいです。

筋肉アップのためには、ウェイトトレーニングも役に立つという。

浅田監督:必要な筋肉は太もも、おしりなど下半身すべて。同じように腹筋、背筋といった胴回りの筋肉も重要です。しかし、ウェイトをやって身体のバランスを崩して遅くなった選手もたくさん見てきました。年齢やタイプによって勧められる選手とそうでない選手がいるので、自転車でのトレーニングとうまく併用しながら、見極めが必要ですね。

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ロードレースよりもトレーニング成果が成績に直に反映される

 

まずはロードバイクで自分の限界に挑戦

 

「みんなのタイムトライアルジャパン」には、TTバイクだけでなく、ロードバイク、クロスバイクなどあらゆる車種で参加できる。これからTTを始めようとする人には、ロードバイクで自分の限界を極めてほしいと、浅田さんは語る。

浅田監督:TTバイクは力を出し続けるための適正なポジションを出す、空気抵抗の低減などのメリットがあります。しかし、最初はノーマルバイクで巡航できる能力を上げることが必要です。ビギナーとしてはノーマルバイクでどこまでスピードを上げられるか頑張って、タイムが縮みにくくなったらTTバイクでさらにタイムを削ぎ落していった方がいいでしょう。

レース前の準備も怠ってはいけない。

浅田監督:スタート前には十分ウォームアップしましょう。10kmのレースなら、1時間ぐらいウォームアップした方が結果もいいと思います。冬場は心臓への負担も大きいので、長い時間しっかり準備した方がいいですね。

「みんなのタイムトライアルジャパン」には、U-18カテゴリーも設定されている。この中から世界と戦える若者が出てくることが、浅田さんが最も期待していることだ。

浅田監督:距離10kmで45㎞/h、ノーマルバイクでも43~44㎞/hを出せたら、有望だと思いますよ。ホビーレサーのみなさんも目標設定をして取り組み続けるとタイムトライアル種目の面白さ、奥深さが分かると思います。

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スタート前やレース後ぜひ参加者同士の交流も楽しんでほしい

 


みんなのタイムトライアルジャパン

タイムトライアルジャパンがシリーズ戦として復活! 隔月で全6戦開催し、年間ポイントランキングを設定。第1戦(11月25日)、第2戦(1月27日)は千葉県の下総フレンドリーパークで開催される。使用バイクや距離の違いでクラシックTT(TTバイク使用可)とセミクラシックTT(TTバイク使用不可)の2カテゴリーがある。18歳以下は参加料2000円と気軽に参加できるのもポイント。

第1戦のエントリーはこちら
https://moshicom.com/10960/

第2線のエントリーはこちら
https://moshicom.com/12084/

 

浅田顕 Akira Asada

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1967年生まれ。90年代にプロ選手として全日本プロ選手権優勝など活躍。引退後はブリヂストンアンカー、エキップアサダで監督を務め、別府史之、新城幸也ら名選手を育て上げた。現在はロード日本代表監督として五輪、世界選手権をはじめ、国内外のレースで指揮を執る。シクリズムジャポン代表。

 

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