2016年10月13日
別府史之 密着レポート「忙しい1日」前編
世界各国飛び回り、どこに居たとしても多忙であろう日本人プロツアーライダー別府史之。特に帰国といったら……。
【フミ、関空に降り立つ】
9月某日、関西空港に降り立ったフミこと別府史之。レースの合間を縫っての帰国となったが、約2週間の滞在でフリーになるのは2日という過密スケジュールでとのこと。ちょうど帰国当日に取材の約束をとりつけ(彼の貴重な時間を奪う一役を担ってしまった。スマン!)、密着取材をすることになった。筆者はフミがプロ入りする前からインタビューを録らせてもらっている(もっとインタビューを録っているライターさんはいらっしゃると思いますが)。移籍の年や、なにかと節々で定期的にコメントをもらっていたが、ここ1年ほどはしっかりと話す機会を失ってしまい、久しぶりの機会であった。そんなわけでフミのインサイドレポートをお届けします。
まずは彼のエキストリームな日本での1日をお届けしよう。
◆10:00 トレック・ジャパン本社にてミーティングとバイクセッティング。
08:30日本到着。関西空港からフミはそのまま神戸のトレック・ジャパン本社へ。国内でライドイベントに参加するためのバイクにハンドルとクランクを移植する。マドン専用ハンドルは選手に先行して与えられているスペシャルデザインで、フミはアナトミック型を使う。
「フミってブレーキは右と左、どっちが前なの?」
フミ:「右ですよ」
「えっそうなの? ヨーロッパでレースしてて平気なの?」
フミ:「ぜんぜん問題ないですよ。問題といえば、他の選手の代車を乗ったときと、貸したときくらいかな」
◆12:00 昼食….は帰国後にやりたいことはふたつ、ひとつはお寿司屋さんに行くこと。もうひとつは散髪だという。
この表情はなかなか見られないですね(笑)。お品書きから真剣に選ぶ。
「回ってる系でいいの?」
トレック・ジャパン野口さん:「ここは思った以上にうまいんですよ!! 」
フミ:「フランスにもお寿司屋さんはあるけど、日本人が握ってくれるようなところは近所にはなくて。行ってみたらすし飯じゃなかったりして……」
ヨーロッパだからこその悩みか。※とってもおいしいお寿司屋さんでした!
散髪とは?
フミ:「散髪できるところが本当にないんですよ!」
「そんなことないでしょう」
フミ:「もちろん床屋さんはあるけど、アジア人の髪をちゃんとカットできるところがないんですよね」
「髪質で? ハサミとか違うのかなあ」
フミ:「切り方が違うんだと思うんですよね。アンバランスな髪型になるし、なんか変なんですよね。2回くらい切ったけど朝起きるとなんだこれみたいな」
「ちょくちょく帰ってこれないし、大変…….」
フミ:「そう、だから今回はチャンスだと思って!」
◆13:35 移動中 移動車内ではたまにマジメな会話をします。
「なぜあれほど落車が多いのか」
フミ:「集団内にリスペクトがない。ここで割り込むのかっていうことをする若手選手が多いですね。あとはテクニックが足りない選手も多いし…….」
今、国内のレースでも落車についていろいろな議論が飛び交っている。それとは違うかもしれないけど、プロでもそうなんだと感じた。
◆13:45 トレックストア 神戸須磨店へ
トレックストアの中でも古い歴史をもっている神戸須磨店へ。フミはトークショーなどで何度か足を運んだことがある。
ショップスタッフ、常連客に歓迎を受ける。直筆のサインもしっかり残していきます。
◆14:50 トレックストア神戸六甲を訪問。
ショッピングモール内にあるトレックストアだ。お店はスタジオのように天井が広い。そして上からも下からもフミの声が聞こえる。
ショップからの帰りがけ、ばったり行き会った常連さんと。さっき買ったばかりのiPhone7でフミと撮影。初めて撮影したのがこの写真って、幸せ者。
◆15:39 某コンビニでちょっとブレイク
フミをコンビニで見かけるなんて。
「入ったことある?」
フミ:「あるに決まってるじゃないですか!」
18歳からフランスに行っている人だと思って侮っていた。
朝からハードスケジュールで分単位の移動スケジュール。残念だけどここではセガフレードザネッティのコーヒーは手に入らなかった。
◆16:30 トレックストア 大阪店訪問
大阪駅からもほど近い場所にあるトレックストア。ここまで大幅に時間を押してしまっていて、滞在時間はわずかになってしまったけど、ショップスタッフやお客さんとの会話を楽しむ。ほとんどサプライズ登場だったので、お客さんもびっくり。
◆18:00 ハル君との再会。シャイン・オン! キッズが繋げた出会いだ。フミの大ファンというハル君、今日はフミからもらったビーズを身に付けて。
フミがアンバサダーを務めるシャイン・オン!キッズ。そこで巡り会ったハル君と再会した。昨年、優勝したジャパンカップで身に付けていたビーズ・オブ・カレッジ®を直接渡したい、というフミが病院で手渡してから約10カ月。小児がんを患っていたハル君は、現在とても元気になりロードバイクでのライドもこなせるようになった。そんな知らせはフミが走る原動力にもなるし、逆にフミの活動が彼の力になったかもしれない。ハル君がずっとフミを見つめている姿から目を離せなかった。
◆19:00 トレックコンセプトストア バイシクルカラー東大阪店 オープニングパーティ、ゲスト参加
本日最後の訪問地である、バイシクルカラー東大阪店のオープニングパーティへ。
◆21:00 エスキーナで最後のお務め
タベルナ・エスキーナでインタビュー。やっぱり伊達じゃないなー、と感心しました(体力的にも)。
写真のピンがこないから動かないでって言ったんですが。
動いちゃダメだよってあれだけ言ったのに。
エスキーナの洗面所の壁にはサイクリストのサインがびっしり。もちろんフミのサインもあるのだけれど……。誰かさんのサインはとても目立つところにありましたが、
フミはマットの下の足元に。
「なぜここにしたの?」
フミ:「みんなが踏んでくれるじゃないですか」
“フミ”ってことなのかな。すこしばかり酔っていたかも。
そして業界の重鎮にもばったりお会いしまして。ミラクルな感じの濃い1日なのでした。
帰路についた(ホテルへ)午前零時を回っておりました。ジェットラグもなんのその。フミ、タフすぎる。
気力というか、そういったものを感じました。
タベルナ・エスキーナで収録したトークは【後編】でアップします。乞うご期待。
(取材協力/トレック・ジャパン 写真/編集部)
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得