2019年02月25日
2019年 ハンドメイドバイシクル展 VOL.1
例年、1月に科学技術館で開催されてきたハンドメイドバイシクル展。今年は場所を東京流通センターに場所を移し、2月23〜24日に開催された。出展者は年々増加し52社、国内のカスタムフレームビルダーを中心に、イタリアンブランドのビクシスを率いるドリアーノ・デローザも来日して話題を集めた。
国内フレームビルダーが技を競いあう祭典
高価な素材や風洞実験室といった最先端のテクノロジーを駆使して作られるレーシングバイクと共に、自転車好きが憧れるのがハンドメイドフレームだ。職人が客のために1本ずつ作る匠の世界は、いつの時代も普遍的な魅力に満ちている。かつてはオーダーフレームを経験しないとマニアの世界では半人前であり、少々敷居が高いのも事実だ。
しかし、それでもオーダーフレームの世界がなくならず、むしろ近年は若手のフレームビルダーが増えて勢いを増してきている。
オーダーメイドフレームの魅力は、どんなに言葉を尽くしても経験してみないと分からない。何十台とメーカー車を買い連ねても、フレームビルダーと築いていく自転車創りの楽しさには、到底かなわない。とはいえ、ハンドメイドのフレームを目にする機会は多くない。そんなオーダーフレームの世界を簡単に覗いてみることが出来るのが、ハンドメイドバイシクル展の魅力である。
オーダーするかしないかは別として、まずはどんなビルダーなのか話をするだけでも貴重な経験になる。というわけで、出展者のみならず、来場者も増え続けている。
CHERBIM / ケルビム
日本のフレームビルダーの実力を海外に発信し続けているのケルビム。北米ハンドメイドバイシクルショー(NAHBS)で大賞を獲得した直後は華美だったりギミックを多用するフレームが多く、どことなく力みが見られたが、そうした力が抜けて洗練されてきた。
“Sticky Stainless”はコロンブスのステンレスチューブHCRをメインに、アメリカのKVA社製の1インチダウンチューブが目を引く。通常、クロモリ製の細身ダウンチューブだと加速時にウイップが発生したり、ダウンヒルでハンドリグが不安定になることもあるが、そこを逆手にとって、ステンレスのR張力の高さを感じるのだという。
日泉ケーブル社製のケーブル類はフレームのメインカラーと相性のいいピンクを差し色につかいつつ、ブレーキ本体にもレーザー刻印でブランドロゴが入る。
ブレーキにはロゴがレーザー刻印されている
集合ステー型のシートラグ。かつては各ブランドがオリジナルのラグを用意していたが、最近ではすっかり珍しい存在になった
チーフフレームビルダーの今野真一さん。
手に持つのは前原光榮商店×
公式HP:ケルビム/今野製作所
山音製輪所
東叡社で修行を積んだ尾坂允が主宰する山音製輪所。懐古趣味ではなく、上質で立ち姿の美しいツーリング車は若手ビルダーの中で出色の出来である。フレームだけでなくバッグやリフレクター、ライトなども手掛ける。
レース用ホイールやカンパニョーロのエルゴパワーなど現在のパーツを巧みに取り入れており、伝統的なツーリング車の美的センスを取り入れつつ“床の間自転車”になっていない。
EQUILIBRIUM/エクイリブリウム
大瀧製作所の大瀧政美さんに師事したウラジミール・バラホブスキーさんが手掛けるエクイリブリウム・サイクルワークス。競輪用のフレームを作るNJSビルダーの元で学ぶことで高い精度のフレーム作りを信条としている。
流行りのオールロードバイク“Brutalist “はクロモリチューブを低温で溶接し、エイジングされたような錆塗装が施されている。フレームはコンポにスラム・レッドeTapを使うことを前提に設計されており、シフト用のアウター受けなどが省かれている。
“ワビサビ”ペイントと名づけられた塗装はクックペイントワークスによるもの
大きさを感じさせないリアエンド
BiXXIS/ビクシス
イタリアの名工、ウーゴ・デローザの血を引くドリアーノ・デローザが手掛けるビクシス。トークショーにも多くの人が集まり、今回のショーに華を添えた。
公式HP:BiXXIS(ビクシス)
QUARK/クォーク
走るフレームビルダーとして名を馳せた細山正一さんが作るクォーク。手頃な価格でオーダーできることでも古くから定評が高い。このバイクはロングライド用モデル。
色遣いやラグワークなど、ベテランの技が冴える。
公式HP:QUARK
オオマエジムショ
ジャーナリストであり、ツーリング車の数寄者として名高い大前仁さん。ジャパンバイクテクニークに出場するため、ついに自らトーチを手にした。
梶原製作所から治具を、マツダ自転車工場からプロパンを借りて作ったというフレーム。
公式HP:オオマエジムショ
つづく
写真:編集部
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。