2017年10月26日
【第9回グランフォンド八ヶ岳】気持ち良い秋晴れに包まれた八ヶ岳南麓の2日間
八ヶ岳ブルー、まさにそう呼ぶのにぴったりな秋晴れ……というより日中はむしろ暑いくらいの10月1日。そうグランフォンド八ヶ岳だ。9回目を数える日本におけるグランフォンド(ロングライド)の草分け的存在の当イベントは、今回コースを大幅にバージョンアップして実施された。北杜市を舞台とするコースレイアウトは、これまでのコース(107km)に加え、南西の白州・武川地域を巡るおよそ18kmコースを延長。これが加わることで北杜市全8地区を網羅するコースへ生まれ変わった。これまでの獲得標高は約1700mだったが、さらに500m追加され125kmでトータル約2200m上るコースへとなった。
この白州・武川地区が加わったことで、八ヶ岳全景を見渡せる広々とした風景や、渓流のせせらぎも楽しめるようになり、これまでの風光明媚な山岳の景色に華を添える。エイドステーションも増えたことで、食も充実。エイドステーションで話しかけた女性サイクリストは「これだけ走っているのに体重が増えちゃうよ(笑)」と笑顔で話す。とはいえ、このサイクリストが話すように、コース自体の標高差は正直厳しい。しっかりと食べて脚を回さないとゴールまでたどり着くための力をキープできない。
筆者も新しい区間を加えた新コースをフルで走ったことはないので、大会当日は実際に走ってみた。
早朝はさすが1300mの高地だけあってとても冷える! ウエアのチョイスがとても難しい1日だった。
スタートセレモニーでは大会実行委員長の浅川力三氏をはじめ、グランフォンド八ヶ岳を支える参加者にエールを送る
スタートの早朝は流石に冷えて、小渕沢までの下りはレッグウォーマーがあって助かった。上は厚手のアームカバーに、ウインドブレーカー。冷たく乾いた風で、日陰はとても寒い。
下りきってからは適度なアップダウンを走りながら新コースへ向かう。ダイナミックなループ橋をすぎると、新設のウォーターステーションがある。コーヒーが振る舞われ、ホッと一息。飲料水を提供してくれたサントリー天然水の南アルプス白州工場や、アイスクリームを提供してくれたシャトレーゼの白州工場などがコース脇にそびえ、地域の環境の良さを再確認できる。
武川までは、下りで冷えた身体を太陽が暖かくほぐしてくれる。田園が広がる箇所では八ヶ岳が綺麗に映し出される。下り基調なので停車するタイミングが掴めない……。次があるさ、とコマを先に進めるが、気持ちの良い下り基調の道は続いていく。
新設の第2エイドステーションでは、シャトレーゼのアイスクリームと、武川米で炊いた「にぎら〜ず」が振る舞われる。ちょうど50kmほど走っているので、ここでこの補給食はうれしい。
そして第3エイドステーションの長坂を通過すると、いよいよ上りだ。第4エイドステーションの高根体育館へ20kmかけて上る。ここから須玉まで下りきって、長い上りをこなすと第5エイドの明野のエイドステーションだ。
そこそこよいペースで走っているが、エイドステーションでどうしても滞留してしまう。すると、コース上でさっき抜かしたサイクリストに、また先行されていて、また抜かす……ということがしばらく続き、なんとなく親近感を覚えたりする。コース幅の狭い箇所もあり、声をかけながら走る。
第6エイドステーションの美味しい学校を過ぎると、いよいよ最大の難関である海岸寺の上りだ。毎年思うが、ここの辛さはなぜか忘れてしまう……。
やはり勾配のきつい上りで苦しめられるが、今回お借りしたピナレロ・GAN RSの走りには助けられた。 ドグマF10というフラッグシップがあるけど、レーシングバイクとしてラインナップしているミドルクラスGANの長兄。なかなか切れの鋭いバイクで、上りは軽快。不安なところがなく下りでも安心して身を任せられる。それもそのはず、ミドルクラスといってもT900 3Kの高強度カーボンをメインフレームに使っているので、ミドルらしくないミドルといえる。
シマノ・アルテグラの完成車仕様で出走。コンパクトドライブにだいぶ助けられた。価格は52万円(税抜)ナリ
ヒーコラ、と海岸寺を抜けると再びウォーターステーションが。海岸寺のピークを超えてすぐに休息できる。ここは身体が冷える前にそそくさと出発だ。しばらくつづくアップダウンをこなし黄昏ていると、JA梨北・清里出張所エイドステーションへ到着。ここでは手作りの花豆の甘露煮がいただける。濃厚な風味がたまらなく美味しい。
正午すぎ、13時も軽く回っている。そうなると日が差していてもすこし肌寒い。汗をかいて湿ったウエアは換えが効かない。日陰に入るとブブルと寒い。ここまでくるとゴールは見ているが、延々と続く上りが果てしない。スピードメーターを何度も見るが、数100mしか進んでいない……。気持ちが切れかけるギリギリのタイミングで最後のエイド、丘の公園にたどり着く。ここで食べることができるソフトクリームの濃厚なこと。ミルクのコクと、心地よい甘さは最高の労いだ。
いよいよ帰ってきた。最後の上りをこなして清里の森へ入ると、ステージレースのクイーンステージよろしく上りゴールとなる(スタート時に気がついていましたが)。このフィニッシュラインを通過するときに味わえる達成感は2200mの上りに打ち勝ったというまさしくそれ。
会場では最後のおもてなしが。ゴール後にいただける豚汁とおにぎりがこれまたウマイこと。身体から抜けきった塩分とミネラルをここぞとばかり吸収せんと、本能的に欲する味だ。これもまたチャレンジングなライドをこなしたからこそ、堪能できるというもの。
共に走った仲間との会話も弾む。この開放感がライド後の醍醐味といえる。
グランフォンド八ヶ岳で得られるのは素晴らしい自然とのふれあい、それに挑戦すること、達成する喜び、地元のウマイモノと歓迎、仲間とのコミュニケーション。枚挙にいとまがないけれど、つまりは楽しいってこと。
次回は10回目の記念大会となる。
皆様をおもてなしする準備はすでに始まっている。八ヶ岳で来年も走りましょうね。
大会アドバイザーの今中大介さんのコメント
「満足感がより得られるコースになりましたね。南アルプスの懐に入るような感じに武川あたりを走るというのは新鮮で面白かった。後半も絶景が広がっている……はずだけどちょっと曇ってしまったのが残念。このイベントってやりきらなきゃいけないっていう自分への課題がたくさん作れるよね。チャレンジだったり、いい意味でみなさんの張り合いになっている。グループで走っているの方々も見受けられるし、いい雰囲気。このようなヨーロッパの雰囲気に似た場所はほかにあまりないので、関東圏では珍しい存在ですよね。大自然を楽しめるグランフォンド八ヶ岳をもっと盛り上げていきたいですね」
制限時間いっぱいでゴールに到着した今中さん。多くの参加者のみなさんに励ましの声をかけてくださいました。
大会前日はウェルカムパーティとエキスポで大満足
会場となった清里の森ではピナレロブースを中心に、多くのブースが並んだ
旧知の仲、今中大介さんと、イタリアから来日した、ピナレロ社のルチアーノ・フサ・ポリさん
グランフォンドの楽しみ方について、ルチアーノさん、サイクルスポーツ誌の滝沢佳奈子さん、ピナクラブより星野知大さん、ピナレロジャパンの藤井知章さんらのトークショー
エリートブースでは、チーム対抗タイムアタックが繰り広げられる。ここだけ熱気が違う!
今中さん、地元のプロトライアスリート、栗原正明さんによるコース紹介は多くの皆様が、聞き入っておりました
三船雅彦さんのトークショー「完走するためのヒント」からは目からウロコのお話がたくさん
写真:海上浩幸
みなさん、バッグの中身はなんですか?
続々とフィニッシュする参加者の皆さんをお出迎えしたのですが、デイパックやサドルバッグを装着している方がたくさん! 100km前後のライドで、多くのに荷物って必要カナ……、と筆者なりに疑問に。そこでバッグの中身、なにが入っているか聞いてみました。
20代男性◆ひときわ目を引いたのはこのdポイントカードでおなじみのマスコット。とても目立っていましたよ!
「このぬいぐるみは前日にゲームで獲ったんです。おふざけでバッグに入れて走ったら面白いかなあって。でも結構重くて後悔しました(笑)。ほかにはレインウエアを入れています」
30代女性◆ラファのジャージに身を包んだ女性二人組。大型のSaddle bagの中にはなにが入っているのでしょうか。
「補給食を入れていきました。ほかには空気入れ、手袋や日焼け止め……。ウインドブレーカーは重宝しましたね。このサドルバッグはとても使いやすいですよ!」
40代男性◆グループで走っていたみなさんのうち、ひときわ大きなデイパックの男性にお話を伺いました。
「心配性なのでいろいろな物を入れていきました(笑)。チームメートから預かったジャージ。朝寒かったので長袖のジャージ。レインウエア、いろいろなところで写真をとったりTwitterにあげたりするのでスマートフォン用のバッテリー、空気入れ、帽子、工具関係ですね。あとは食べちゃいましたけど、補給食をたくさん持っていきましたね。私は大食いなのでエイドだけでは足りないんです(笑)」
写真:編集部
関連URL:http://gf-yatsugatake.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得