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2022年10月10日

第11回グランフォンドピナレロ八ヶ岳 with Gravel Supported by Palatinose 高岡亮寛さんの初開催グラベルフォンドレポート 

2022年10月2日に開催したグランフォンドピナレロ八ヶ岳 with Gravel Supported by Palatinoseでは、大会史上初めてのグラベル(未舗装路)区間を含むグラベルフォンドを開催しました。
欧米を中心に人気を集めるグラベルバイク(=オールバイク)ですが、日本国内でもようやく認識が高まり始めた程度です。同時に色々な地域でグラベルイベントも立ち上がり始めましたが、グランフォンドとしての“グラベル”はどんな楽しみ方があるのでしょうか。
海外で開催されたグラベルレースの出場経験が豊富なサイクリスト・高岡亮寛さんに今回のグラベルフォンドについてレポートを執筆していただきました。

■グランフォンドとは?

UCIのサイトによると、Gran Fondo (which translates as Big Race) is a long-distance mass participation event that celebrates competitive cycling for everyone, not just the professionals.
と記されている。簡単にいうとアマチュアの為の長距離ロードレース。
1970年代イタリアが発祥の地で、通常120〜200kmで2000〜4000mくらい上る、「長くてキツイ」が定番。
イタリアのそういうレースなので、必然的に景色は良い。
ただ日本各地で開催されている『グランフォンド』はちょっと違う解釈で普及しているように感じる。
私は今回初参加なので漠然としたイメージしかなかったが、とりあえず自転車をライフワークとしている以上体験せずに語るわけにはいかない。
10月2日、けっこうな人気イベントらしい”グランフォンド”を体験しに八ヶ岳へやってきた。

■コース

今回私はグラベル区間3箇所を含む117km、獲得標高2600mというグラベルフォンドに参加。何を隠そう、翌週10月9日にはUCIグラベル世界選手権に参加することになったのでその最終調整の意味合いもあり。

グラベルフォンドコース図

■イベントレポート

7時過ぎにいくつかのグループに分かれてスタート。グラベルバイクとは、簡単に言うとロードバイクより安定性高く太いタイヤでワイドなギア比で走破性を高めたモノ。まだまだ日本では販売台数多くないけど、毎年増えてきている。

とは言えこのようにスタート前にグラベルバイクがズラッと並ぶと壮観。世界的には爆発的に大きくなっている市場。日本でも今後ドンドン増えていくだろう。

スタート直後に少し上ってからは気持ち良い高原のダウンヒル。18kmくらいから最初のグラベル区間セクター1が開始する。グラベルの上りは太いタイヤと1.0近いギア比のローギアが最大限に活きる。

上り終えると沢を渡る。今回ロードペダル&シューズな私には一番の難所。滑って転げないように慎重に渡る。

そこからの下り基調は馬が通る道らしい。ラインが何本かあって、下は草が多く路面見えにくいが大きな石が数多く転がっており、集中してラインを見定めて下る。かなり路面のギャップも大きく身体全体をサスペンションにしながら走る。

グラベルコース、と聞くとせっかくグラベルバイクで行くんだからグラベル比率が高い方が良いといつも考える。しかしこういうグラベル区間を抜けて舗装路に出るとホッとする。
たぶん集中力とか怪我のリスクとか体力を考えると、適度な比率のグラベル区間がたまに登場するくらいがコースとしてバランスが良いのだろう。今回グラベル区間は総距離の117kmのうち10%程度だったけど、それでもじゅうぶん楽しめた。

距離的にも時間的にも一番長かった(約24km)スタート〜第1AS(エイドステーション)をクリアして補給。タイムや順位を競わないイベントだとのんびり出来て良いなぁと実感。15分ほど休憩。
そこから46km地点までは下り&平坦。快調に進んであっという間にAS2。山梨と言えばシャトレーゼ。のチョコアイスを頂く。ここではちょっとゆっくり、トイレに行ったりクリート調整したりで30分近くも滞在。

そこから15km近くは上り基調。といっても長区間ダラダラ上る感じなので、キツイ上りという印象はない。途中のAS3は5分ほどで補給食食べてすぐに出る。
60kmを過ぎて下りに入った辺りでAS4。ここでまた15分以上休憩。ヤマケンとカンパニョーロジャパンの秋山悟郎さんと会ったのでそこから一緒に走ることに。
ロードバイクのヤマケンとJPTレーサーかつC1レーサーというエリートレーサーのゴローちゃんと合流したのをきっかけに、のんびりサイクリングからちょい速サイクリングに変わる。今回グラベルキングのタイヤ幅43cに2.2bar前後の空気圧で走ったが、舗装路でも競争したりロードバイクと対等に先頭を牽こうとしなければ、ロード練習についていくくらいは普通にできる。

AS5までの長〜い登坂でスイッチが入ってしまい、3.5kmの登坂を12分くらいグイグイ踏んで上る。
一旦上り終えてのAS5では9分ほど休んで、グラベルセクター2へ。ここは山を上っていくジープロード。トラクションとライン取りとギア比を考えながら上る。2km10分ほどのグラベルだった。
グラベルを抜けても林道の気持ち良い上りは続き、それ以降フィニッシュまではひたすら山道を上るか下るか。かなり急勾配が続く箇所もあり、RX&CO(RXBIKEのクラブ)のみんなにとってココは正念場になるだろうな、なんて想像しながら淡々と走る。
AS6の休憩は10分ほどで、また延々と上る。最後のグラベルセクター3は気持ち良いけど距離は長くない。そしてまた上りは続く。
AS7で食べたソフトクリームの味が忘れられないくらい濃厚で美味しかった。街道沿いにソフトクリームの看板は多くあるが、高原の空気と景色に騙されて都内で食べるのと同じ味にありがたがってお金払う事も多々あるだろう。前日にそんな経験をしたけど、ここでのソフトクリームは間違いなく別物だった。

最後のAS7からは3kmほど上ってフィニッシュ。走行時間5時間、スタートしてから6時間40分で帰ってきた。

■感想

今回の参加により
-チャレンジングかつ風光明媚なコースを走る。
-エイドステーションでの補給を楽しみに区間ごとに頑張れる。
-余裕のある制限時間により幅広い層が挑戦できる。

というのがグランフォンドの醍醐味であると理解・咀嚼できた。
コースが十分キツイため、レース志向の人が参加しても、要所要所の難関ポイントを集中して走れば良い練習にもなる。
しかし制限時間が余裕あるので、比較的初心者でも完走を目標に頑張って楽しめる。
何よりも一番印象的だったのは、RX&COの仲間が当イベントにエントリーしてその対策のために週末に山岳コースで本番をイメージしながらトレーニングをし、皆でグランフォンドを目標時間内で走破出来たという点。
そして前日にそういう仲間たちと一緒にペンションでお酒を飲みながら夕飯を食べる時間もとても楽しかった。(”レース”イベント前夜はそういう楽しみをできない)

自分はどうしても競技志向でレースを目標にした活動がメインになるが、自転車乗り全般的にはそうではない層の方が圧倒的に多く、そういう方々が各々のペースで楽しめるこのようなイベントの存在意義は大きい。

こうした素晴らしいイベントがきっかけになってサイクリング愛好者が増えてくれればと願う。

筆者:高岡亮寛
写真:高岡亮寛、小野口健太(扉)

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