2018年08月23日
【TREK】NEWマドンSLR チェック&インプレッション
トレック2019年話題のNEWモデル、マドンSLRを試乗する機会を得た。
ディテールのレポートとともに、インプレッションをお届けしよう。
IMPRESSION
NEW マドンSLR9ディスク
マドンSLRのディスクブレーキ化によって、マドン、エモンダ、ドマーネのロードバイク3シリーズすべてがディスクブレーキ化を果たした。そしてこのほとんどのケーブルをフレームに内蔵したことでシンプルなエアロダイナミクスの造形美を極めた。
ペダルを踏み込むと軽やかにバイクが進む。さらに踏み込むとやや溜めがあるもののスピードがグイッと伸びる。そのままスプリントのようにペダルをプッシュすると、素晴らしい加速感を楽しめる。アッセンブルしているホイール性能もさることながら、踏めば踏んだだけスピードが伸びていく。第6世代のマドンSLRは、紛れもなく前作以上のパフォーマンスを秘めている。
Isoスピードの初期設定はスライダーが最前部(しなり量が最大になる)に配置してあった。改良したIsoスピードによって、もちろん快適性もさらに洗練した乗り心地となりシッティング時の腰の落ち着きもよい。快適性を高めるとどうしてもパワーロスに繋がってしまうイメージがあるが、ウイップさせるポイントをシートマスト部分に限定したことで、よってペダリングに影響がないように感じる。まさに柔と剛をさらに極めたイメージだ。そしてIsoスピードをもっともしなり量の少ない最後部に移動すると、フラットなアスファルトの上では気がつかないが、路面のこぶのような段差では顕著で、前後方向へのしなりが抑えられているのがわかる。レーシングバイクだからこそ欲しいコンフォート性能、路面はつねにフラットではなく、振動減衰特性が高いとこれほどまでに楽で速いのか、と改めて感じさせる。エッジの効いたフレーム形状だが、実は優しいというギャップも楽しめた。
そして前作のメカメカしいスタイルも魅力的だったが、フレーム構成をシンプル化している点はユーザーにとっては扱いやすく、よい改善点だろう。
ディスクブレーキを用いたことで、ブレーキシステム周りが大きく改善された。他メーカーも同じだが、ディスクブレーキを用いることでフレーム設計の自由度が増したことで、メーカーのアイデンティティがより色濃く出せるようになった。このマドンSLRもしかりで、エンジニアの想いを具現化した結果がにじみ出ている。
重量にかんしては7.65kg(公称重量:サイズ56cm)と、ペダルやサイクルコンピュータを付ければ7kg後半の重さとなる。この重さがハンディとなるかといえば、まったくそんなことは感じさせなかった。重量よりも、振動吸収性や剛性感のインパクトが強く、軽さのメリットを補い余るといっても過言ではない。
ここ数年、目覚ましい開発競争が行われてきた。バイクのパフォーマンスはそろそろ頭打ちではないかと感じていたが、それを払拭するパフォーマンスだろう。もちろん第5世代があったからこそ、このパフォーマンスが第6世代マドンSLRへ受け継がれている。マドンに歴史あり、だ。
価格(税抜)
マドンSLR9ディスク(プロジェクトワン ナウ)/ 1,139,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR9ディスクeTap(プロジェクトワン ナウ)/ 1,180,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR9(プロジェクトワン ナウ)/ 1,099,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR8ディスク(プロジェクトワン ナウ)/ 860,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR8(プロジェクトワン ナウ)/ 764,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR7ディスク(プロジェクトワン ナウ)/ 854,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR6ディスク(プロジェクトワン ナウ)/ 630,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSLR6(プロジェクトワン ナウ)/ 646,000円、473,000円(フレームセット)
マドンSL / 462,000円
ディテール
専用シートポストは、5mmアーレンキーの2本留め。数センチの高さ調整が可能で、シートマストの長さは2種類用意されている
2ピースのエアロハンドルバー/ステムコンボ。好みに応じてハンドル幅とステム長を選ぶことができる。それぞれ他社のパーツとは互換性はない。ハンドルバーは±5度の角度調整ができる
シートマストの後方にはボントレガー・フレアRTのマウントが標準装備されている。トレックが推奨する[ABCセーフティー]を、ロードバイクのシンプルなスタイルを保ちながら取り入れている
マドンSLRはグレードにかかわらずフレームには同じカーボンのOCLV700カーボンが用いられる
一体感のあるヘッドチューブとハンドルまわり。シフト・ブレーキケーブルが内蔵され、インテグレーションが進む
新型の調整式Isoスピード。しなり量を調整するスライダーはトップチューブに配している。リバウンドを抑制するために、新たにダンパーを搭載している
フォークやフレームには空気抵抗を軽減する仮想テール形状のKVFチューブシェイプを採用。その空力性能は第5世代のマドン9とほぼ同じ水準にある
世界で一台、プロジェクトワン アイコン
自分だけのバイクを。このプロジェクトワンのマドンSLR専用ペイントとしてプロジェクトワン“アイコン”が登場。全6種類(従来のプロジェクトワンも選択可能)。アップチャージは112,000円となるが、プロジェクトワンの熟練したベテランアーティストによるエアブラシとペイント技術で描かれる。https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/project-one-icon/
関連URL:トレック・ジャパン
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得