2015年12月21日
3モデル インプレッション VOL.6/SPECIALIZED編 S-WORKS TARMAC(スタンダードモデル)
SPECIALIZED / S-WORKS TARMAC IMPRESSION
ピュアレーシングフレームのベンチマークといっても過言ではないS-WORKSターマック。2014年にはS-WORKSターマックSL4からブラッシュアップを施し、すべてにおいて秀でているオールラウンダーとしての性能をさらに高めた。すべてのフレームサイズで完璧な性能を約束するRider-First Engineered™ デザイン、パワー伝達を強化するシームレスボトムブラケットやモノコックチェーンステイを搭載したことで、下りでの安定性や、上りでのパワフルな走りにも貢献する。
S-WORKS ターマック■フレーム:S-Works FACT 11r carbon, FACT construction, tapered/shaped 1-1/8″ to size-specific lower head tube, compact race design, internal cable routing■フォーク:S-Works FACT carbon, full monocoque, size-specific taper■試乗車のコンポーネント:シマノ・デュラエース■クランク:S-Works FACT carbon, 52/36T■ホイール:Roval Rapide CLX 40■完 成車実測重量:6.6kg(ペダルなし)■カラー:Shown in Satin/Gloss Carbon/Clean、Shown in Gloss Blue Tint Flake/White■サイズ:49、52、54、56、58、61(取扱いサイズは要確認)■価格:990.000円(シマノ・デュラエース、税抜)、1,090,000円(シマノ・デュラエースDi2完成車・税抜)、490,000円(フレームセット・税抜)
シートクランプはフレームに内蔵されているので、シートポストと一体化したようなフレームのフォルムとなる。
BB規格は独自のOSBBを用いている。ベアリングはセラミックスピード社製のセラミックベアリングが標準装備される。
リアエンドとバックステイはきれいな曲線を描いていて、一体型のように見える。
パワフルな走りを支えるストレートフロンとフォーク。フレームチューブとの太さのバランスも良い。
クランクはオリジナルデザインのS-Works FACT carbon。軽量かつ剛性レベルも高い。
人気や実力はトップ★菊地武洋
走行性能は高いけど、面白くはない。ターマックに抱き続けてきたイメージも今は昔。最新のターマックは明快に愉しい1台に仕上がっている。スペシャライズドのロードバイクはずっと海外で高い評価を受けてきている。日本ではMTBのトップブランドという印象が強すぎてイメージチェンジに手間取っていたが、ホビーレーサーあたりから徐々に評価は高まっていき、今や人気実力ともにトップグループを牽引している。春先、ライバルメーカーの開発者とトレンドについて話をしていたら「うちはスペシャライズドほど極端にはできない」と言っていた。それはレースを色濃く、より高剛性化することだ。ターゲットを絞ると製品のディテールは明確になるし、多くの場合、魅力的になる。ただし、対象外になる人も増えるので、社内にいる販売成績を気にする人たちからは煙たがられる。その垣根が低いのがスペシャライズドの長所であり、打てば響くといった表現がピッタリとくる鋭い反応性の加速は、僕のような緩いスタンスの競技指向じゃない人にだって魅力だ。ターマックの実力を100%引き出せる人は本当に少ないだろう。しかし、フェラーリはきっと最高速を出さなくても、十分に魅力的だから売れる。それはターマックでも一緒。もっと速くコーナーを曲がれる実力はあるだろうが、素人が自分のレベルで気持ちよく曲がれるなら、それでいい。もし弱点を挙げるなら、ガチな人が好む銘柄なので、のんびり流して走るには気恥ずかしいということぐらいか?
レーシングバイクの最高峰★小高雄人
おそらくトッププロレーサーがもっとも乗っているバイクはターマックで間違いない。すべてのレーサーにレーシングバイクとしての完璧な性能を提供する「Rider-First Engineeredデザイン」の誕生も、脚質や体格の異なるプロレーサーに安定して最高性能のバイクを提供するという考えに基づいているはずだ。乗ってみると不満はどこにもない。すべての性能が極めて高く、かつクセのない素性の良さを感じた。フレームとフォークのバランスがよく、上りでも下りでもクイックにバイクを操れる。また振動吸収性に関してもルーベに近い高さがある。剛性は高めなので、踏みすぎず、高回転でペダリングしていったほうが気持ちよく進む印象だ。一見シンプルなフレーム形状だが、よく見るとスペシャライズドが目指すオールラウンドバイクを作り上げるための工夫が細部に見られる。
おそらくもっともライバルが多いバイク★山本健一
フォルムから運動性能までカーボンフレームとしてできることをすべてやってのけた(いま考えられる技術において)、そんなフレームなのがターマックなのではないかと思う。ペダルを回した瞬間にニヤリと頬が緩んでしまうような、軽快な走り出し。グランツールなどにおける数々の名勝負でこのバイクを駆るライダーたちが、舞うように峠を登る姿を自身に投影してしまうと、もうバイクの虜だ。もちろんトップレーサーのように走れるわけもないのだが、いつもの上りでも満足感が違うだろう。あらゆる性能がトップクラスで融合しているので、場面が変わったらイチイチ性能の良さをアピールしてくるのだが、それが嫌みっぽくないのがまたニクい。価格はお手頃とはいえないが、所有したものなら毎日悦に浸れるのだろうと思うと投資も惜しくない。すべからく上級者向けモデルといわざるを得ないのは、下りでのコントロールテクニックが要求されるところだろう。やや敏感な挙動として感じられるのは、おそらく剛性が高いうえに軽量だからだと思う。これを乗りこなせれば最速のラインをトレースできるが、それにはライダー自身の鍛錬も必要となる。まさしくピュアレーシングモデルで、もっともライバルに評価され、基準とされているだろう。唯一の弱点はこれに乗ったら下手な走りができないことだ(走りの素晴らしさは楽しめると思うけど)。
(写真:和田やずか)
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著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。