2016年01月15日
TIME初のディスクブレーキ搭載モデル IZON Disk 国内初インプレッション【後編】
TIME IZON Disk インプレッション
フランス・タイム社は、そのクオリティの高さから多くのサイクリストから羨望のまなざしを向けられるブランドだ。同郷で生産拠点も隣接するグループ・ロシニョール社とのジョイント・ベンチャー、つまり戦略的提携を結んだ。お互いのビジネス フィロソフィを共有し、マーケティングノウハウやエンジニアリングをも補完しあう関係となる。そういった背景のなか、満を持してリリースされたディスクブレーキ搭載ロードバイク、IZON Disk。ロードバイクを取り巻く環境の方向性の転換を示す1台となろうこの機体は、エンドユーザーも気になるところであるはず。バイクのディテール紹介とともに、2人のジャーナリストによる日本国内初のインプレッションをお届けしよう。
IZON DISK■フレーム:CFRP■フォーク:CFRP IZON用インテグラルRTMカーボンフォーク■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラDi2■クランク:FSA, K-FORCE LIGHT 50/34T■ホイール:MAVIC,キシリウム ディスク+MAVICイクシオンエリート 25C■カラー:ルージュグロス、グラファイトグロス、ブラングロス■サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL■価格:490,000円(フレーム、ヘッドセット、シートポスト、税抜)
前後共にポストマウント規格を採用したディスクブレーキ台座。ローター径は140mmがノーマルで、アダプターを噛ませると160mm径にも対応する。
ブレーキ台座がなくなり、スッキリとしたスタイリングのシートステーも新設計による専用品だ。
ディスクブレーキ仕様はノーマルフォーク仕様と同じ、涙滴型の断面形状をもつ専用シートポスト。アクティブ仕様はISPタイプが採用されている。
リヤブレーキのオイルラインはBB下を経由するため、ダウンチューブにアウトレット、チェーンステーは形状変更とともにトンネルが追加されている。
スタイル上の変化は最小限に抑えられているが、ブレードの形状やカーボンの積層は新たに設計されたものだ。
試乗車のシフトワイヤーはアウターストッパーによる外装方式だが、Di2の場合は専用キットを使った内装式になる。
試乗レポート
タイム・フリークを唸らせることができるか?◆菊地武洋
さぞやガツンと効く……と思っていたら、アイゾン ディスクは予想以上に扱いやすいというか、フレンドリーだった。まだ僕たちの目が慣れていないせいか、ディスクブレーキをみれば、自ずと過激なストッピングパワーを想像(期待?)してしまう。しかし、大切なのはローターやキャリパーだけでない。ハードブレーキングをしたいなら、それを支えるフロントフォークやヘッドチューブの強度や剛性バランスといった、フレームの性能に目を向けるべきなのだ。そして、タイムといえば強固なフォークを武器にした、正確無比なハンドリングがトレードマーク。それはアイゾンディスクも同じで、フルブレーキングしてもブレードが必要以上に動くことなく、挙動が乱れることもなくコンロールもしやすい。あたかもノーマルキャリパーのように違和感なく扱える。この試乗車におけるディスクブレーキのメリットは『止まる力』よりも『フィーリングの良さ』だ。加速のキレはサイドプルブレーキ仕様に及ばないが、ホイールのグレードがフレームにそぐわなかったのが最大の原因だろう。全体としてはエンデュランスバイクのような、キレよりも安定感が印象に残るセッティングだった。タイヤを換えればもっとレーシーになるはずだし、フレームに見合うホイールやローターの選択もあると思う。完成車販売のモデルではないので、コーディネイト次第でもっと走るバイクになりそうだ。かなり厳しめに書いたが、ユーザーがタイムに求めているのは僅差の勝利ではなく、圧倒する差で勝つことだ。キチンと煮詰めたセッティングで評価しないことには、タイムファンの納得は得られないだろう。基本性能の確かなフレームなので、よりチューニングした状態で改めて評価をしてみたい。
ハイセンスな走りのおかげで悩みが増える◆山本健一
フランス車らしいアイデンティティに溢れるタイムからディスクブレーキ搭載モデルがリリースされた。どちらかというと静観している側のブランドだと思っていたが……。ワールドツアーの供給を断ってからしばらく経つが、タイムの築き上げた地位は揺らぐどころか、盤石の体制へと向かっているのだ、というのをこのバイクの“走りの良さ”から想像してしまうのである。実際に組付けを行なったわけでもなく、1000も2000kmも乗り込んでいるわけでもないので、メカニックの苦労やメンテナンス性についてはユーザーボイスによって知らしめられることになるだろうが、経験上、メカニックにもユーザーにも優しいバイクではないか、と思う。最近の全部乗せなバイクと比べるとスマートに見える。それでいて、得体の知れないオーラをまとっているように感じるのは、フレームの造形美と、整然と並ぶカーボンクロスのおかげだろう。フレームチューブは立体的な構造を用いていて、エッジが効いたフレームデザインだ。フォークは、独自のアクティブフォークよりもずいぶんと華奢に見える。しかしながらディスクブレーキのストッピングパワーに対して弱いところを見せない堅実さがあった。もはやスタビリティは最高クラス。どんな路面状況や環境でも安定感は抜群だった。タイムというメーカーはモデルを問わず総じて乗りやすいのだ。そしてディスクだからといってゆったりと走らせてくれないのがアイゾン ディスクのニクいところだ。重厚な質感のフレームながらも、ペダリングパワーをしっかりと後輪へ伝え、パワフルに走る。これに乗ったらペダルを速く、強く回さずにはいられない。息が切れてしまうほどテストライドを楽しんだのであった。スタイルといい、走りのセンスといい、琴線に触れるバイクであったことは確か…。またひとつ“悩み”が増えてしまったようだ。
(写真/和田やずか)
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著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。