2017年01月11日
【ebikeの実力/その1】Besv LX-1/PS-1
ebikeとは、電動アシスト自転車のこと。日本では生活にも深く浸透しており、街を歩けば目にしないことはないだろう。実用的なそのパフォーマンスはスポーツとして自転車を楽しむサイクリストにもスポーツebikeとして提供されている。かのヨーロッパ、ドイツを中心に多くのebikeが毎年のように発表され、市場を賑わせている。ヨーロッパの規格以上に日本ではアシスト比に制限がかかっているが、それでもそのアシストは頼もしいものだ。スポーツとして電動自転車を楽しむ。そんな側面からebikeの実力を探ってみよう。第一弾はBesvだ。
Besv LX-1
2013年にデビューすると同時にデザイン賞を受賞し、Besvの名を一躍知られるようにしたトップモデルのLX-1。マッドガードやスタンド、ヘッドライトなど街乗りで求められる機能をスポイルすることなく装備しつつ、上手にスタイリングがまとめられている。24.2㎏。バッテリーは403.2Wh(36V.11.2Ah)
フレーム設計は自動車のボディ設計で採用されているCAD/CAEを使って行なわれ、チェーンステーはパイプではなくスパイン構造で軽さと強度を兼ね備えている。
4.5時間の充電で最大85㎞をアシストするプレミアムソニー製バッテリーが内蔵されるLX-1のメインフレーム。ワンキーシステムにより電源のオン・オフが行なわれる。
個性的なディスプレイを搭載するLX−1の液晶内蔵型ステム。バックライトも付いているので、夜間や暗い場所でも安心。
Besv PS-1
フレームと中央にあるバッテリーに一体感があり、一見するとアシストバイクとは思えないPS-1。前後サスペンションにディスクブレーキを装備し、小径車にありがちな乗り心地の悪さを解消し、ブレーキ性能も必要十分に兼ね備えている。
バッテリーには盗難防止のロック機構がある。別売りのバッテリーユニットを使えば、ロングライドにも対応する。
インターフェイスディスプレイは視認性も高く、バッテリー残量やアシストモード、速度などを表示する
ディスクブレーキはシマノ製で車重の重い電動アシスト自転車でも安定したストッピングパワーとコントロール性を実現している。
パリ、ロンドン、ミラノ、バルセロナ……。ヨーロッパの主要都市ではすっかりバイクシェアが一般的になって、アーバンサイクルのイメージも大きく変わった。その先鞭をつけたパリのヴェリブは近未来風のデザインを採用し、シティコミューターのイメージを一新した。
Besvは、野暮ったいデザインの多かった電動アシスト自転車界に、新風を吹き込む期待のアジアン・ブランドである。ブランド名の「Besv」の由来はBeautiful、Ecology、Smart、Visionという普遍的な4つの価値の頭文字をとったもので、製品の開発と製造は台湾のIT企業ダーフォン・イノベーション社が行なっている。2013年に台北ショーでデビューすると同時にd&iアワードを受賞、以後は日本やドイツなどで様々なデザイン賞を獲得している。
本国には4モデルがラインナップされているが、今回紹介するのは国内販売されている最高級モデルのLX-1(42万9,800円。税込)と小径モデルのPS-1(29万8,000円。税込)の2モデル。PS-1は2014年のグッドデザイン大賞のベスト100にも選ばれており、ファンシーなイメージの小径車とは一線を画する。フレームはカーボン製でプリプレグの積層数は10層だという。積層数は素材や製造方法によっても異なるので、それ自体を評価はできない。ただ、一般的なロードフレームよりも2〜3層ほど多く、それは高剛性という意味だろう。ロードバイクより車重が重く、パワーユニットも装備しているので要求性能も高くなるのも当然だ。とはいえ、カーボンフレームとバッテリーの小型化によって、車重は17.4㎏と軽い。重量はレース用のロードバイクの3倍近いが、電動アシスト自転車として考えるとかなり軽量だ。その証拠に6.6Ahと容量の大きくないバッテリーでも、軽さを活かして最大距離で60㎞のアシストが可能だという。街乗りや通勤など、小径車の用途を考えれば、十分過ぎる距離をカバーしている。
最高級モデルのLX-1は、フレームにバッテリーを内蔵したスマートなスタイリングが特徴だ。自転車歴の長い人ならば、トレック・Yフォイルを彷彿とさせるかもしれないが、あれは“昔、考えた未来”であって、Besvとは細部の作り込みが別次元。LX1はIT企業が関わっているだけに、インターフェイスも考え方も先進的だ。液晶モニタを内蔵したハンドルステムはデータを表示するだけでなく、前方にはライトも組み込まれている。デザインも機能もシンプルにまとめられており、スマートフォンと連携してマップ機能や走行履歴を共有するなど機能拡張もできるなど次世代感がギッシリと詰まっている。車重は24.2㎏とさすがにヘビー級だが、11.2Ahのバッテリーは最大で85㎞という距離のアシストを実現する。
個性的なスペックの両車だが、もっともユニークなのはアシスト機能だ。補助するモードが強さやレスポンスによって1~3まで選べるのは他社にもあるが、Besvにはアルゴリズムを解析して作られたスマートモードがある。これは左右のクランクに取り付けられたセンサーから得られたデータをベースに、「もっとも快適と感じる踏力で走行できるように出力レベルを調整する」という。アシスト比率や速度制限など道交法上の規制も多く、レギュレーションの範囲内ではあるが、スマートモードの完成度はなかなかのものだ。日本製ユニットと比べると反応性で一歩譲るところがあるが、走り出しや登坂時の補助する感じや、平地の巡航時でもライダーの気持ちにより添ったアシスト感は出ている。コントロールユニットの操作性は改良の余地もあるが、S(スマート)モードにしておけば、不満を感じることなく走ることができる。まだ性能を向上させる余地はありそうだが、準アクティブアシスト的で面白いし、他社よりもアドバンテージになっている。
かっこよくて、便利なシティコミューターが欲しい。ごくごく単純な要求だが、実際に満たしてくれるバイクは少ない。
Besvはアシスト機能に、優秀なブレーキシステム、そして極上のスタイリングと3つ揃っている点が魅力だ。クルマに例えるなら高級セダンであり、メーカーの狙った通りの性能に仕上がっている。価格は高いといえば高い。しかし、贅沢品である。そう思わない人がターゲットだし、弱点にはならないだろう。
ホームページ:http://www.motovelo.co.jp/product/besv/
(写真/編集部)
取材協力:千葉競輪場
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。