2015年11月04日
3モデル インプレッション FELT編 VOL.1/AR5 (エアロロードモデル)
FELT / AR5 IMPRESSION
フェルト/AR5のインプレッションをお届けしよう。このダイナミックなフォルムは、一度見たら忘れられないほど。サンディエゴの風洞実験施設で研究開発を行なった空力特性を考慮した翼状断面チューブはメインフレームからシートポストにまで及ぶ。走行スピード時速30キロでライバルメーカーとのイーブンコンディションによる自社テストでは、もっとも優れた値をたたき出したという。同シリーズのカーボンモデルのなかでは中堅モデルとなるAR5ながら、上位モデルと同じ形状設計であることは大きなアドバンテージといえるだろう。
FELT /AR5 メインコンポーネントはシマノ・105。完成車実測重量は8.0kg(ペダルなし)。カラーはブラック、サイズは480、510、540、560mm 価格:298,000円(完成車、税抜)
バックステイのブリッジを省くことで軽さとショック吸収性を高めている。また独自の形状が空気の整流効果を高める。
VRシートポストは、サドルレールクランプパーツにポリマー素材を内蔵し路面からの振動を吸収する。シートポストは反転できシートアングルを調整できる。
トップチューブの先端部に設けられたワイヤーリードは、電動コンポーネントを想定してデザインされている。機械式コンポではケーブルがややうるさくなってしまうのだ。
ボリュームのあるヘッドチューブ。中央部が絞り込まれていて、空気抵抗を低くするためのデザインが用いられる。
ブレーキをチェーンステー下に配置することで、エアロダイナミクスを高めた。剛性が高いBB下に配置することで制動力も高まるという。
フォークからダウンチューブへかけての空気の抜けをよくするフォーククラウンは振動の分散、ブレーキ性能向上にも貢献する。
何事においても、わかりやすいというのは大切な性能のひとつだ。ギャップ萌えというのもあるが、直球勝負なほうが魅力が伝わりやすい。AR5の魅力は、言うまでもなく空力を追求したスタイリングだ。このフォルムに惹かれない人は、買うこともないだろう。エアロ一直線。この割り切りがAR5である。
走行感だけでいえば、最新のライバルと比べて目新しくはない。BB下のダイレクトマウント方式ブレーキや、トップチューブから挿入されるケーブルなど、なにを意図してデザインをしたのかがひと目でわかる。また、振動を直接的に伝えてくる乗り心地は快適とはいえない。しかし、「それがどうした?」とバイクが語りかけてくる。それは全力で走ったときに、スッと胸を掬うような気持ちよさがあるからだろう。エンデュランスの対極にあって、スパルタンさを信条としている。そういう意味では、潔く、心地よい。
エアロバイクとは時代のあだ花として、これまで何度かのブームを作ってきた。AR5もオールラウンドで使うには快適性などに課題を残しているが、用途を限定すれば、光り輝くポイントもある。根本的にはレーサー仕様なので、ターゲットはタイムトライアルに挑戦したい人だ。してみると狙いどおりの性能に仕上がっているといえるだろう。
クセのない万能エアロ●小高雄人
乗り味はFシリーズとZシリーズのちょうど間に位置するような印象を受けた。エアロモデルながら3モデルの中でいちばん癖のない剛性感。ロングライドからロードレースまで幅広く使えるが、重量に関しては3モデル中もっとも重いので、ヒルクライムは若干苦手としている。
価格帯からして、ユーザーの2台目の選択肢に入ってくるはずだが、「エアロフレームだからこそというシルエットの凄みを楽しみたいけど、乗りやすいバイクが欲しい」という人におすすめしたい。
多くのエアロフレームで採用されている、BB下のリアダイレクトブレーキや専用のエアロシートポストなど押さえるツボはしっかりと押さえている。個人的にはトップチューブ上からフレームに入るフロントディレイラ—ワイヤーの取り回しだけは少し気になった。ギリギリステムに沿わすように長さを調整しないとせっかくのエアロ形状に似合わない。
思いのほか”愛嬌のある”エアロバイク ●山本健一
エアロロードというとどうしても極限性能的で、クセがあって玄人好みの印象がある。かつてのARシリーズはその例に漏れず、エッジが効いた印象だった。2014年にフルモデルチェンジを果たしたARシリーズは、FシリーズやZシリーズの領域に届くようなパフォーマンスを手にしておりトータルのパフォーマンスは確実に高まっている。エアロロードとして成熟したスタイルといえるが、もっとエアロに特化してほしかったな、というのが本音だ。ネックだったコンフォート性能は向上し、乗り心地はFシリーズに引けを取らないが、これだけエアロロードが各社にラインナップされた現在においては、快適性が優秀だったとしてもやっぱり影が薄くなってしまうのである。相容れなかったエアロダイナミクスとコンフォートを融合したARシリーズの存在はライバルにとってもっと脅威でなければいけないハズである。
とはいえ価格帯に対するアッセンブル的にも、もちろんフレームのスペックも、最初のエアロロードバイクして最適だろう。そして最新エアロロードにしてはオーソドックスだけど、比較的メンテナンス性が良いなどフェルトらしい堅実さを感じさせる、愛嬌を感じさせるバイクなのである。
(写真/和田やずか)
FELTのお問い合わせ先:ライトウェイプロダクツジャパン TEL.03-5950-6002 http://www.riteway-jp.com/bicycle/felt/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。