2016年06月21日
3モデル インプレッション Vol.16/CARRERA SL950(スタンダードモデル)
CARRERA SL950
SL950はT800炭素繊維を用いた衝撃や応力にきわめて強靭なフレーム。カレラ独自のVa.B.M.やEPUテクノロジーを採用し、高性能であるだけでなく長距離でも快適に走れる。まさにヒルクライムや長距離のライドで理想的なパフォーマンスを味わうことができる。フレームのケーブル内蔵機構は電動コンポーネント、機械式コンポーネントの双方に対応している。
■フレーム:T800HM-HS 60T SHM XN60 special nano■フォーク:FF43 カーボン 60HM 1K 1-1/8” – 1/4” 重量:370g■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラ■ホイール:カンパニョーロ・ボーラウルトラ35■完成車実測重量:6.4kg(ペダルなし)■カラー:A6-40マット、A5-11マット、A5-12マット、A5-13マット■サイズ:XS、S、M、L、XL■価格:260,000円(フレームセット、税抜)、330,000円(シマノ・アルテグラ完成車、税抜)、295,000円(シマノ・105完成車、税抜)
各チューブは横方向に扁平させたスクエア形状のチューブを採用している。BBはプレスフィットだ。
トップチューブから延長したようなバックステイの造形。横方向に扁平した形状。
左右非対称形状のフレームは珍しくはないが、比較的大胆な形状設計のチェーンステイ。
まっすぐに伸びたフロントフォーク。370gとカーボンフォークとしては平均的な重さである。
ダウンチューブのボリュームからパワフルなライドクオリティが想像できる。
機械式、電動式コンポーネントに対応するケーブル内蔵機構。
IMPRESSION
カレラらしい1台■菊地武洋
そこそこの価格で、高い走行性能。そして、いざというときにすぐに同じモノが入手できる。ホビーレーサーなら機材としてフレームを選ぶときに、この3つの要素は欠かさないほうがいい。少しでも速く、わずかでも軽さを追いたくる気持ちもわかる。けれど、残念なことに落車でフレームを交換せざることを得ない事態は、レースをしている人なら想像に難くないはず。と書けば、想像もつくだろう。SL950は本格的にロードレースを嗜むなら、選択肢の1つに挙げておいて間違いのないモデルだ。シマノ・アルテグラで組まれた完成車は贅沢な1台目か、2台目の人がターゲットだろう。30万を超えるモデルなので安いとは言いにくいが、ブレーキやクランクにサードパーティーを使わないなど手抜かりがない。試乗車はホイールに反則技ともいえる高級ホイールのカンパニョーロ・ボーラ35が奢られており、上級モデルと見まがうばかりの走りを披露した。最上級モデルと比べれば、胸を透くような加速も、軽く飛ぶように坂を上る感じも薄い。しかし、レースの勝敗を分けるレベルの話ではない。機材にこれだけのポテンシャルがあれば、勝つのも負けるのもライダー次第。現在のカレラは複数のジオメトリーを使い分けているが、古典的なイタリアンバイクはジオメトリーが同一で、素材による差がグレードの差だった。SL950もベースはカレラらしいレスポンスの良さがあり、SL730につながる質感がある。カタログによると、グランフォンド用のアイコンがあてがわれているが、それは「無茶苦茶キツいコース向け」という意味だ。ヘッドチューブ長やスタックを見る限り、ライバルブランドならレース用と謳われるはずだ。この辺りも、いかにもカレラらしさの現われといったところだろう。
上りの特急券★芦田昌太郎
全クライマーにおすすめしたい。重量からもわかるとおり軽い。ただひと口に軽いと言っても様々あるが、上りでは重量以上の軽さを感じられるのである。言い換えれば、想像以上に上りで進むのだ。アタックへの反応の速さは特筆すべきものがあり、登板だろうと平坦だろうと一気に加速して行く。自ら仕掛ける時も、この反応の速さは大きなアドヴァンテージになるだろう。唯一気になる点は、ハンドリングがクイックなところか。軽量に仕上げているだけに何かしらの犠牲が必要で、平均点を取りに行くよりもその性能を突出させたブランドの心意気に拍手を送りたい。
リーズナブルなのだろうか?★山本健一
カレラのバイクは価格では測れないフシがある。ときどき「これだけ高価なんだから走らないなんてあり得なくて」と、高額なハイエンドモデルを前にして口走ることがあるが、その理屈からすれば、「お手頃価格なクセに走る」と言わねばならない。あるいは「こなれた価格のバイクは走らなくても許される」とも解釈されかねない。後者の場合は完全に挙足とりではあるが、カレラのバイクは総じて前者のそれなのである。このSL950も例に漏れず、楽しく走れるバイク。思い描くスピードまで軽やかに加速してくれるフレームは、そのオーソドックスなスタイルから想像できるように堅実そのもの。高弾性カーボンを用いているが、誰でも乗りやすいような自然なライディングフィールを感じさせる。軽量ながらもあらゆるシーンで使える万能なバイクだった。フレーム重量は完成車実測重量(飛び道具を載せているが)を聞けば、なんとなく想像はつくと思うが、1000gは軽く下回る軽さだ。パフォーマンスは競合メーカーのハイエンドモデルと肩を並べる性能だろう。つまりは40万円前後のフレームと同等レベルと言える。性能だけでいえばリーズナブル。しかしグラフィックに食指が動かない。あと3万円チャージしても良いので、カレラ・ジーンズチームのレプリカカラーがあったら……。
(写真/和田やずか)
問:ポディウム http://www.podium.co.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得