2016年04月18日
3モデル インプレッション Vol.14/TIME IZON AKTIV(スタンダードモデル)
TIME / IZON AKTIV
アイゾンのパフォーマンスを3つ挙げるとしたら、反応性、多用途型、機敏性となる。山岳、長いつづら折りのダウンヒル、クリテリウムでのコーナーからのアタックなど、あらゆる場面でも優れたパフォーマンスを発揮する理想的なバイクだ。アイゾン アクティブは従来のアイゾンに振動減衰特性に優れるアクティブ フォークを搭載したモデル。専用のアクティブ フォークはライダーがもっとも不快と感じる25~50ヘルツの低周波帯の振動を減衰する。この技術はエネルギーロスに繋がる柔軟性に頼った振動吸収システムとは一線を隔した新しい概念だ。ダイレクトトランスリンクシートポスト(ISP)となり、サドル固定方法は従来のものを踏襲している。フレーム単体の公称重量は995g。ディスクブレーキ搭載モデルもリリースされている。電動コンポーネントを採用する場合にはアイゾン専用電動パーツキットが必要になる。
IZON AKTIV■フレーム:カーボン■フォーク:IZON用AKTIVフォーク、CMTフロントドロップアウト■試乗車のコンポーネント:カンパニョーロ・レコードEPS■ホイール:カンパニョーロ・ボーラウルトラ35■完成車実測重量:6.7kg(ペダルなし)■カラー:グラファイト×グロス、ブラン×グロス、ルージュ×グロス■サイズ:XXS、XXS、XS、S、M、L、XL■価格(税抜):540,000円(フレームセット、付属品:タイムクイックヘッドセット、専用シートポスト、ボトルケージ2個)、600,000円(フレームセット、オプションカラー 付属品:タイムクイックヘッドセット、専用シートポスト、ボトルケージ2個)
ライダーがもっとも不快と感じる25~50ヘルツの低周波帯の振動を減衰するアクティブフォーク。アイゾン専用の設計だ。
RTM製法によって美しい造形に仕上がったバックステー。しかしながら求められるダイレクトなパワー伝達性能、コントロール性能、そしてコンフォート性能を兼ね備える。
トランスリンク シートマストを採用。サドルの固定方法はオーソドックスな仕組みだ。
タイムオリジナルのヘッドセットはシャープなデザインながらも優れた剛性を発揮する。そして正確なステアリング性能を提供する。
BB規格はBB30を採用する。
アシンメトリー チェーンステーによって優れた反応性を発揮する。BB周りと同じく、ハイモジュール ファイバーを採用している。
IMPRESSION
かける期待を見事に裏切られた■菊地武洋
タイムのラインナップには、ほぼ上下関係がない。カテゴリー別に1モデル、アクティブフォークの有無だけだ。入門用もなければ、お買い得モデルもスペシャルモデルもない。スタンス的には、もっと前から上下関係を廃していたが、価格相応という感は拭えなかった。それ故、アイゾンにかける期待は大きくなかった。スカイロンを超えるとも思えない、と。しかし、見事に裏切られた。というか、大外しの予想だった。スカイロンもアイゾンも軽快ではあるが、質は違う。前者はパワーやトラクションの大きさでパワーウェイトレシオを稼いでいるスーパーカーのようだ。対するアイゾンは動きがウイップを活かした軽さが光る。タイム独特のフィーリングを強く求めるなら前者かもしれないが、より多くの人に好まれるのはアイゾンだろう。冬物と春物のコート、両モデルにはそれぐらいの違いがある。ヒルクライムでも加速でも、踏み出した最初の一歩の反応性がいい。BBはBB30。スカイロンのBB386と比べれば剛性で見劣りするものの、トラクションで劣るとは思えない。バックフォークの造形や、アウターエンドストッパーに昨年モデルを彷彿とさせる部分もあるが、走りは最新だ。ただし、高剛性ホイールは必須であり、相性の合わないホイールをセットアップすると、それなりの良さしか引き出せない。マイルド側でセットアップするならカンパニョーロ・ボーラ35、ハードならライトウェイト・ギップフェルシュトルムとの相性は格別だった。高価なホイールを装着すれば、どんなフレームでも走ると思ったら、それは大間違いだ。むしろ、高性能ホイールの性能を引き出すには、優れたフレームが必要なんだ……と学ばせてくれたように思う。
上りもいけるオールラウンダー★小高雄人
上りでの軽快さが魅力的なモデル。ダンシングは苦手なので普段は多用しないが、あえて続けても身体へのダメージが少なく、スイスイと進んでいく。このバイクとであれば、峠攻略が楽になりそうだ。上り以外のシーンでも走行性能が高く、よく走る。スカイロンと同様にレーシングフレームとしての性能を不足なく持ち合わせている。アクティブフォークの性能に依存する所が大きいと思うが、コーナーでの路面追従性は素晴らしく感じた。フォークのボリューム感はビジュアルとしてはそこまで好みとはいえないが、持ち合わせる性能は、現在トップクラスにあるように思える。
ダイナミックなフォークの性能が前面に現れる◇山本健一
オーソドックスなデザインと思わせるが、ディテールにこだわった美しいフレームで、眺めれば眺めるほど、そのこだわりの造形がどんどん見えてくる。カーボンファイバーは形状の自由度をフレーム製作の現場に持ち込んだが、それをすべてのブランドが活かせているかというと…..。少なくともタイムはその製造方法からして、カーボンのポテンシャルを最大限に高めるべく、独自路線を選んだ。その結果、生み出されるバイクは世代ごとに印象深いバイクとして名を残す。このアイゾンも猛者のような歴代のラインナップと比べるとややおとなしさを感じるが、それは非常にラグジュアリーな部類で、フレームのしなりがほど良く感じられる。一方、頼もしいアクティブ フォークはしなりをほとんど感じない優秀な剛性感だ。しかし硬いフォークにありがちな路面からの衝撃で、ハンドルが突っ張ってしまうようなトゲトゲしい操りにくさはなく、滑らかにホイールが路面を捉えてくれるような印象がある。滑らか、すなわち路面のアンジュレーションによってスピードがスポイルされるような場面でも、滑らかにスッと進んでくれるような、そんな心地よい印象がある。この滑らかさに加えて、踏力に対するレスポンスの良さもこのアイゾンのウリだ。平坦も上りも得意とし、下りやコーナーはアクティブ フォークがしっかりと応える。まさにオールラウンドな性能だ。ただしフレームとアクティブ フォークのボリュームが不釣り合いであるのは否めないと、個人的なセンスでは思う。フレームとフォーク、コンポーネントまでもインテグレート化を推し進めるメーカーが増えている傾向にある。アクティブ フォークはアイゾンの専用設計となっているが、ボリュームがあり取って付けたような印象になる。もっと調和したデザインのほうが今どきだった。
(写真/和田やずか)
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著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。