2017年11月18日
【2018 NEWプロダクツVOL.11-1】MERIDA SCULTULA DISC TEAM TEAM-E
エアロバイクの“リアクト”が剛の印象なら、柔の雰囲気を醸し出して人気を集めているのが軽量モデルの“スクルトゥーラ”。2018モデルはカーボンの積層を見直して50gの軽量化と同時に、リムブレーキはチェーンステーからシートステーへと位置を変更。ディスクブレーキ仕様はバーレン・メリダチームによってクラシックレースの“パリ~ルーベ”で実戦に投入され、プロのフィードバックを参考にブラッシュアップして市販化されたという。
スクルトゥーラのリム仕様とディスク仕様のジオメトリー上の違いは、チェーンステー長が8㎜長く、タイヤ幅が28Cに対応しているか否かの違いだけだ。同じディスク仕様のリアクトと比較するとヘッドチューブがスクルトゥーラのほうがわずかに短い。数字的に見ると大きな差は見つけられないが、走行感は大きく異なる。剛性や強度の与え方によって同じ寸法や角度でも走行感に演出を加えられるのは、メリダがカーボンを熟知しているからだ。
フレーム・フォークスペック
フレーム Scultura CF4 disc ultralite [386] R12
フロントフォーク Scultura Superlite 12 FM
完成車スペック
フレーム Scultura CF4 disc ultralite [386] フレーム重量:865g (56cm サイズ)
フォーク Scultura Superlite 12 FM フォーク重量:380g
ヘッドセット FSA NO.44/CF neck
リアサスペンション N.A.
ギヤクランク Shimano Dura-Ace FC-R9100 50-34 L:165mm(44cm) L:170mm(47/50cm) L:172.5mm(52/54cm)
BBセット Shimano Pressfit BB92
F.ディレーラ Shimano Dura-Ace Di2 DF
R.ディレーラ Shimano Dura-Ace Di2 SS
シフター Shimano Dura-Ace disc Di2
F.ブレーキセット Shimano Dura-Ace disc
R.ブレーキセット Shimano Dura-Ace disc
ブレーキレバー Shimano Dura-Ace disc
リム DT Swiss PRC 1400 spline DB35 スポーク attached
F.ハブ attached
R.ハブ attached
タイヤ Continental Grand Prix 4000S 25 KV
ギヤ Shimano CS-9100-11 11-28
チェーン KMC X11SL DLC
ハンドルバー FSA K-Force Compact 31.8 L:380mm(44cm) L:400mm(47/50cm) L:420mm(52/54cm)
ハンドルステム FSA OS99 -6 L:80mm(44cm) L:90mm(47/50cm) L:100mm(52/54cm)
サドル Prologo Nago Evo CPC
シートピラー Merida Carbon Team S-Flex 27.2 SB15
シートクランプ Carbon 305 Allen
ペダル N.A.
チューブ・バルブ 仏式バルブ
付属品 ベル、ロック、リフレクター
フレーム重量 | 車種番号 | フレームサイズ | 適正身長 |
---|---|---|---|
865g (56cm サイズ) |
AMSDT448F | 44cm | 155~165cm |
AMSDT478F | 47cm | 160~170cm | |
AMSDT508F | 50cm | 165~175cm | |
AMSDT528F | 52cm | 170~180cm | |
AMSDT548F | 54cm | 175~185cm | |
AMSDT568F | 56cm | 180~190cm |
完成車 標準現金販売価格(税抜):¥1,200,000
シフト段数 | 完成車重量 | 車種番号 | フレームサイズ | 適正身長 |
---|---|---|---|---|
フロント2速×リヤ11速 | 6.8kg (52cmサイズ) |
AMSDT448 | 44cm | 155~165cm |
AMSDT478 | 47cm | 160~170cm | ||
AMSDT508 | 50cm | 165~175cm | ||
AMSDT528 | 52cm | 170~180cm | ||
AMSDT548 | 54cm | 175~185cm |
フラットマウント式のブレーキ台座。フロントにはキャリパーの放熱効果を高めるディスククーラーを装備しない
リアクトディスクとは違う形状のディスククーラーを装備する。CF4グレードのフレームにはホイールの脱着が容易なR.A.Tスルーアクスルが
トップチューブとシームレスにつながるシートステー。上部は扁平形状となっており、後輪の路面追従性と快適性を向上させている
トップチューブにDi2用のケーブルインテークがある。機械式の変速システムを使う場合はダウンチューブからケーブルを内蔵する
痩身のように見えるがウイップを最小限に抑えるため、ダウンチューブ&シートチューブはBBシェルを押さえ込むように拡がっている
25㎜のタイヤを装着しても、まだクリアランスに余裕のあるフォーククラウン
制動感を大きく左右するホイールは、ディスクブレーキ仕様で定評の高いDTスイスのPRC1400を選択している
風洞実験室のテストによって生み出された“NACA Fastback”形状のシートチューブ。エアロを強く謳わないが細部まで手抜かりがない
IMPRESSION
メリダのレーシングバイクとして双璧をなすのが、リアクトとスクルトゥーラ。シーンや好みによってセレクトするために、用意された2台は、やはり大きく性格が異なっていた。フレーム形状はもちろんのこと、カーボンの積層などで、個性的に味付けられており、双方ともに魅力的なモデルに仕上がっている。このスクルトゥーラは、どちらかというと軽量&長距離向けのスペックだろう。いわゆるロングライドやアメリカンな表現ならビッグライドともいうもの。それもちんたらと走るのではなくファストライドだ。安定性に優れたジオメトリーと、加速を繰り返しても脚にやさしく、上りも快調だ。キレはリアクトに軍配が上がるが、何度も加速を繰り出すことを考えるとこのスクルトゥーラのほうが向いていると思える。
このディスクバージョンはとくにワイドタイヤの装備などを考慮してチェーンステーを長く設定している。ゆったりとしたライディングフィールを予想したが、それも踏み出しの軽さは一級品だ。ディスクブレーキの制動力に対応するためにフォークが過剛性気味になったり、設計が変わってしまったりと違った点でロードバイクの性能に影響が及んでいるが、それも昔。このスクルトゥーラはかなり自然なフィーリングである。デュラエースのディスクブレーキタッチもリムブレーキに近い制動の立ち上がりに感じる(この個体だけかもしれない。ばらつきがあっては困るが他のテストサンプルでも検証する必要があるだろう)。使用用途的にも見た目のスタイルも個人的にはディスクブレーキが、エアロロードバイクのリアクトよりもフィットしていると思う。
総じて好みが分かれそうなチームレプリカカラーだが、バーレーン・メリダチームの配色をうまくまとめている。この戦闘的なカラーリングも乗り手をその気にさせる魅力がある。
自分の限界に挑むなら……◆菊池武洋
スクルトゥーラとリアクトは寸法こそ似ているのが、乗った印象は大きく異なる。スクルトゥーラのほうがマイルドで乗りやすいとも言えるが、リアクトの走行感と比べるとちょっと古い。ハードブレーキングしたときのフロントフォークの動きなどを見ていると、ブレードの剛性はさらにあったほうがブレーキの制動力が高まるはずだ。ただハンドリングとクラウン回りの感覚から言うと、このCF4フレームのコラム径の選択は間違っていない。下位モデルでは1.125/1.5インチとしているが、1.125/1.25インチにすることで路面からの突き上げをほどよく吸収しつつも、バランスが良くなっている。この辺りの総合演出は巧みである。剛性も然りだ。もっとBB部のねじれ剛性を高くしたほうがトラクションが稼げるだろうが、そうすれば乗りやすさを失うだろう。自分の限界に挑むならスクルトゥーラ、機械の限界を追い求める走りをするならリアクトという選択もいいだろう。
このバイクは……
無駄のないオールラウンドな軽量カーボンバイク
関連URL:ミヤタサイクル http://www.merida.jp/lineup/road_bike/scultura_disc_team-e.html
写真:海上浩幸(走り)、編集部
文:菊池武洋、山本健一
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。