2017年09月07日
【2018 NEWプロダクツVOL.2-3】CERVELO / R3
CERVELO /R3
サーヴェロの開発チームが“バイクを効率的に走らせる”ことに対して、たゆまぬ開発を続け、ニューバイクを生み出している。しかし満足することはなく、その時代において最高といえるモデルを作り続けている。近年ではエアロダイナミクスによる効率的な速さを求めたSシリーズ、快適性と軽さを追求したRシリーズなど、アプローチは違えど速さとパワー伝達効率を両立させるのが新製品の課題だ。
2018モデルとして新しくなったR3は、上位グレードのR5を同じコンセプトを持ちつつ、より求めやすい価格と必要十分な性能の両立を図ったモデルだ。
新型Rシリーズには多くの変更がもたらされているが、中でもジオメトリーの変更は注目だ。ヘッドチューブを短くしてハンドル位置を低く、トップチューブを従来よりも長めにしてリーチを延長。流行の前乗りでもバイクコントロールの安定感を失わないようにBBハイトを下げ、チェーンステーを5㎜長くした。フロントフォークのバリエーションを増やして、フレームサイズごとに異なっていたトレール値を統一するなど、かなり大がかりな変更となった。
R3 Dura-Ace 9100完成車 ¥790,000(税抜価格)
R3 Ultegra Di2 8050完成車 ¥670,000(税抜価格)
R3 Ultegra 8000 完成車 ¥550,000(税抜価格)
R3 フレームセット ¥370,000(税抜価格)
シフトケーブルのルーティングは摩擦抵抗が少なく、ハンドリングにも影響の少ないダウンチューブ上辺から内蔵している
R5と異なりR3ではコンベンショナルな真円タイプを採用。クランプバンドもスタンダードだが剪断荷重を避けるためにボルト位置は前側に
Rシリーズのアイデンティティとなっている細型シートステー。柔軟性や強度など先駆者としてのノウハウが詰まっている
四角(スクエア)と楕円(オーバル)の中間的な形状から命名されたオリジナルのスクォーバル マックスチューブは、さらにブラッシュアップされて剛性、空力性能が向上している
次世代スタンダートとなりつつあるワイドタイヤの28C幅に対応するためタイヤとチェーンステーのクリアランスを4.5㎜拡張している
IMPERSSION
R3ながらも前作R5と同等レベルの性能★山本健一
NEW R3は剛性レベル、軽さなどパフォーマンスは前作R5とむしろ同じだ、とサーヴェロのエンジニアは話す。となると改善が加わったジオメトリーをもつ新しいR3は、先代の上級モデルよりも優れたパフォーマンス発揮してくれるのだろうか。
フレームはかなり重厚なイメージで落ち着きがある。出だしからの軽さはNEW R5に譲るが、中間加速からそれ以上はR5と引けを取らない実力を持っているだろう。とくに下りではR5よりも安定性に優れ、乗りこなしやすいバイクと感じた。もちろんホイールを統一してテストも行った。実にしっくりとしたライディングフィールで、超軽量バイクを扱うような丁重なライドではなく、ガンガンと段差を乗り越えて、悪路もガンガン踏みたくなるような、頼もしい雰囲気がある。とはいえフレーム重量は前作のR3よりも10%軽量になり、ヘッドチューブとボトムブラケットは4%剛性が上がっている。4%も違えば別物とはよく言ったものだが、それを部分的に感じ取ることはなかなか難しい。しかしながら、ロースタック・ロングホイールベースとなったジオメトリーやチューブ形状の刷新、そして剛性アップなどすべてを含めると、パフォーマンスは明らかに上がっているということがわかる。
ディテールにも抜け目はない。が1点だけ、質素すぎるシートピンはやはりフレームの質感と比べると浮いている。ボルトもライド中に破断しないだろうかと不安になる。むしろもっと太めのボルトにしたいし、ステンレスなどこだわったものに変えて使いたい。
プアマンズR5ではない★菊地武洋
R5とR3は同コンセプトで上下関係にあるが、もう少し注意深くみてみると兄弟に似ていることに気がつく。同じ方針の下で作られているので走行性能の根本はR5もR3も変わりがない。しかし、微振動の収まり方や大きな凹凸を拾ったときの感覚は先代のR5を彷彿とさせる。1つ1つ性能を拾っていけば、同世代のR5のようなスムーズさはないかもしれない。でも、40万円を切るフレームとして考えたら、R3は相当に上等なフレームだ。もし、加速のキレや制動力の高さに不満があったり、さらなる高みを目指すならホイールやコンポに手を加えればいい。振動の収束が遅れることで生じる不快感や、加速時のフリクションロスはフレームのせいではないから、それだけで従来のR5を凌ぐとも劣らない性能を手に入れることができるだろう。私ならコンポのグレードで無理するよりも、ワイドリム&タイヤを使って、軽い走行感とハンドリングに磨きをかけると思う。こんな具合に、自分が買うことを想像する魅力を持った1台だ。
このバイクは……
オールラウンド
R5の姉妹モデル。そのパフォーマンスはフラッグシップモデルレベル
富士チャレンジ200
グランフォンド八ヶ岳
Mt.富士ヒルクライム
クライムジャパン
東京エンデューロin彩湖
関連URL:東商会 http://www.eastwood.co.jp/lineup/cervelo/r3_1.html
写真:編集部、江西伸之
文:菊地武洋、山本健一
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。