2017年12月20日
【2018 NEWプロダクツVOL.11-3】MERIDA SILEX 9000
エンデュランスバイクの快適性の高さと、ユーティリティー度の高いツーリングバイクのいいところを足して仕上げたのがマルチパーパスバイクの《サイレックス》シリーズだ。ラインナップはトップモデルの《9000》から《200》までの4グレード。北米ではグラベルロードやアドベンチャーロードといったカテゴリーが確立しつつあり、初心者からハードコアなライダーまで人気を集めている。
オフとオンロードを苦ともしないといえばシクロスロス用バイクと似ていそうだが、サイレックスのほうは80㎜以上ヘッドチューブが長く、ハンドルの位置が圧倒的に高い。また、ハンガー位置を下げることで低重心化するとともに、チェーンステー長も伸ばすことで誰にでも乗りやすく、長めのトップチューブ&ショートステムを採用して、不安定なオフロードでも怖くないように工夫されている。また、フロントディレイラーを廃して軽量化とミスシフトの低減を両立しているのも最近の流行りに則った仕様である。今回紹介するのは最上位モデルのサイレックス9000だ。
価格:¥459,000(スラム・フォース DISC完成車)
SPEC
フロント1速×リヤ11速 | 7.9kg (50cm サイズ) |
AMX90448 | 44cm | 155~165cm |
AMX90478 | 47cm | 160~170cm | ||
AMX90508 | 50cm | 165~175cm | ||
AMX90538 | 53cm | 170~180cm | ||
AMX90568 | 56cm |
180~190cm |
完成車スペック
フレーム Silex CF2 R12 [PF86]
フォーク Silex Carbon 12 FM
ヘッドセット Silex Neck
リアサスペンション N.A.
ギヤクランク SRAM Force 44T L:170mm(44/47cm) L:172.5mm(50cm) L:175mm(53cm)
BBセット SRAM Pressfit PF86
F.ディレーラ N.A
R.ディレーラ SRAM Force CX1
シフターSRAM Force SB-FRC-HRD-A1
F.ブレーキセット SRAM Force DB-FRC-A1
R.ブレーキセット attached
ブレーキレバー SRAM CX one
リム Fulrcum Gravel
スポーク attached
F.ハブ attached
R.ハブ attached
タイヤ Maxxis Gravel 35 fold
ギヤ SRAM XG1150 10-42
チェーン KMC X11-1
ハンドルバー Merida Expert oval 31.8 L:400mm(44/47cm) L:420mm(50/53cm)
ハンドルステム Merida Expert 31.8 -5 L:80mm(44/47/50/53cm)
サドル Prologo SCRATCH 2 TIROX
シートピラー Merida Carbon Team S-Flex 30.9 SB0
シートクランプ Silex insert
ペダル N.A.
チューブ・バルブ 仏式バルブ
付属品 ベル、ロック、リフレクター
重量 7.9kg(50cm サイズ)

シートポストの固定はメンテナンス性を損なわずスマートなデザイン
フロントディレイラーの装着が可能な取り付け台座はあるが、シンプルなドライブトレインを目指して変速機はリアのみ
フロントフォークのブレードにはボトルケージ&キャリアを固定するためのダボがある
ヘッドチューブを長めにしてロングリーチになっているが、その分だけステム長を短くしてハンドリング特性を適正化している
ヘッドチューブの長さが強調されないように工夫が凝らされている
ブレーキキャリパーの放熱性を高めるメリダオリジナルのヒートシンク《Disc COOLER》を装備する。ローター径は140㎜
ブレーキローターと大きさが変わらない42Tのローギア。リアディレイラーはスラム・フォースCX1を採用。ホイールの固定は12㎜のスルーアクスル方式だ
サイレックスのためにマキシスと共同開発したタイヤ《ラッツォ》。フレームは44Cまで対応する
IMPRESSION
ガチでもいいし、マイルドでも楽しめる◆山本健一
浮遊しているかのような心地よさ。しかしながら、「剛性とスピードばかりを追い求めたようなロードバイクに疲れたなら、こんなバイクもおすすめ」なんて書こうものなら、多方面からお叱りを受けそうだ。タイヤのボリューム感もあり、ふわふわとした感触もあるが、攻めるところではしっかり応えてくれるのがこのバイクの魅力だろう。そういう意味では高い剛性をもつフレームと言える。ドロップバーの下を持つようにセッティングされたかのようなアップライトなジオメトリーで、たしかにドロップバーの下を握って初めてしっくりときた。シクロクロスバイクとマウンテンバイクの中間ようなライディングフィールで、ハードテイルを乗りこなす楽しみを見出せるバイクだ。バイクも実に軽量に仕上がっていて、カーボンフレームらしく上りでは軽やかに加速する。その上、荒ぶるグラベルでも頼れる安定感が最大限発揮され、実に楽しい。
ダボなどが無数に搭載されているが、これでツーリングすると考えたら楽しいことしか思い浮かばない。どんなところへでも走りに行きたくなるバイクだ。
圧倒的な快適性を誇る、新世代ツーリング車★菊地武洋
車高の高いクルマは渋滞でイライラしにくいように、ハンドルの位置が高いバイクも穏やかな気持ちで走れる。サイレックスの魅力は景色のよさだ。同じメリダのシクロクロス用と比べてハンドルが約10㎝も高く、タイヤも35Cと太い。直進安定性の塊のようなハンドリングと相まって、バスにでも乗っているような無敵感がある。サイレックスの基本はツーリング車だ。シンプルで軽く、ローギアードで安定していて快適な乗り味は、昔風に言うなら、パスハンターの現代版と言ってもいいだろう。ランドナーのような形式美はないかもしれないが、その分だけ形状もパーツの選択にも自由がある。正直、フロントディレイラーが欲しいと思ったが、少しぐらい不便な方が楽しいのもツーリングである。フロントディレイラーは後付けもできるので、コストはかかるがコースに合わせてアップグレードしてもいいだろう。また荷物で車重が重くなるツーリング車にとってディスクブレーキの高い制動力が優位なのは言うまでもないし、さらに未舗装路も走るとなれば安定した制動感は圧倒的だ。サイレックスはモダンな機能で抜群の走行性能、伝統的なツーリングを融合させた新しい世代のツーリングバイクである。
このバイクは……
ゆったりとした気分で走るもよし、グラベルを楽しむのもよし、ファストライドにも応える
グランフォンド八ヶ岳
関連URL:ミヤタサイクル http://www.merida.jp/lineup/road_bike/silex_9000.html
写真:猪俣健一(走り)、編集部
文:菊池武洋、山本健一
著者プロフィール
菊地 武洋きくち たけひろ
自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。