2024年06月18日
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・4日目、5日目>
どうも、篠です。
先日日本縦断ギネス世界記録に挑戦して、無事完走しました。
5月21日7:00に佐多岬から出発し、5月27日11:48に宗谷岬に到着。
記録は148時間48分(6日4時間48分)※睡眠休憩込みのグロス計測
総距離2536km、獲得標高15641m
現在WUCAにギネス世界記録申請中で、無事認定されれば女子記録更新になります。
長かったようで体感一瞬だった濃厚の一週間。
前回の記事に続き、4、5日目の走行記録とともにチャレンジ本番を振り返ります。
INDEX
4日目/石川県白山市~新潟県村上市
5日目/新潟県村上市~青森県青函フェリー青森ターミナル
4日目 石川県白山市~新潟県村上市
サポートメンバー:網野、ふぃりりん、わらばんし、オゴウ
走行距離 382km 獲得標高 1939m
グロス平均速度 21.2km/h
経過時間 18時間2分
走行時間 15時間40分
活動時間 5:21~23:23
睡眠休憩 6時間5分
【天候】晴れ→曇り→雨→晴れ/気温 14~30℃/湿度 75%
4日目の着用ウェア
【ASSOS】
UMA GT DRYLITE LS JERSEY
UMA GT SUMMER HALF KNICKERS C2
SEEME VEST P1
SUMMER NS SKINLAYER P1
RS GLOVES TARGA
R SOCKS S9
JINGO RS HELMET
頼もしいサポートチームのおかげでイレギュラーな出来事もへっちゃら
5月24日、4時45分起床。
5時21分に走行開始。
今日は新潟県の村上市まで383km進む予定です。大抵のことは3日もあれば慣れるとよく言います。
この日から「寝て起きたら自転車に乗るものだ」という認識に切り替わっていて、サドルにまたがることへの微かな抵抗感すらなくなっていました。
ここまでほぼ予定通り進んできましたが、4日目にして初めてのイレギュラー案件発生。
予定していたルートの国道359号線が能登半島地震による崩落で通行止めでした。※6月11日に通行再開しました。
朝5時39分にその情報を入手したようで、サポートチーム内で緊急会議開始(あとから連絡網の履歴を見返して判明)。
走り出して30分経過したところで、網野からの伝言で状況を把握。
「まあ、篠さんはそのまま走ってていいよ。15km先なんで迂回ルート考えてまた伝えます」
ナイス判断過ぎる。
本日より新たに合流したサポートメンバーふぃりりん、わらばんしさん、オゴウさんは3人ともブルベライダーで、世界で最も過酷な自転車耐久レースとして有名なアメリカ横断レース・RAAMの経験者。
メインのサポートカーはこのメンバー+網野の最強布陣。
人員が十分足りているので、この日しょっとこはNobさんのカメラマンカーの補助に入ってもらうことにしました。
通行止め区間は先行するカメラマンカーが下見して、確実に通れる道をサポートカーに共有。
結果、予定外の通行止めにもかかわらず、迂回距離3.1km、タイムロス9分のみで済みました。
チームワークの大勝利です。
ロングライドは食べられれば問題ないのだ
朝のスタート地点のコンビニが営業時間外だった為、迂回路からコース復帰した43km地点で朝食を入手。
相変わらずおにぎり類に手が伸びず、コンビニを一周見回って手に取ったのはエッグマフィンでした。
会計してくれたふぃりりんが『本当にそれでいいの?』という不思議な表情で見てきた。
「4日目でよく固形物が食べられるね。」
と、言われて初めて気がつく。
そういえば、初日からほぼ固形物しか食べていない。
胃の働きを維持する為、受けつけなくなるまでは固形物を食べ続けるように心がけていましたが、4日目になっても身構えていた胃腸トラブルは起きません。
ハードなライド続きで疲労が蓄積すると食欲不振、便秘もしくは下痢などが不調のサインとして表れますが、驚くほどいつも通りでした。
自分が一番びっくりしています。
準備期間の食トレが効いたのか、毎日同じ時間に寝て起きる睡眠サイクルがよかったのか、給水や栄養補給が行き届いたからか……。自分ではコントロールしにくい面がたまたまうまく噛み合ったようです。
ロングライドは食べられれば問題ないです。
なんだか最終日まで生き残れる自信が湧いてきました(笑)。
この調子で93km地点の第1休憩まではあっという間。
ここで1300km突破。祝・全行程の半分完走!
スタートからここまで無事に走ってこれました。
「1回できたことはもう1回できるから、もう大丈夫だ」と思いました。
神風を味方に
新潟方面は夕方から天気が崩れる予報の為、それまでに少しでも先に進みたい。
早朝17℃だった快適な気温も、富山市街を経て朝日町を通過した頃には30℃まで上昇。
日差しは強いですが、雨予報の影響か時折涼しい風が吹くので、最初の3日間に比べればかなり快適になりました。
左手側に日本海が見える道に出た途端、突然背中が押されるようにスーッと前に進みました。
強烈な南風です。
平地は足を回しているだけで35km/h出ました。おかげで前半はかなり楽に進められて、200km地点で1時間17分も貯金が作れました。
今回の日本縦断ルートは青森までほぼずっと海沿いなので、飽きてしまうのかな…と当初は思いましたが、いざ走ってみれば、同じ日本海沿いでもいろんな地形や表情があってずっと楽しいです。
特に新潟県と富山県の境にある親不知の景色が強く印象に残っていて…..。
海岸線は断崖絶壁、山肌にへばりつくように通っている国道8号線を走りました。
長いスノーシェッドの隙間から見下ろす海はすぐ傍にあるものの、遥か低い場所にあって、崖に打ち付ける波の音だけが響いてくる。
この距離感で海を見下ろせるダイナミックな道、他では見たことがなくて、心が躍りました。
2回目の休憩場所、セブンイレブン上越五智国府店には応援に来てくださった方が沢山いらっしゃいました。
企業スポンサーACTIVIKEの代表のにっしーさん夫婦、山伏BASEのオーナーの中村さん、てつやさん、未架さんなどなど。
ボトル補給でACTIVIKEのグランフォンドウォーターをヘビーユーズしてたら、まさかの1kgパックがたったの3日半でなくなりそうになり……。
それを聞き付けたにっしーがわざわざ小旅行中の草津から予備を持ってきてくれました。
山伏BASEの中村さんはわざわざお仕事休んでまで飯能から来てくれました。本当にいつもよくしてくださってありがとうございます。
高速のアクセスがいいからか、関東の方が特に多かったです。国道8号線沿いの応援は全行程でも一番多い区間だと記憶しています。走行中に聞こえてくる応援は本当に最高に力になりました。
初めて走行スケジュールの変更を試みる
①本日全行程383km。
②200km地点で1時間以上貯金があり、おそらくこの後さらに増えるだろう。
③しばらくは南風で追い風基調。
④明日は丸一日向かい風予報。
以上を踏まえて、自らサポートチームに提案してみました。
「明日向かい風予報だし、今日村上止まりではなく、60km先の由良海岸まで進むのはどうだろう?」
実は今回日が進むごとに、スケジュールにゆとりを持たせていくように設定しています。
特に後半は徐々に要求Ave.を下げていくように組んでいて、毎日要求Ave.を上回ることだけを意識して走行しています。
人間である以上、連日ハードなライドを続けていくと、疲れてペースが下がるのは当たり前だと考えています。
後半は特にアクシデントが起こる可能性も上がるので、その対応も想定したスケジュールにしました。
希望的観測ではなく、あくまで客観的に自分の走力と体力を判断した上で走行ペースを割り出しました。
参考までに
1日目Ave.22.6km/h
2日目Ave.19.9km/h
3日目Ave.20.3km/h
4日目Ave.19.3km/h
5日目Ave.19.0km/h
6日目以降Ave.17.5km/h
このペースさえ守れれば、当初予定した151時間台完走は現実的です。
今回の嬉しい誤算と言えば、後半に突入しても思ったほどペースが落ちなかったことですかね。
堅実に予定表を守ってきましたが、ここまで来て少しだけ欲が出てしまいました。
本日中に60km多く進められたら、明日北海道に渡るフェリーは1つ早い便のフェリーに間に合うのではないか、と。
心の中では思いましたが、口には出さなかったです。
でもその意図を汲んでくれたのか、ふぃりりんは「確かに今日は条件がいい。ライダー優先だから、進みたいならそこまで行っちゃいましょう」と言ってくれた。
ほかのサポートメンバーもやるなら付き合いますと賛同してくれて有り難い限りです。とはいえ、60km足すなら3時間は欲しいから、2時間以上貯金ができれば現実的になります。
相談した結果、316km地点の第3休憩の到着タイム次第で判断することにしました。
気温の急転直下、そして訪れる虚無区間
15時以降は徐々に雲行きが怪しくなり、出雲崎町を過ぎた辺りからポツポツと降り始めました。
新潟市に近づくにつれて雨が強まり、気温も一気に下がっていきます。
晴れの30℃→17℃の雨
佐多岬から3日間かけて暑熱順化してきたからか、この気温差は寒さすら覚えます。レインウェアを急いで羽織りましたが、靴の中がびしょびしょになるぐらいの雨でした。靴の中まで濡れるとなんか凹みますよね(苦笑)。
なんだかんだで、日本縦断走行開始後初めての雨です。30分ほどで止みましたが、ここまで恵まれ過ぎたぶん、割としっかりめに降られました。
越後七浦シーサイドラインの雷岩はわたし的日本海沿い絶景ポイントその③。※①越前海岸②親不知
旧料金所跡を通り過ぎて小浜トンネルを抜けたら、左手側に一面巨大な黒い岩壁がドンッと現れます。
すごい迫力で、さっきまで雨に降られていたのが完全に吹っ飛びました。
角田浜から第3休憩までは虚無区間。
両側に防風林のある1~2%上り基調の道がひたすら真っ直ぐ続いていて、おまけにど向かい風。
防風林が途切れた途端、殴られるような強風に見舞われ、8kmほど真っ暗な中ひたすら風に耐え続け、徐々に感情が消えていきました(笑)。
風の影響もあり、結局ファミリーマート上新栄町店に着いたのは19時38分。
貯金1時間52分。
60km距離を伸ばすにはギリアウトです。
新潟市街通過でペースが落ちるだろうし、この先はずっと向かい風予報の為、このまま走り続けたら一日の活動時間が20時間を超えてしまう……。
悔しいですが、元の進行予定に戻します。
網野は新潟駅で離脱。
JBCFのレースを控えていたのにサポートに来てくれてありがとう!最高に助かりました。
4日目のゴール地点、村上市のホテルに着いたのは23時23分。
予定より1時間46分早い到着でした。
ホテルの部屋が空いていたので、この日はサポートメンバーも希望者のみホテル泊にしました。
雨で冷えた体のダメージや翌日は函館行きフェリーでの仮眠だけで北海道区間を走ることを考えると、しっかり体を休められるのは今日だけです。
予定より早く着きましたが、翌朝5時半スタートに変更して、この日の睡眠休憩を思い切って6時間に伸ばしました。
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。