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2024年06月18日

篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・4日目、5日目>

5日目 新潟県村上市~青森県青函フェリー青森ターミナル

サポートメンバー:しょっとこ、ふぃりりん、わらばんし、オゴウ

走行距離 373km 獲得標高 2189m
グロス平均速度 20.5km/h
経過時間 18時間12分
走行時間 16時間19分
活動時間 5:28~23:40
睡眠休憩 6時間19分

走行ログ:https://www.strava.com/activities/11494693848/

【天候】曇り→晴れ/気温 6~20℃/湿度 76%

5日目の着用ウェア
【ASSOS】
UMA GT SPRING FALL LS JERSEY C2
DYORA RS SPRINGFALL BIB SHORTS S9
ASSOSOIRES W SPRING FALL LS SKIN LAYER
SPRING FALL KNEE WARMERS EVO
SEEME VEST P1
ARM PROTECTOR
RS GLOVES TARGA
SPRING FALL SOCKS EVO
JINGO RS HELMET

サポートチームの疲弊。暑熱順化→寒冷順化

5月25日、朝4時45分起床。

5時5分にホテルの駐車場に降りてみれば、同じくホテル泊したふぃりりんとNobさん以外誰も起きてこない……。
チャレンジ開始後初めてのことです。

しょっとこを除いて、サポートメンバーは毎朝2名ずつ入れ替えていたため、皆さん私より早起きで支度を始めることが多かったのですが、今朝は私が車の窓をコンコンして起こすまで熟睡でした。

連日のチャレンジライドはライダーだけではなく、サポートチームも消耗していくものです。

北陸地方に突入しただけあって、もう5月後半にもかかわらず、早朝は12℃しかなく、涼しいを通り越して肌寒い。
九州からここまででやっと体が暑さに慣れきたところで、今度は北海道に向けて寒さに順応していかなければいけません。

準備段階で気温の変動を見越して、5日目からはASSOSの春秋ウェアに切り替え、ウォーマー類をつけることで対応しています。

ウルトラロングライドは普段のライドより格段に強度が低いです。

「これぐらいの気温ならこのウェアでいける」という普段の経験が当てにならないので、低強度を想定したアイテムで組み立てていったほうが快適さに繋がります。

フェリーのタイムリミット

5時28分に走行開始。
本日の予定は青森のフェリーターミナルまでの373km。
ついに、本州最終日です。

村上市から先は基本国道7号線ベースですが、最短距離を繋ぐように海沿いの道を織り交ぜて行きます。

前半は平地かつ信号の少ない区間なので、ORCAを使用。

国道112号線は鶴岡辺りから防風林に囲まれ、森の中に誘われていくような景色が何kmも続きますが、最上川を跨ぐ出羽大橋を渡った瞬間、目の前に現れる鳥海山はグッとくるものがありました。

山形県ほぼ鳥海山を横目に走り続けるので、スケールの大きさに感動します。

第1休憩のローソン酒田西野店まで97km、貯金25分。始終強めの向かい風でしたが、Ave.22.5km/hを維持できています。

走行中はずっと暇なので、残り距離とフェリーのタイムリミットを照らし合わせながら、何度も心の中で計算し直しました。青森港までAve.21.7km/hを維持できれば、本日23時発のフェリーに間に合います。

チャレンジ前は考えもしなかったことですが、一つ前のフェリーに乗れれば、予定していた深夜2時30分発より3時間半も早く函館に到着できます。

「福田さん(遠隔サポート参加)にこの進行ペースなら23時のフェリーに間に合うか確認してもらっていい…?」

サポートカーにそう伝えたら、まだ23時のフェリー狙ってたんかという顔をされました(笑)。

諦めが悪いかもしれませんが、せっかくチャレンジするなら、行けるところまで足掻いてみたくなりました。

虚無区間の再来・予備のハンバーガー大活躍

秋田市までは国道7号線をひたすら北上。
海沿いは遮るものがないので、向かい風を受け止めながら、細かいアップダウンが無限に繰り返される道を進み続けます。

昼の虚無区間です。
時間が経つにつれて、チベットスナギツネみたいな顔になっていく気がしました(笑)。

これもきっとNobさんに写真撮られているんだろうなあ…とぼんやり思いながら。沿道で応援の方に声をかけられた瞬間だけ空元気を出せました。

単調すぎて何とか気を紛らそうと、サポートカーから買っておいてもらった予備のハンバーガーを受け取りました。
ハンバーガーを咥えているところを撮られました(笑)。

走行しながら食べたのは初めてでしたが、コンビニで売っているハンバーガーは絶妙なサイズ感と持ちやすさで、レンジで温めるとほどよくしっとりしていて、口の中の水分を持ってかれることもない。

割と有能な補給食かも?

「予備のハンバーガー」要望に最初は戸惑ったふぃりりんでしたが、訓練されすぎてその次、その次の次のコンビニでも言われる前にハンバーガーとホットドッグ類を買い込むようになったのは面白かったです。

ハンバーガーなどのサンド類以外は、ビタミン不足を補うウィダーゼリーや、消化酵素を取り込めるバナナ、駄菓子のラムネ、定番の和菓子を食べていました。

第2休憩のローソン土崎港西三丁目店に着いたのは14時40分。
ここまで201km、Ave.21.2km/h、貯金47分。ペースがなかなか上がりません。
秋田市から先は山岳区間に突入する為、ここでXELIUSに乗り換えました。

蓄積疲労とポジション修正

今回の日本縦断は胃腸が一番心配だったので、消化を優先して胃酸の逆流が起きないように、バイク2台とも普段より少しだけアップライトセッティングです。

ただ日が進むに連れてだんだん体幹が疲れてくると、バタンっと前に倒れるだけの姿勢が楽に感じるようになりました。
次第にハンドルが高く、近いと思えてきます。

ORCAは基本DHバーポジションで、XELIUSに乗る時も最終日まで握力を残す為に、手のひらや肘で体重を支えないように、できるだけ肩で振動吸収していたので、5日目から肩に違和感を覚えました。

自転車始めてからこんなに肩が凝るのは初めてです。

バイクのセッティングをいじりたくなかったのですが、235km地点で耐えられない違和感に発展したので、体の感覚を優先してXELIUSのハンドルを4mm下げることにしました。

この変更は吉と出て、山岳区間は順調。延々と続く平坦基調より、多少登ったり下ったりした方が足を休めて楽でした。

妥協と冷静な判断

第3休憩のローソン大館釈迦内店に到着したのは19時43分。日没から急激に冷え込んでいき、気温は10℃前後とかなり寒いです。

北陸に入ってから寒さでトイレに立ち寄る回数が増えた為、どうしても予定より停止時間が長くなっていく傾向がありました。

本日のゴール地点まで残り76km。ここから青森までは矢立峠を越えればしばらくは下り基調なのでペースは上がります。

ここから全力を振り絞ればギリギリ23時のフェリーに間に合うかもしれませんが、翌朝からの575kmの北海道区間を仮眠のみで走行すると考えると、現時点のロングライドペースを崩して体に負担をかけるべきではありません。

あわよくば6日切りゴールが一瞬頭を過りましたが、それを目指すには圧倒的に準備不足でした。

ウルトラロングライドは準備が9割だと思います。
今回は毎朝のスタートゴールの時間がズレても、大抵オンタイムに持ってこれたのは、あらゆる可能性を想定して、確実に6日7時間台で完走できるようにスケジュールを組んできたからだと思います。

そこからさらに7時間を短縮しようとすると、思いついた4日目ではなく、もっと前に遡って初日から走行距離の設定や休憩時間を詰めていかないといけませんでした。

反省しかなくて自己嫌悪に陥りかけましたが、未熟者はさっさと気持ちを切り替えました。
今できる最善策は2時30分の津軽海峡フェリーから2時発の青函フェリーに変更することです。

このペースで進めば、24時までには青森港に到着できるので、乗船までの1時間半は仮眠に振り分けられます。

そこからフェリーの中でシャワー浴びて約3時間仮眠が取れれば、本日も4時間は睡眠時間を確保できます。実現すれば人権しかない。

この先どんどん疲労が蓄積されていくでしょう。日本縦断ギネス世界記録は私もサポートカーも公道を走るチャレンジです。

不確定要素が多いので、休憩の取り方次第では、反応が遅れたり、バイクコントロールを正確にできなくなる可能性もあります。

自分の体調は自分が一番よくわかっているので、睡眠時間を極限まで削ることはしたくありませんでした。

「チャレンジ」はしますが、「無謀」なことはしません。

極寒の本州ゴール

時間に追われなくなったところで、気持ちの余裕が戻って最後までは淡々と走行。県道110号線から国道7号線に合流する上り坂のてっぺんが全行程で一番寒かったです。

電光掲示板には6℃が表示され、5日前は日中32℃の中を走っていたと思うと、体がバグりますね。体感温度はマイナスでした。

青森市街に向かう国道7号線の長い下り坂は、北国らしいひどめのひび割れ路面。どこ走っても割れているから、すこしでもマシな割れ目を跨ぎながらラインを選ぶ感じでした(笑)。

青函フェリー青森ターミナルに着いたのは23時41分。予定より1時間5分早い到着でした。

日本縦断は全部で2536kmですが、本州終了時点で1961km。正直青森にさえたどり着ければ、勝ちです。
ここまで来てしまえば、北海道区間の残り575kmはもうテンションでどうにでもなる誤差で、走れない訳がないです。

ささっとターミナルの前で記念写真を撮って、フェリーで食べるおやつをコンビニで買い込み、乗船開始まではキャンピングハイエースで仮眠を取りました。
フェリーはたまたま個室が取れたので、かなり快適に休めました。

つづく

写真:Nobuhiro Toya 文:篠


<関連URL>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <機材編>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <準備編>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・0日目〜3日目>

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