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2015年12月02日

3モデル インプレッション VOL.4/LAPIERRE編 XELIUS SL 500(スタンダードモデル)

LAPIERRE / XELIUS SL 500 MCP IMPRESSION

フルモデルチェンジを果たしたゼリウスSL。ダイレクトマウントブレーキを搭載したフロントフォーク、そしてトップチューブへ接続したユニークなバックステイと、形状は大胆に変わったが、プロライダーが実戦で使うコンペティションフレームとしてラインナップする。さらにフレーム単体重量はアルチメイトフレームで850gと非常に軽量に仕上がる。剛性に溢れ、軽く、そして乗り心地もよいという無欠のニューモデルだ。

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XELIUS SL 500 MCP■フレーム:ゼリウスSLカーボン■フォーク:ゼリウスSLフルカーボン(ダイレクトマウントブレーキ専用)■試乗車のコンポーネント:シ マノ・105■ホイー ル:ゼンティス・スクアッド4.2■完成車実測重量:7.4kg(ペダルなし)■カラー:ホワイト×ブラック×レッド■サイズ:46、49、 52、55cm■価格:399,000円(シマノ・105完成車、税抜)、299,000円(フレームセット、税抜)

※試乗車は販売モデルとはスペックが異なります。

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角面の際立つトップチューブとヘッドチューブまわりは独自の造形。

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エアーコードから受け継がれるカムテール形状。エアロダイナミクスにも優れているフレームチューブのデザイン。

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ダイレクトマウントブレーキを採用。エアロダイナミクスに加えて力強さを感じさせるフォークの設計だ。

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BBはプレスフィット規格を採用。

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エアーコードSL、パルシウム同様のシートクランプ内蔵設計。

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バックステイはシートチューブから完全に独立している。従来よりもステイを延長したことで、しなりをより高め、快適性を向上することができる。

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レーシングバイク本来の姿を垣間みる★菊地武洋

ゼリウムSLのサイドビューで特徴的なのはトップチューブから始まるシートステーだ。シートチューブを跨いで接合されるのはクロスドシートステーと言い、古くは重装備のキャンピング車などに用いられていた。アメリカのGT社はトリプル・トライアングルと呼んでいるが、いずれにせよチューブの接触点を増やして剛性を上げるのが狙いだ。ところが、ラピエールの3Dチューブラーテクノロジーはシートチューブとシートステーの接点がなく、シートチューブを動かして快適性を向上させるのが狙いなので、両者の考え方はまったく違う。実際に走り出すとラピエールが与えた演出が、まさに狙いどおりだと感心させられる。このバイクは冬から春先にかけてもっとも輝く。気候が厳しく、出発するまでの気が重たいシーズンでも、こういう快適なバイクだったら、走りに行くのが億劫ではないと思う。本来、レース用のロードバイクは快適性が高いものだ。ゴール前で疲れているようでは話にならないから、ロードバイクにおける最重要課題は“ライダーを疲れさせない”ことだ。スタンディングで走るとバックステーの剛性が不足気味なのも感じるが、それとて大義名分の前では、致し方ないと思える範囲での話である。そして、ゼリウムがレースのために作られたとわかるのは、ハンドリングの心地良さに現われている。ブレーキング性能が高いので、コーナー入口へのアプローチが安定している。さらに旋回をはじめるとフォークの横剛性も高いので、ライダーがイメージしたラインをキチッと外さずに走れる。振動だけでなく、すべてが快適にできている。それがレーシングバイク本来の姿なのだ。

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軽さが際立つニューモデル★小高雄人

シートステイがシートチューブではなく、トップチューブに直接接合している特徴的なフレーム形状が目を引く。この形状を採用することで、シートステイを長くすることができ、ステイの形状自体も弓なりになっているので、リア側からの振動をうまく吸収している。よって乗り心地は快適だ。レーシーな剛性感というよりも軽快さを重視しているようで、上りでの軽さが印象的であった。このあたりも前述の形状が影響していると考えられる。ちょうど身体の下、シートチューブ周辺に軽さを感じたからだ。激坂を高出力にまかせて短時間で上るようなヒルクライムよりも、Mt.富士ヒルクライムのような比較的長い時間を一定ペースで上るようなヒルクライムレースに向いているフレームといえそう。今回試乗したモデルはゼリウスSLシリーズのもっとも下位グレードにあたるモデルだったので、よりレーシーな乗り味を求める人は、上位グレードをおすすめしたい。

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時代が求めたパフォーマンスを具現化★山本健一

ゼリウスの名を引き継いだ最新モデルは、“SL”を新たに加え、機能拡張のすえデビューを果たした。これまでのゼリウスは運動性能を第一とし、潔いまでのレーシングバイクとしてのスタイルを確立していた、がニューモデル・ゼリウスSLのライディングフィールはというと、前モデルの踏み出しの軽さに加えてリアセクションのコンフォート感の向上が認められた。加えてシッティング時のやさしさはパルシウムにひけをとらないレベルにまで向上していると感じられる。この極上レベルの快適性は、フレームにほどよい落ち着きをもたらしていて、そのうえ軽量であるというのは、さらに戦闘力を高めたということになる。しかしながらエアーコードと比べれば加速フィールに一歩譲る場面もあったもののキャラクター設定としては間違いではない。それも今や反応の良さだけでは万能バイクとうたえないからだ。このゼリウスSLは一見奇抜に見えるリアセクションの構造によって、多様性を示しているといえる。同じカテゴリー、同じ世代のレースにトレック・マドンやコルナゴ・C 60らとゼリウスSLが存在するというのは非常に興味深いことだ。レースの高速化、厳しいバイク構造のレギュレーションのなかで、メーカーはそれぞれのアプローチから、プライドをかけたバイクを繰り出す。その中で、ある種の未来をゼリウスSLから感じとれるのである。ゼリウスSL 500はというとパーツアッセンブルや価格帯からも推測できるように、ロードバイクにスピードを求め始めたサイクリストや、レース出場や活躍を目指す人の最初の一台として最適。デザインに好みが分かれるとは思うが、最初からこれほどのバイクに乗れる時代が来たことを歓迎したい。


(写真/和田やずか)

ゼリウスSLのお問い合わせ先:東商会 http://www.eastwood.co.jp/

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