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2018年08月14日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 7-3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第7章:目指せ!海外ツーリング

7-3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

 

海外ツーリングは、走ってみたい所すべてが目的地候補であり、そこが気になったときから旅は始まっている。初めての海外ツーリングならば旅行会社が企画するパッケージ自転車ツアーなどでも良いが、やはり自転車ツーリングの醍醐味は国内外を問わず、自分の行きたいところへ向かい、自由に好きなように走ることにある。そのためには少しでも早めに行動を起こしたい。早ければ早いほど安い航空券が取りやすいし、仕事の休みも調整しやすくなるだろう。基本を踏まえしっかりプランニングをしたい。

 

<行きたいところを増やす>

海外ツーリングは、行ってみたいと漠然と夢を抱いているだけでなく、その実現に向けて夢を具体化することから始まる。まずは行きたい場所を明確にして目標を持つことが、実現に向けての第一歩となる。
昨今の自転車ブームにより、海外ツーリングを楽しむ人が増えておりSNSやブログなどにレポートなどのアップが増えている。自転車ツーリングのレポートに限らずテレビや雑誌、旅行サイトなどで世界の魅力あるスポットを見て「いつか行ってみたい!」と思ったら、具体的にツーリングすることをイメージして情報収集してみよう。

参考:7-2)情報収集が成功の秘訣

https://funride.jp/serialization/jitensyalife55/

行きたい場所はひとつだけにしておく必要は無い。あそこにもここにもと「海外ツーリング行きたいところリスト」のコンテンツを増やしていくとワクワク感も膨らんでくる。予算や取れる休みの状況にあわせて、行けるところを検討するのは楽しい。
但し、行く時期の現地情報を考慮にいれておく必要がある。例えば天候だが、雨期で毎日雨が降る季節にツーリングするのは楽しくないだろう。熱帯や亜熱帯ならば、乾季の最中や終盤は暑さも厳しく緑も少なくなる。お勧めは乾季の最初で雨は降らず緑は多く、土地も人々も生き生きしているタイミングだ。
その土地それぞれに様々な魅力や楽しみ方もあるので気候が全てではないが、基本的にツーリングは気候が穏やかで安定している時期が望ましい。

予算に限りがあれば、旅費が安くなるタイミングを狙うこともできる。GWや年末年始、お盆の時期などは高くなるだけでなく、混雑する中を自転車を持って行くのは大変である。行き先のコンディションが良いタイミングは、日本の大型連休とはリンクしないので、財布と相談しながらプランニングしたい。
行きたい場所の候補が増えれば増えるほど、様々な状況に合わせフレキシブルに行き先選定ができるのだ。

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ツーリングすることをイメージして情報収集していくとワクワク感が膨らんでくる(写真/木下滋雄)

 

<目的を明確に持つ>

海外ツーリングといっても、ガチに最初から最後までガッツリ走らねばならないことはない。旅のスタイルは人それぞれの好みに応じて千差万別であり、こうあらねばならないという規則などない。
1都市に滞在しながらじっくり周辺や近郊の観光を兼ねてツーリングするとか、現地でも距離のある移動には交通機関を使い、いくつかの都市や観光地を効率よくツーリングしたって構わない。イベントに参加してオプショナル的に近郊をツーリングするだけでもOK。
もちろん風光明媚な海外ならではのルートを、自らのペダリングで心ゆくまで走るのはツーリングの醍醐味である。

「ここだけは行きたい!」というところは押さえておき、他はそのときの天候や体調などの状況、現地で入手した新たな情報などに応じてフレキシブルに対応できるよう、計画にゆとりを持たせるのがポイント。詳細な計画を立ててもそのとおり行くことは稀なのである。

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海外ツーリングに不安があれば、最初は現地のレンタサイクルを使ってサイクリングを楽しむのもアリだ(写真/辻京子)

 

<いつからプランニングするか>

海外ツーリングは「行きたい!」と思ったときから始まるが、まず最初に決めるのはどこにいつ頃行くかである。海外ツーリングは費用もかかるし仕事にも影響する一大イベントであり、短いリードタイムでは十分な準備もできず、費用も膨らんでしまいやすい。
航空券の手配の観点から言えば1年前に購入できる航空会社もあり、一般に早ければ早いほど安いチケットが確保しやすい。
1年前が無理でも半年前なら決められるかもしれない。早いタイミングほど航空券もホテルも余裕があるし、人気の旅行先となると予約も早く埋まってしまうので、半年くらい前ならばいろんな手配も確保しやすい。
半年前に決められないなら3ヶ月前が航空券が安いタイミングのひとつの区切りである。仕事の休みの調整もその頃なら何とかなりやすい人も多いだろう。
それ以降でも、行こうと決断した瞬間から一刻も早く準備や手配に着手したい。「思い立ったが吉日」である。

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航空券の手配は早ければ早いほどお得だ。とりあえず、航空券を購入してしまえば、海外へ飛び出す覚悟も決まるかも!?(写真/本人)

 

<プランニングの基本>

海外ツーリングのプランニングで行き先が決まれば、まずは「出発日と帰国日、行きの到着地と帰国の際の出発地」を決める必要がある。大陸横断や世界一周などは別として、我々が仕事を続けながらできる海外ツーリングは、日数に制約があり時間にも限りがある。限られた日数を無駄なく満喫するためには、出発前にも現地でも出来るだけ多くの情報収集をすることがポイントである。行きと帰りの都市は、飛行機の便が多い都市にすると計画がしやすい。起点の都市と行きたいところ、走りたいコースを、地図上で一筆書きの線でつなぎ、大まかなルートを考える。ゴールは特に飛行機の便が多い大きめの都市が望ましい。海外では飛行機の運航変更が日本国内よりも発生しやすく、フライトキャンセルなどになった場合の代替案は、就航している便が多いほど対応しやすくなる。

線でつないだルートを走るのに何日必要なのかを余裕を持った日数で計算し、観光や滞在なども含めて全旅程が大雑把に何日間必要なのかを確認する。期間内で収まれば良いが、あちこち欲張るとそうも行かない。優先度に応じて取捨選択し、行く場所やルートを厳選していく。但しトラブルに備えて必ず予備の日程を入れておく。日程にも気持ちにも余裕があれば、ツーリングを快適に満喫できるのだ。

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海外ツーリングにトラブルはつきものと考えて、あらかじめ予備日を設定しておくと、いざという時に慌てないで済む(写真/木下滋雄)

 

<ツアーで行くと楽チン>

個人旅行の場合は、プランニングから航空券の手配、ホテルの予約などもすべて自分でしなければならないため、情報収集とある程度の知識/経験が必要となる。自分の行きたいところへ自転車ツーリングのパッケージツアーがあれば、それを利用するのもアリだ。
費用的には高くなるかもしれないが、パッケージツアーなら、航空券やホテルなどの手配もすべて旅行会社に任せられる。旅行会社は経験や人脈を駆使して、様々な面で満足度の高いツアーを提案してくれるし、ガイド付きのツーリングパッケージなどもある。
食事もその土地の郷土料理などが手配され舌鼓を打つこともできるし、観光ポイントや景色の良いルートなども含めてしっかりプランニングされている。万が一現地で何らかのトラブルが発生した際にも旅行会社がサポートしてくれるので、安心して海外ツーリングを楽しむことが出来る。各種手配や計画を立てるのが面倒という人にはこれがお勧めである。
但し、海外自転車ツーリングのパッケージツアー自体はまだ選択肢が豊富ではなく、自分の行きたいところや日程、予算などが上手く合致しないこともある。また、個人旅行と違って団体行動となるため、気に入ったところでゆっくりしたり、良い場所を見つけても勝手に行くことなどはできず、行動に制約があることはしっかり認識しておきたい。

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景色の良いルートやおいしい食事も準備されている自転車ツーリングのパッケージツアーに参加してみるのもおすすめ(写真/辻京子)

 

<何にいくら予算がかかるか>

何はともあれ先立つものがなければ、海外ツーリングは成り立たない。お金が潤沢にあって高級ホテルやビジネスクラスのフライトなどを利用する人であっても、よりリーゾナブルな予算を模索検討するのは旅の楽しみでもある。もちろん我々一般人には如何に費用を抑制して最大限満喫するのかは重要課題である。
素晴らしいツーリングプランができても、予算が足りなければ絵に描いた餅になりかねない。プランを検討する際に合わせて予算も考えるのがセオリーだ。
当然、行き先によって費用は大きく変わってくる。一般的にアメリカやヨーロッパなどは物価も交通費も高くつく。アジア圏などは比較的安く旅行できる場所が多いが、例えばシンガポールの物価は日本よりも高いなど、いろんなケースがあるので良く調べておきたい。

自転車ツーリングの場合、国内でも海外でも走ることを主体にすれば、移動費や荷物になるお土産代は買わないなど予算的には節約しやすい。
しかし、何にいくら使うのかを予め計画を立てておいたほうがいい。旅行の費用は「何をするか」「何処にいくか」「何を食べるか」「どこに泊まるか」「どう移動するか」などの条件で大きく異なってくるのである。
但し、予算オーバーだからといって簡単に諦めることは無い。「行きたい」という思いが強く、ある意味ひとつの「夢」であれば、実現できるときにトライしてみたい。行きたい時に行っておかねば行けなくなることもあるのだ。夢の実現のために、生活を切り詰めて必死で働くことを覚悟に、思い切って挑戦してみる事は、人生において大きなレガシーになるはずだ。

 

<航空券の選び方>

行きたい場所とその到着地及び帰国の際の出発地が決まると、なる早で航空券を手配したい。まずはネットの海外航空券検索サイトを活用しよう。同じ目的地に行くにも航空会社や出発の時間帯、予約のタイミングなどによって様々なチケットがある。
その際、注意せねばならないのが直行便か乗継便かということである。自転車を飛行機輪行する場合、空港での取り扱いによりダメージを受けるリスクがある。海外の空港では取り扱いが荒い場合が多く、そのリスクは国内空港よりもずっと高い。つまり海外での乗継をすると、自転車がそのリスクに何度も晒されることになるのだ。更に乗継便の場合はロストバゲージのリスクも増える。特に新興国の航空会社や大都市の空港ほどロストバゲージのリスクは高い傾向にある。自転車のダメージやロストのリスク低減のためには、多少価格が高くでも直行便を選ぶのがセオリーである。

もちろん直行便ならば、乗り継ぎの手間が一切かからず、所要時間も短く済むのでラクチンであり、現地で楽しむ時間が増えるなど何かとメリットは大きい。
気をつけたいのが、適用される燃油サーチャージである。この金額は航空券の購入タイミング、つまり支払い手続きを完了した日で決まる。多くの航空会社が2カ月に1回のペースで価格の見直しを行っており、燃油サーチャージ一覧でチェックすれば改定予定がわかる。例えば、9月1日より値上げになる場合は、値上げ以前の8月31日までに支払い完了すれば、値上げ前の金額が適用となる。値下げになる場合は9月1日以降に決済すればいい。
ちなみに航空運賃は出発日が1日異なるだけで変動するので、日程の調整が可能ならより安い出発日を選べばいい。

 

<持ち物はコンパクトに>

自転車ツーリングの持ち物の基本は荷物をできるだけ少なくすることである。国内ではそれができていても、いざ海外ツーリングとなると何かと不安になって、あれもこれも持っていきたくなる。言うまでもないが、荷物が重くなればなるほど体力の消耗は大きくなり、巡航速度にも影響が出て時間がかかる。無理をすれば、ただでさえ環境の異なる世界に、心身ともに慣れておらず、ロングフライトや時差、直前の仕事や準備で疲れているかもしれず、体調を崩す要因になりかねない。

もちろん場所に応じて、走行中に食料や水をたくさん持つ必要もあるだろうし、スペアパーツや工具類があったほうが良いところもある。気候に応じたウェアー類の必要量も変わってくるだろう。それらは事前の情報収集で必要物をしっかり見極め、安全や体調確保の必需品以外はできるだけ荷物を少なくするのがツーリングのセオリーである。
もちろん海外だからパスポートやEチケット、旅行保険などは必要だが、必要最小限の荷物と装備で、何にでも対処できる知識とスキルと経験を持って行ければ一番である。

★ニュージーランド行ってきます。荷物でかい
不安になると荷物が多くなりがちだが、荷物は最小限にすることを心がけよう(写真/木下滋雄)

 

<目的地別プランニングの注意事項>

海外ツーリングで最も注意しなければならないのは治安である。つまり身の安全の確保を常に意識する必要がある。日本は世界で最も安全な国のひとつなのである。
水や食べ物も同様に注意が必要だ。衛生面でも日本は極めて清潔な国なのだ。
たとえ先進国であってもリスクはあるし、新興国の場合は更にリスクを意識して行動する必要がある。

目的地別の安全状況や環境などの情報は、外務省のHPを参照することをお勧めする。
海外旅行者の増加に伴ってトラブルも増えており、国としても国民を守るために様々な情報を発信している。
各国や地域の安全状況はかなりしっかりとカバーされているので、事前に目を通して頭に入れておきたい。

https://www.anzen.mofa.go.jp/travel/index.html

https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/safety_guidance.html

また、海外旅行全般に関する準備事項や、トラブル対処などについても情報提供されているので参照したい。

https://www.anzen.mofa.go.jp/trip/

 

海外に行ってツーリングをしてみると、日本がとても清潔で安全な国であることを実感できるだろう。少しでも早めに準備を始め、無理のないスケジュールを余裕を持ってプランニングし、安全で快適な海外ツーリングを楽しみたい。

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は8月28日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(トップ写真/辻京子)


第7章:目指せ!海外ツーリング

1)海外ツーリングは、お気軽な時代

2)情報収集が成功の秘訣

3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

6)自分で自分の身を守る、危機管理が重要

7)ツーリング先進国、欧州を楽しむ

8)快適な自転車ライフを謳歌しよう

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